会議
6月1日 帝都
山本長官
「ところで福本。今日は通商路確保の事を議題にするつもりかね?」
福本
「はい。直接突き付けないと、軍令部は解りませんからね。あの実験をやった意味も解らせないと。」
こんな会話を福本は軍令部に向かう車中で山本長官としていた。
30分後 海軍軍令部
この日、海軍軍令部では『(緊急)対ソ戦移項』、つまりソ連と戦争状態になった時の作戦移項を決める為に会議が開かれた。この会議の参加者は、海軍大臣米内光政、山本長官、宇垣参謀長、福本少将、永野修身軍令部総長などが集まった。
そして……
柿宮
「ふ、福本! な、何故貴様がここにいる!」
福本
「山本長官に言われてついて来ただけだ。」
柿宮
「そんな訳ないだろー! 貴様のような無能男を山本長官が誘う訳ない!」
福本
「はいはい。(まったく、無能はお前だっつーの。負け犬の遠吠えは外でやってくれ。)」
2時間の会議はこれと言ったごたごたもなく、スムーズに進んだ。(何せ、海軍にやれる事は少ないからだ。)
しかし、会議の終盤になり福本の発言がごたごたの始まりとなった。
福本
「1つ発言させてよろしいでしょうか?」
米内海軍大臣
「あぁ、別に構わんよ。」
福本
「それでは発言させて頂きます。輸送船団の護衛はどうするのですか?」
この発言を聞いた瞬間、一部の人間を除いて福本が言おうとする事がわかった。この発言に対し噛み付いた人間が1人。
柿宮
「福本、貴様、頭がおかしくなったか?」
福本
「残念ながら、正常だ。」
柿宮
「ほー、正常か……なら、そんな事を言うのはお前が無能だからだ! 何が輸送船団の護衛をどうするだと? 何故、護衛する必要がある。輸送船団なんぞほっといても勝手に目的地に着くわ。」
福本
「……その言葉をそっくりそのままお返しするよ。」
柿宮
「なんだと! 俺が貴様より無能だと言うのか?」
福本
「その通りだバカ野郎! 何がほっといても勝手に到着するだと? ふざけるな! 前大戦のイギリスがどうなったか思い出してみろ!」
柿宮
「あれはドイツが相手だったからで、スターリンがやる訳がない。」
福本
「スターリンだってバカじゃあないんだ、日露戦争のロシア太平洋艦隊の輸送船襲撃を聴けば、それを実行しないとは限らないだろ!」
柿宮
「例えそうなったとしても輸送船の護衛など女子供の仕事だ。我々の仕事じゃあない。」
福本
「……なんだと?…」
柿宮
「だから、輸送船や商船の護衛は女子供の仕事だと…」
福本
「貴様! その言葉を商船や輸送船の船員や船長、その家族に言ってみやがれ! 殺されても、文句は言えんぞ!」
山本長官
「福本、興奮し過ぎだ。」
福本
「す、すみませんでした。」
米内海軍大臣
「ふむ、福本少将がそれほど言うには、何か理由が有るのかね?」
福本
「はい。1週間程前に空母鳳翔を使い、ある実験をしました。」
柿宮
「あぁ、確か実験に潜水艦ならまだましも、魚雷も使わせろと言ってやつだな。」
福本
「魚雷使えなかったので、アクティブソナーのピンを雷撃の代わり使いましたが、潜水艦は駆逐艦に見つからずに鳳翔を『雷撃』しました。なお、駆逐艦は六隻を円陣になるよう配置し、鳳翔は円陣の真ん中に配置しました。」
柿宮
「それはソナー員の怠慢か、精神力の不足だろう?」
福本
「残念ながら違う。ソナー員は全員、軍楽隊の耳の良い人達でした。3時間30分の間、交代しながら警戒していた艦もありましたが、誰も探知出来ませんでした。これは何故か? 原因が機材に有るからです。」
米内海軍大臣
「機材に?」
福本
「はい。ソナーなどの機材が旧式化しております。他にも対潜水艦戦術、通商路確保の方法、対潜水艦兵器などの研究が行われておりません。これでは対米戦になった時は、どれだけ優勢でも最後に勝つのはアメリカに決まっています!」
柿宮
「おい、福本!それは海軍大臣を脅しているのか?」
福本
「このバカ。警告してるんだよ。アメリカは精神力云々で勝てる相手じゃない。」
柿宮
「バカだ…」
米内海軍大臣
「わかった。1週間後に君や、君の部下達の意見書を纏めて提出してくれたまえ。これで良いかな?」
福本
「は! ありがとうございます!」
登場人物紹介
柿宮 裕(20) 性別 男性
福本を毛嫌いする海軍大佐。
親が貴族院の議員でそのコネで海軍軍令部に配属した。
士官学校では嫌われ者だった。
無能で、精神論ばかりを主張している。
好き 権力 自分の思い通りいくこと
嫌い 福本 自分の思い通りにいかないこと
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