会合
1月11日 夕暮れ 呉市内の街中
この日、山本長官と福本はスーツ姿であった。
これは目立つ軍服よりも、スーツの方が色々と都合がいいからだ。
実際、山本長官と福本を見た人間は、年輩のサラリーマンが新米を連れて、契約先に向かう風にしか見えない。
これから、海軍の大物とある資産家の大物が会うとも誰も思わないだろう。
福本
「山本長官、もしかして楽しんでますか?」
山本長官
「なぜだね?」
福本
「いえ、格好が様になっていますから…。」
今の山本長官の格好は、銀座の高級スーツにコート、一番のお気に入りの帽子(山本長官の趣味は帽子集め)を被っている。
山本長官
「いやー、久しぶりに外に出たからな。ついつい様になってしまった。」
福本
「はあ…。」
こう返事をしながらも、本当にそれだけ?と思う福本だった。
「あ、福本先輩!こちらで〜す。」
そう言いながら今回の会合場所である料亭の前で、福本と山本長官に向かって手を振る金髪縦巻きロールの少女が1人。
福本
「白河美鈴大尉、もう少し周囲の状況を見なさい。とマリーダに言われていなかったかね?」
白河
「あ、そうでした…」
福本
「変わらないな。きみは士官としては優秀だが、外出日には素に戻ってしまうからな〜。」
白河
「は、はい。以後気よつけます。」
この光景を山本長官はニヤニヤしながら見ていた。
3人は女将に案内され会合相手の待つ部屋に向かう。そして、会合部屋の襖を開けると、スーツ姿の男が2人。しかも福本と山本長官はその内の1人は知っていた。
福本
「おや、これはこれは萱場資郎社長。こんばんは。」
萱場社長
「おや、山本長官と福本少将ではありませんか!。しかし、おかしいな?白河社長のお嬢様の先輩に会う予定なんですが…。」
山本長官
「その先輩と言うのがこいつのことだ。」
そう言って山本長官は福本を指差す。
萱場社長
「なんとまあ…。物凄い人間が先輩でしたね。」
「どうも始めまして。美鈴の父親、白河俊雄です。」
白河俊雄歳は46、家族はアメリカ人の奥さんと娘(美鈴)が1人。
彼は第一次世界大戦時に貿易会社を設立、大きな利益を得た。
その後、新大陸とエステロール王国発見の報を聞いた彼は日本〜新大陸間の通商航路を確立した。現在は神戸を拠点に貿易、造船業を手掛けており、最近は技術研究事業に着手しているそうだ。
萱場資郎が社長を勤める萱場製作所は海軍に航空機の着陸脚、空母の着艦制動装置、水上機の発艦カタパルトの製作を依頼しており、航空派の山本長官ともそれなりに関係の深い会社である。
福本
「こちらこそ、始めまして。福本大介です。」
山本長官
「山本五十六です。今回お招きありがとうございます。ところでお話とゆうのはなんでしょうか?」
白河社長
「そうでしたね。それでは単刀直入に言います。我が社はあなた方海軍に輸送船・補給タンカー及びレーダー等の技術を提供したいと思っています。」
これを聞いた瞬間、山本長官と福本はお互いの顔を見ながら唖然としていた。
確かに海軍は輸送船舶が不足しており、戦時となれば民間からの調達しなければならないからこの申し出は嬉しいし、無線は配線をいじれば性能は上がるが、電探の技術は確かに出遅れており、イギリス・ドイツから必死に技術を吸収しているところだ。
しかし、あまりに大盤振る舞いであるから逆に疑ってしまう。
福本
「…何か条件がありますか?」
白河社長
「えぇ、戦時になれば直ぐにでも護衛艦隊を設立して欲しいのです。」
山本長官
「それは何故ですかな?」
まあ、大体の理由は2人にも判るが。
白河社長
「我々経済人にとって通商航路の確保は食糧の確保と一緒です。これを怠れば……どうなるか判りますよね?」
2人共うなずく。第一次世界大戦のイギリスを見れば直ぐに判るからだ。
白河社長
「私は日本でそれが起きないようするためにこれらを提供します。ですから護衛艦隊の件よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げる。
白河(娘)
「パパ、まだ話てないことがあるでしょう。」
白河社長
「い、いや〜、あ、あれはその……」
白河(娘)
「もうパパたら…。福本先輩、パパは世界平和を願っているんです。」
これを聞いた山本長官と萱場社長を驚き、福本は平然としていた。
福本
「それは国際貿易ができるからですね。」
白河社長
「そうゆう事です。」
山本長官
「…どうゆう事だ?」
福本
「あ、すみません。実は士官学校生だった時に日本を繁栄させつつ世界が平和を維持するにはどうすれば良いかと考えまして…。」
山本長官
「その答えが貿易か…」
福本
「はい。資源無き我が国が世界に誇れるのは人間の頭脳と産業です。大体、世界のどこに家内工場用の小型織機を開発した国が他にありましたか?」
萱場社長
「確かに、ありませんね。」
山本長官
「そういえば萱場社長。きみはなぜここに居るのかね?」
萱場社長
「おっと、忘れておりました。実はこれを見ていただきたい。」
そう言って模型と設計図を机に置く。
福本
「?これは…?」
萱場社長
「これは陸軍から開発を依頼されました、カ号観測機。オートジャイロ機です。」
オートジャイロ機とは簡単に言えばヘリコプターの祖先みたいなものだ。
カ号観測機はノモンハン事件後、砲兵の機動化(自走砲の開発・ゴムタイヤを装着し砲架の強度を上げる、など)に着手した陸軍が着弾観測の為、萱場製作所に1939年の9月の下旬(史実では1940年の11月)に依頼した。
当初は専門外の依頼で苦悩した萱場製作所だが、石原莞爾がそれなりに手を回しイギリスのオートジャイロ製作会社である、シェルバ社やアヴロ社の協力を得て、現在試作機の製作中だと言う。
山本長官
「しかし、戦艦にオートジャイロを載せても余り意味はないぞ。」
福本
「確かに、着弾観測でしたら水上観測機でもやれます。しかし…」
山本長官
「しかし?」
福本
「使い方によっては使えますね。萱場社長、この機に爆装は出来ますか?」
萱場社長
「そうですね。最大60キロといったところですかね。まあ、まだ発展余地がありますが。」
山本長官
「福本、何を思い付いた?」
福本
「もしかしたらオートジャイロは対潜哨戒に使えるかもしれませんよ!」
こうして、新たな提案書の内容を思い付いた福本だった。
次号へ
作者「えー、テストやら色々ありましてなんとか時間がとれたので更新しました。」愛宕「まったく、本当なら主砲で富士山まで飛ばされても文句が言えないのに。」作者「20,3センチ10門も喰らえば富士山以前に消滅しちゃうよ。」愛宕「で次号は?」作者「次号は福本・マリーダが母校に行きます。『卒業論文発表会』をお楽しみに〜。」愛宕「ご意見ご感想をお待ちしています。」
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