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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第三章 クルムファル編

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第八十話   戦後処理は面倒くさい

「あいつらか・・・」

降伏の使者であるクノゲンは降伏文章をピウスに持参し、それをハーピーが俺の下に素早く届けてくれた。その書簡に記された名前を見ながら、俺は舌打ちをしていた。自分たちが放り出した領地に復興の兆しが見えたからと言って、まさか軍を率いて奪いに来るとは思わなかった。

「まずは敗軍の将たちを引見しなければならないでありますなー」

「そうだな。本来はここに三人を連れてくるのが筋なんだが、あそこからじゃ遠い。ピウスの手紙にもある通り、俺が行くしかないな」

俺はゴンを背中に乗せ、イリモに乗って奴らの下に向かった。俺たちの姿を隠す結界を張り、上空から状況を見て回る。帝国騎士団はピウスの部隊とゲュリオン、そして海人族の部隊に完全に囲まれており、さらに上空には、帝国騎士団からは見えないが、ハーピーが飛び交っている。蟻のはい出る隙間もないほどに囲まれているのだ。俺はイリモに戦場から少し離れたところに降りてもらい、結界を解除して、奴らのところに向かった。

「ピウス!待たせたな!」

「リノス様、お待ちしていました。降伏した三名です」

ジョーノ、グラゴレイル、オーシェの三人が項垂れるようにして拘束されていた。特にオーシェは顔面蒼白で死人のような顔をしていた。俺はそいつらをイリモの上から一瞥し、

「ここでは話が出来ん。この三人はホテルクルムファルで引見する。クエナに空いている部屋を使うと伝令を出せ」

ハッ!とピウスの配下の一人が返事をし、馬を走らせる。

「ホテルは基本的に満室ではないのでありますかー?」

「いや、最悪の状況を考えて、必ず一部屋か二部屋は空けてある。そうしないと、スタッフたちが回らないのだ」

そんな話をゴンとしていると、一人の男が俺の前に進み出る。

「帝国騎士団のクノゲンと申します。この度は我々へのご厚恩、感謝であります。本来ならば騎士団副団長のオーシェが応対せねばなりませんが、ご覧の通りの状況です。誠に不躾ではありますが、私を介添えとして同行させていただきたく、お願い申し上げます」

「ク・・・クノゲ、ン、勝手・・・な・・・ことを・・・する・・・な」

息も絶え絶えにオーシェが呟く。

「このポンコツ野郎じゃ話が出来なさそうだ。いいだろう、クノゲン。同行を許そう」

「ありがとうございます」

「ピウスはこの四人を連れていけ」

オーシェは一人で歩くことが出来ず、クノゲンに肩を貸してもらいながら連れられていった。

さすがに司令官が連行される場面は、兵士たちには衝撃的だったようで、動揺が走っている。俺は兵士たちの前に進み

「静まれ!全体気を付け!!」

一瞬のうちに隊列が整えられる。さすがによく訓練されている。

「クルムファル領を管理しているリノスだ。諸君たちは俺たちの館を攻撃した。そのために俺たちも防衛手段を取らせてもらった。亡くなった兵士たちには哀悼の意を表するが、これも戦場の習いだ。この戦いを起こした張本人たちには罪に問うが、諸君たちは命令に従ったまでで、俺たちに敵意はないと信じる。追って帝都に帰還の手続きをとる。指示があるまで待機せよ!」

俺はマルセルとカールスにそれぞれ騎士団の兵士を預かるよう指示を出した。兵士たちは唯々諾々と彼らに引率されてカイリークとトホツの町に向かっていった。

「フェリス、ルアラ、よくやったぞ」

「エヘヘ。大したことじゃないですよー。それにしてもリノスさん、すごいですね。すごいかっこよかったですよ」

「師匠、まるで神様のように眩しかったです」

「世辞はいい。お前たちは館に帰って、リコたちを警護してくれ。ゲーキもご苦労だった。戻って休んでくれ。ハーピーたちは引き続き空を見張ってくれ。その時はカイリークとトホツの騎士団が大人しくしているかも忘れずに頼む。何か異常があればすぐに知らせてくれ。ご苦労だった!」

皆が引き上げていく。俺は飛び立とうとするフェリスを呼び止め、

「館に着いたら、ハーピーとゲュリオンたちにぜんざいを作ってやってくれ。少し多めに作れよ?俺達も食べたいから」

「任せてください!では!」

「お姉さま痛いです!乱暴にしないでください!」

「うるさいわね!大人しくしてないと落ちるわよ!」

ギャアギャア言いながら二人は森の奥に消えていった。俺はイリモと共に、ホテルクルムファルに向かった。


「さて、一体なんでこんなことになったのか、訳を聞こうか?」

「・・・」

ホテルのスイートルームで始まった降伏の会談は、重苦しい雰囲気が漂っていた。三人共に顔面蒼白で俯いている。

面倒くさいのでこいつらを鑑定する。

「・・・大体わかった。お前たちはクルムファル領の収穫された作物を横取りするためにこんなことを起こしたんだな?バカな奴らだ。お前たちの下らない欲望のためにいったい何人の人間が迷惑したと思っているんだ。バカ、という言葉以外お前たちを形容する言葉を俺は知らん」

「・・・き、貴様などに、わかって、たまるか」

絞り出すようにオーシェが呟く。

「アホかお前。部下を見殺しにした挙句、死ぬこともできずにのうのうと生き残っている奴のことなど、知りたいとも思わん」

オーシェは殺意を込めた目で俺を見ている。

「お前たちが起こしたこの戦いの理由は、クルムファル領の収穫物の横取り。違うのなら違うと言え」

三人共に俯き、震えている。

「無言は肯定と受け取るぞ。それにしてもお前ら厚かましいな。自分たちが放棄した領地が復興したからその収穫物を奪う。どういう思考回路を通れば、そんな考えに至るんだ?死んだ兵士が哀れすぎるな。クノゲン、そもそもこの軍は一体何だ?よくこれだけの兵士を集められたな」

「我々は北方軍に所属しており、オーシェ副団長の旗下にある兵たちです」

「被害はどのくらいだ?」

「約、半数が死傷したと見ています」

「そんなにも兵を犬死させたのか。マジでポンコツだな」

「僕たちをあまり粗略に扱わない方がいいぞ。僕がその気になれば、君の身分をはく奪することなど、簡単にできるんだ」

「ジョーノ、脅しになってないな。大体俺は身分には興味がない。むしろそういう煩わしいことから解放されたいと願っている。身分はく奪?ハッ、こちらからお願いしたいわ!」

ジョーノは唇をかみながら俯いている。

取りあえず、この三名はホテルで軟禁状態にすることにし、その警護をピウスたちに任せた。俺は報告のため帝都に向かう。途中、カイリークとトホツの町に寄り、捕虜となっている騎士団の様子を見る。特に大きな問題もなさそうだが、やはり同僚が魔物に蹂躙されたのがショックだったのか、皆、暗い顔をしている。

兵士たちに飯を食わせてやってくれと、食料を置いておこうとしたが、叔母さんたちに断られた。200人以上いるのだが、美味いものを食わせてやるよ!という笑顔にちょっと感謝しながら俺は帝都に向かった。

夕闇が迫るころ、宮城に着き、宰相閣下に取り次ぎを願う。しばらく待たされたが、宰相閣下とヴァイラス殿下がやってくる。俺は今日のことを二人に報告した。

「帝国騎士団が?そんなバカな」

「それは本当のこと・・・なんだろうな」

「本当ですよ。まずは、兵たちを帝都に帰さなくてはいけないと思うのですが」

「それはそうだ。北方軍の軍団長はラファイエンス殿だ。彼にも知らせてやった方がいいだろう。誰か、ラファイエンス殿を呼んでこい」

王国騎士団の詰め所は宮城の中にあることもあって、思いのほか早く軍団長はやってきた。

「何と・・・オーシュが・・・。まさかそんなことを考えていたとは・・・」

軍団長はかなりショックを受けているようだ。銀髪をきれいにまとめた、ナイス・ガイの風貌をしているが、その顔に大きな影を落としている。

「わかりました。今回のことについてはこのラファイエンス、心からお詫びする。明日、私がオーシェとその兵達を連れて帰ろう」

「くれぐれも、兵たちに罰を与えないようにお願いします」

「もちろんだ。オーシェの命によって多くの兵が失われた。一番の被害者は兵たちかもしれんな」

ジョーノとグラゴレイルについても拘束されることになり、明日の朝、俺はラファイエンスと共にクルムファル領に戻ることになった。

城を出て、イリモに乗って屋敷に帰る。全員帰っているかと思いきや、まだ誰も帰ってきていなかった。そのまま転移結界に乗り、クルムファルの館に移動する。すると、リコ、ゴン、フェリス、ルアラがいた。

「ぜんざい、作りましたよー。みんなとても喜んでくれました」

「リコ姉さまにも手伝ってもらいました。姉さますごく手際がいいんですよ」

ここだけは平和な時間が流れている。俺はこれまでのことと明日のことを説明する。

「それは大変ですわね。私たちは今日はこの館に留まります。何が起こるか分かりませんですから」

「リコ、一人で大丈夫か?」

「フェリスやルアラがいるから大丈夫ですわ。いざとなればゴンもいますし」

「そうか、じゃあ頼むぞ」

俺はリコを抱きしめてから、屋敷に帰った。

ダイニングでペーリスとメイが待っていた。彼女たちの顔を見ると、昼から何も食べていないことを思い出し、急激に腹が減ってきた。何か作りましょうというペーリスの言葉に甘えつつ、久しぶりに俺も一緒にキッチンに立つ。メイも一緒に手伝ってくれた。今日の日の話をしていると、あっという間にパンにスープにサラダ、黄金鳥のから揚げが出来上がった。この鶏肉も残りわずかになってきた。またジュカ王国に行ける日があれば、また狩りたいものだ。

ガッツリ食って満腹になった俺はメイと風呂に入り、そのまま一緒にベッドに入った。
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