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福本の悩み
7月10日 薩摩艦内長官室


福本
「はぁ〜〜〜m(__)m」

机の上にある、縦に積まれた書類を一枚一枚丁寧に処理していく。
そして、やっと最後の十枚程になった時、その一枚を見た彼の表情が変わった。それは、諜報部の近況報告である。
書いてあるのはアメリカの国内報告だった。
どうやら、アメリカ政府は日本が中国からほぼ手を引いたのに、未だ日本を警戒している様だ。

福本
「………………………」

いや、それだけでは無い様な気がする。
福本はそう思った。
中国を餌に戦争に引きずり込み、日本を叩き潰す積もりだったのが、自分の主張のせいで、瓦解したから、次の機会を狙っている様だ。

福本
「はぁ〜〜〜……」

ため息を一つ吐くと、立ち上がり、窓から外を見た。そこからは、マチルダと話す、薩摩や土佐などの面々が見えた。
笑顔が絶えない。
いつも、笑っている。
みんな、薄氷の平和ながらも楽しそうに過ごしている。

ふと、思った。

アメリカの艦魂達も、同じ様に過ごしているのだろうか?
こんな風に、姉妹で、友で、仲間で……過ごしているのだろうか?

ズキリ

その途端、心が痛みだす。もう、慣れてしまった痛み……けれど、慣れてもいけない痛み…。
士官学校に入って直ぐ考えた事…。

果たして、自分は戦争になった時…人を撃てるだろうか?

それが、自分は艦魂が見えると知って、また考えた。

果たして、自分は彼女(艦魂)達を撃てるだろうか?

艦隊司令に着任しても未だ悩み続けている。
今や艦魂=人の構図が自分の中で出来てしまっているから、余計だ。
戦争で、命を奪い合うのは当たり前。
しかし、自分はそんな事をしたくない。

福本
「はぁ〜〜………」

本日、何度目か判らないため息を吐く。
アメリカ政府は何を考えているのか?
日本政府も、天皇も、国民も、軍人も、艦魂も、誰も戦争なんて望んでいない。もしかしたら、アメリカの艦魂や国民も戦争なんて望んでいないのかもしれない。
けれど、アメリカ政府の一部の人間が、自らの欲望や傘下企業の利益の為に、望みもしない戦争を初め様としている。
これで、自分達の戦争が正義の戦いだと言ってれば、戦争に正当性も出て、士気も揚がるだろう。
しかし、戦争は結局、悲しみと憎しみのしか生まない。
人命と、利益とを秤にかけて選べと言われたら、自分は人命を選ぶ。
悲しみと憎しみしか生まない戦争を見れば、利益なんて、とれない。

福本
「はぁ〜〜…」

日進
「福本?」

福本
「おわっ!」

日進
「な、何も驚く事無いじゃはないでしょ。」

福本
「お、驚きますよ! 誰も居ないと思ってたんですから。」

日進
「それより……あんた、まだ、迷ってるの?」

福本
「……はい……」

日進
「で、答えは見つかった?」

福本
「いいえ……もしかしたら、答えなんて無い、問題なのかもしれません……」



その後、
「気分転換して来ます。」と言って福本は司令長官室を出て行った。



数分後 呉鎮守府内臨時連合艦隊司令部


山本長官
「どうしたんだい、日進?」

日進
「あのバカの事で悩んでるの。」

山本長官
「あのバカ……あぁ、福本の事か。で、なんで悩んでいるんだ?」

日進
「福本はね、戦争を理由に人を…艦魂を殺したく無いのよ…。」

山本長官
「……………」

日進
「あいつ、人や艦魂に直ぐ感情移入しちゃうんだよ。だから、誰でも優しいんだよ。それこそ余程、嫌いな奴以外は優しいよ…。だから、見たことも無い癖にアメリカの艦魂や人に感情移入して、いつも迷って苦しんで……。ねえ、高野…私達は何が出来ると思う?」

山本長官
「日進…多分我々が出来る事は少ない…それにこれは福本自身の問題だ…私達が手伝っても本人の迷惑になる…福本自身で答えを見付けるしかないよ…。」



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