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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第四章 ニザ公国編

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第九十三話  真打は最後に舞台に上がる

「全て予定通り完了しました。ただ、バーサーム侯爵の横やりが入りましたので殺してしまいました。申し訳ございません」

「ああ、気にするな。どうせ救援物資を持って帰ってきたところで、彼が見るのは荒廃しきったニザの大地だ。まあ、その顔を見て見たかったという思いはあるがな」

「それに、召喚したユニコーンが倒されてしまいました」

「何?ユニコーンが倒された?」

「はい、角でバーサームを串刺しにしましたが、その時に剣で目をやられました。その直後に数百頭のシカの群れに襲われたのです。私も何とかシカから逃げていますが、MPが枯渇しているので、何ともできません。恐れ入りますが、援軍をお願いできないでしょうか」

「わかった。全員を連れてそちらに向かう。おい皆聞け。今すぐ手を止めてウトニカの救援に向かえ。数百頭のシカに襲われているらしい。全員転移後、すぐに戦闘態勢に入れるように準備せよ」

「「「「「「「「了解」」」」」」」」


「転移してくるぞ。離れていろ」

俺たちは食べていたサンドイッチを無理やり口の中に押し込んで飲み込む。リコが朝、持ってきてくれたサンドイッチがこんなところで役に立つとは思わなかった。これでしばらくは空腹を感じずに戦えそうだ。

そんなことを考えていると、ウトニカの周囲の空間が歪み始めた。仲間のポーセハイが転移してきているのだ。

「ウトニカ、どうしたのだ!うわっ!」

「ウトニカ、どう・・・」

「ウトニカ、くっ・・・」

転移してきたポーセハイを片っ端から結界の中に閉じ込めてMPを奪う。そして最後にレコルナイが転移してきた。

「なっ、何だこれは!ぐあっ!」

転移してきた途端に俺の結界に囲まれ、MPを吸い取られて動けなくなる。どうやらこれで全員が揃ったようだ。俺は一旦結界を解除して、倒れている奴らのフードをゴンらと共に片っ端から脱がせていく。そして、全員を一か所に集めて再度、結界を張り直す。

「全員揃ったか?王宮を騒がせるわけにはいかないから、全員ご苦労ながら転移してきてもらった。お前ら全員のMPは俺が奪った。そして、拘束させてもらっている。さてレコルナイ、お前には聞きたいことがある」

俺は歯の出っ張った隻眼の、痩せた針金のような男を凝視しながら、鑑定スキルを発動する。

「・・・バーサーム!お前は・・・死んだんじゃ・・・なかったのか!ウトニカ!・・・ウトニカは・・・どうした!!ウトニ・・・!!!」

転移してきたポーセハイどもの目の前にウトニカはいた。両膝をつき、虚ろな表情のまま口をポカンと開け、その口からよだれを垂れ流し続けながら、焦点の合っていない眼で虚空を眺めている。

「ウトニカ!!!」

仲間の必死の呼びかけにも全く反応しない。

「この女の精神を弄らせてもらった。あいにくと黒魔術は初めて使うから戻し方がよくわからん」

俺は黒魔術LV4の精神支配を使ってウトニカの精神に侵入し、彼女のスキルである「思念」を使用してレコルナイたちをおびき寄せたのだ。このスキルはとても便利だ。かなり遠い相手にも情報が伝えることができるらしい。これはウチのメンバー全員に付与しようと思う。

「・・・それにしてもレコルナイ。ドワーフたちを抹殺することで、ニザ公国に代わってお前らポーセハイが武器や防具の供給源になろうってか?それに、お前らが作った毒薬の実験台にドワーフたちを使うことで、一石二鳥を狙っていたのか。マジでお前らロクでもないな」

「何故それを!」

「よく考えられた筋書きだが、やり方が気に入らん。ドワーフたちの技術を壊滅させるのではなく、何故ドワーフたちの技術を凌駕するように自分たちを研磨しない。下らねぇスキルばっかり伸ばしやがって!どうせお前らの一族は、世界中でロクでもないことをしてるんだろう!全員、お仕置きが必要みたいだな」

「ぬぐぁ・・・」

「きさま・・・」

転移してきた八人のポーセハイがうごめいているが、完全にMPが尽きているので動けない。この想像を絶する睡魔の中で起きていることは、褒めてやってもいいのだが。

「・・・ご主人、これからどうするのでありますか?」

「狂い死にさせる」

「え?何ですって?何か怖い・・・」

フェリスとルアラの顔が若干引きつっている。俺は「鬼切」を抜いてレコルナイを一刀両断にする。

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

断末魔の絶叫が上がる。

「いぎぃぃぃぃッ」

その苦しみに耐えかねたのか、レコルナイは思いっきり歯を食いしばる。

「ぎゃぁぁ・・・はぁぁぁ、あはっ、あはっ、ははははははははーーーー」

精神をズタズタにされ、身の毛もよだつ状況が起こっている幻覚を見ているはずが、なぜか笑っている。「鬼切」の呪いを超越したのか。

「ヒヒャ、ヒヒャ!僕ちゃんはもう何もききませーん。無敵のボクちゃぁぁぁぁん!うひゃひゃっ。このお薬があればもうだいじょーびょー。ヒャヒャヒャヒャー」

目をでろんと剥き、口から泡を吹きながら笑い転げている。完全に精神が壊れたようだ。

「一体これ、何なんですか!?」

女子二人は顔を強張らせていて、完全にドン引き状態だ。

「あー精神が完全に壊れたみたいだな。仕方ないな。あんまり触りたくないんだがな」

俺は笑い転げるレコルナイの頭に手をやって押さえつけた。そして黒魔術の精神支配を発動させ、コイツの「思念」スキルを使い、緊急事態の助けを呼ぶ信号を発信させるよう命令する。

「り、リノスさん、何やってるんですか?」

「ああ、コイツら自分の仲間に救援信号を送ることができるんだが、レベルによって範囲が違うんだよ。コイツが一番レベルが高いから、かなり遠くのポーセハイにも届くはずだ。もっと沢山転移してくるだろうから、お前らは全員離れておけ」

「ゴン、仲間が来る前に、結界で寝ている奴らのスキルを奪うぞ。手伝ってくれ」

「わかったでありますー」

次から次へとポーセハイたちのスキルを奪っていく。そして、全員のスキルを奪いきった時、レコルナイの周囲が歪みだした。

転移してきたポーセハイは、100を超えていた。あまりの多さに、かなりの広範囲に結界を張り、中にいる奴らのMPを奪う。しかし、結界に入りきらない奴らも多い。当然そいつらは、俺たちに襲い掛かってくる。

「フェリス!ルアラ!後ろは任せた!やれ!」

「ハ、ハイ!!」

ちょっと現実逃避をしていたようだが、一瞬で帰ってきてくれた。俺は左手で周囲に結界を張りつつ、右手で向かってくるポーセハイたちにLV5の風魔法「ゴッドウインド」をぶつける。夥しい数のポーセハイが体中を切り刻まれ、バラバラにされて地面にたたきつけられた。

「フェリス殿の上5、ルアラ殿、左3!」

ゴンが俺の肩の上で女子二人に指示を与えている。フェリスは持ち前の怪力でポーセハイたちをぶん殴っている。女子とはいえドラゴンだ。全力でぶん殴られると、頭が爆発したようにはじけている。ルアラもアイスショットを中心に水魔法で攻撃をかけ、ポーセハイたちを倒していく。

「どいてください!」

ポーセハイの集団に向かって、フェリスがブレスを吐く。奴らは一瞬でその姿を消した。

「人化した状態でブレスを吐くとは、すばらしいでありますなー」

ゴンが妙に感心している。

結局、捕らえたポーセハイは30あまりで、転移してきたほとんどが俺たちの魔法の餌食になった。

「さてゴン、残った奴らのスキルを奪うか・・・まだ、残っているようだな」

フェリスが放ったブレスが焼き払った所に、ばかデカイポーセハイが転移してきている。片耳がなく、左半身が焼け焦げている。

「これは・・・」

「よー久しぶりだな、バカうさぎ。この間は逃がしたが、今回はもう逃がさねぇぞ?」

「お前は・・・メイリアスの時の・・・!」

「機会があれば一度会いたいと思っていたが、ここで会えるとはな?真打は最後に登場するってか?よくわかってるじゃねぇか」

でかいポーセハイは周囲を見渡す。そして笑い狂うレコルナイと呆然と虚空を見つめ続けるウトニカに目を止める。

「レコルナイ・・・ダンテ薬を飲んだのか・・・。ウトニカ・・・」

「レコルナイの精神を弄ってお前らに来てもらった。全員捕らえるつもりだったが、転移してきた数が多すぎて戦闘になっちまった。生き残ってるのはあいつらだけだ」

「な・・・ルワンの部隊の者たち!カシャの・・・!シンシャ!ムコマ!・・・他のやつらは・・・」

「100人くらい転移してきたか。その中で残っているのがアイツらだ」

「な、何ぃ!他の者たちは・・・死んだ!?」

「さて、教えてもらおうか?お前ら一体何を企んでいる?黒幕はいるのか?」

「おんのれぇぇぇぇぇぇ!許さん!許さんぞ!」

でかいポーセハイは懐から薬のようなものを取り出し、口の中に放り込んだ。すると、そいつの体がみるみる巨大化していく。そして禍々しい妖気を身に纏い始めた。

「おい、フェリス、ルアラ、イリモ。ちょっと厄介そうだ。お前たちは離れてろ」

ハイと三人は上空高くに飛び上がった。

それと同時に、でかいポーセハイは俺に向かって巨大な拳を振るう。全体重を乗せた、渾身の一撃のようだ。しかし、奴の拳は俺には届かなかった。体に触れるちょうどギリギリのところで止まっているのだ。

「ガアッ!ガァァァァァ!!」

「無駄だと言っているだろう」

俺は背中のホーリーソードを抜き、そいつの拳を切り落とす。それと同時に、残りの腕、両足を切断する。一瞬の静寂ののち、ヤツは体中から血を噴き出させて地面に倒れた。

「ガッ、ガァァァァァ!!」

「大人しくしてろ」

何とか動こうとするポーセハイを結界に閉じ込め、MPを奪う。そして、両手両足に最小限の回復魔法をかけて止血する。

「さてと・・・」

俺は再びそいつに鑑定を作動させる。

「・・・はああ?何じゃそら??」

コイツの過去を覗き見ると、とんでもない事実が見えてしまったのだった。
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