天地征権
僕はまずポイントを使い“天地征権”を取り出そうとする。
【“天地征権”にポイントを使いますか?】
勿論、承認。
【10,000ptを消費しました。現在247,010ptです。】
【“天地征権”が解放されました。次回から0ptで使えます。】
【“天地征権”の所有者は“ジョナ”です。】
空間が裂けて“天地征権”が出てくる。
出てきたのは全長0.8m、取っ手部分が銀で他の部分は黒い金属でできた“杖”だった。
えー…“天地征権”ってコレ?
どう使うんだ?メッセージには“森羅万象であり理を支配する”ってあったけど…ん?
突然、頭の中に情報が浮かんできた。
ああ、“こう”使うんか…
おっと、いけないタクヤがやられそうだ。
とりあえず、足に力をいれて地面を蹴る。どうやら“絶望の使者”によって“混沌の使者”よりステータスが上がったみたいだ。
「ヤッホー! タクヤ元気かい?」
とりあえず軽く挨拶をしながらヴィクトリアの背中に蹴りをいれる。
ヴィクトリアは地面を跳ねながら吹き飛んでいき廃墟になった家に突っ込む。突っ込んだ反動で家が崩れ瓦礫が彼女の上にのしかかる。
あれ?
ヴィクトリアが起き上がらない…死んだ?
それは困るな…せっかく、新しい力を試したかったのに〜
そうだ! タクヤが言っていた“魔法の言葉”を使えば!
よし!
「やったか?(笑)」
ドカッン!!
魔法の言葉を言うと同時に瓦礫が吹き飛び、ボロボロになったヴィクトリアが現れた。
「ふ…正面から挑めば私に勝てないから不意打ちとは…屑がっ!! 『斥』っ!!」
なんか負け惜しみを言った彼女は周りにある瓦礫を吹き飛ばしてきた。
すごいスピードで飛んでくる瓦礫はクロスボウより早く、まるでタクヤの世界にある“ジュウ”と同じだ。
まぁ、僕にとってなんの“問題はないけど”。
飛んでくる瓦礫を左手で“叩く”、叩かれた瓦礫は方向を変えて何処かへ飛んでいく。
ギャッ!?
ん?瓦礫が飛んでいった方向でマーガの悲鳴が聞こえた気がする…まぁ、いいか〜
『引』
おっ! 何かヴィクトリアの方へ引き寄せられるぞ?
ちょうどいい、“近づける”なら試したい事ができる。
僕は浮かんだ全身の力を抜いて引き寄せられる力を利用してヴィクトリアへ近づく。
ヴィクトリアは近づいた僕を手刀で迎えようとする。
「死ね。」
彼女との距離が縮まり、ヴィクトリアが僕に言う。
だけど、僕は目の前にいる彼女には“何もしない”。
僕はすぐに足を地面に着けて“背後”からくる攻撃を避ける。
「なっ!?」
ヴィクトリアが驚きの声を出す。
それはそうだ、彼女のスキル『嘘の果実』で作った幻の分身を見破られて、しかも見えない筈の攻撃を避けたのだから。
種明かしをすると“天地征権”が教えてくれたからなんだけど。
彼女が声を出した瞬間に嘘の果実の効果がきれて、目の前にいた彼女は消えて背後からヴィクトリアの姿が現れる。
僕は現れたヴィクトリアのお腹に手をそえる。
マオの見よう見真似だけど…
『悪威』
掌手を放った。
「がはっ…」
掌手を受けたヴィクトリアは少し飛んで地面に倒れる。
おかしな〜感覚では内蔵とか破壊したと思ったのに…
「ギャアアアアっ!!」
突然、ヴィクトリアが血を吐きながら苦しみだした。
良かった効果あり。
さて、止めで使うか“天地征権”
僕は“天地征権”の先端を地面に刺す。
「起きろ、そして支配しろ“天地征権”」
その言葉の後に地面が揺れ始める。
[][][]
痛い痛いイタいイタイイタイイタイっ!!
あの男に触れられたと思った瞬間、内蔵が爆発したような感覚を私を襲う。
喉の奥から何かが込み上げてきて、それを吐き出すと“血”だった。
内蔵などはすぐに完治したが何故か痛みだけが残っている。
まるで、人間達の怨念、憎しみなどドロッとした何かが私の身体を蝕んでいる。
痛みに耐えていると突然地面が揺れた。
見るとあの男が持っていた杖を地面に突き刺している。
ゾク…
背中が冷たくなるのを感じ、私は痛みを忘れたかのように立ち上がり構える。
『拒絶する壁』
対象は勿論“あの男”だ。
あまり、これは使いたくないが仕方ない。
私のスキルが捉えた感覚を得た。
勝った…
私は勝利を確信して後は奴が潰れるだけだった。
「それは『“許可しない”』」
奴がそう言うと私のスキルが遮断され発動がキャンセルされた。
「なっ!?」
驚いていると奴はニヤニヤと楽しそうに口を開いた。
「おや、どうしたのそんな驚いた顔をして?」
「何をした!? 私のスキルは確かにお前を捉えた筈だ。」
何が起きたのかを奴に聞くと、奴はただ笑顔で
「教えなーい♪」
私の中で何かが切れた。
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いや〜いい顔だ(笑)。
“天地征権”でヴィクトリアのスキルの発動を“無効化”しただけなんだけど。
“天地征権”の能力は簡単にいうと“絶対空間支配”だ。
僕が視認できる距離を“征服”して現実世界に“自分の思い通りになる世界”を創る事ができる。
まぁ一部、制約があるらしいけど…
さらに、もし同じ能力がぶつかることがあると必ず“天地征権”が優先される。
もう武器じゃあないよな…コレ。
視線を戻すとヴィクトリアが剣を持って何かブツブツと呟いている。
…………ん?…“剣”?
「お許しください、我が君よ。我が君の許可なく“混沌を呼ぶ”を使う事を……我が君に“管理者”として譲り受けた力を私事に使った報いは我が君が復活してから…」
わぁぉ……病んでるねぇ〜。
それにしても“管理者”って何?
あっ、“天地征権”から情報が…便利だなコレ。
【管理者:悪獣の一種。“邪神の遺産(悪の遺産)”に入る“宝具”の精霊みたいな存在】
へ〜ヴィクトリアってマビトだったんだ。
【ちなみに、怪物工場では3億ptが必要】
3億もするの!?
悪獣の一種なら“大地を憎む者”で作れるよね…
うん…出来るな。しかも100ptで……後で作ってみるか。
ん? ヴィクトリアの奴は何をしているんだ?
見ると彼女は剣を高らかに挙げて構えていた。
『黒覇斬衝!』
剣を振り下ろすと同時に黒い波がこちらに向かってくる。
たぶん、黒い斬撃かな?…あれは…
もう、いいか…
僕は“天地征権”を彼女へ向けて、
『|Let there be light《光あれ》』
“天地征権”を発動させた。
“天地征権”の先端から光輝くレーザーが出て黒い波とぶつかる。
レーザーが黒い波に触れた瞬間、黒い波は光を避けるように割れて、その先にいるヴィクトリアを飲み込んだ。