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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第三章 クルムファル編

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第七十三話  王座陥落

「カイリークもトホツも、リノス様の結界のおかげで被害その者はありませんが、細かくヒビが入っており、再度襲われた時は、かなり危険であると思います」

そこそこ丈夫に作った俺の結界にヒビを入れるとは、なかなかのものだ。まあ、2~3回の襲撃であれば問題なく守り切れるだろう。

「魔物の規模は?どんな魔物が襲ってきたんだ」

「ゲュリオンです。約200頭ほどいました」

「襲われたのはいつだ?」

「トホツが一昨日、カイリークが昨日です。この流れですと・・・」

「次はクルムファルの館か」

「はい、今日には仕掛けてくると思います」

クルムファルの館にはハーピーを50羽連れて行っているが、さすがに森の王者であるゲュリオン200頭と対するのには分が悪い。

「よし、わかった。俺が行く。ちょうど今日はクルムファルに行こうと思っていたんだ」

そしてペーリスとメイを留守番に残して俺たちは転移結界に乗った。

クルムファルに到着すると、まずトホツに転移する。町の責任者であるカールスに話を聞く。

「一昨日の昼過ぎに、城門の警備兵から魔物の来襲の連絡を受けました。城門を固く閉じ、女子供は避難させました。幸い、リノス殿の結界に阻まれて被害は出ませんでしたが、約100頭のゲュリオンの突撃と風魔法はかなりの衝撃でした」

トホツの結界を見ると、少々ひびが入っていたが、特に問題はなさそうだ。一応修復をして、続いてカイリークの町に飛ぶ。

町の長であり、海人族の長でもあるマルセルに事情を聴く。

「昨日の昼過ぎに襲来されました。トホツのカールスから報告は受けていたので、態勢は整えたつもりでしたが、何せ200頭ものゲュリオンです。城門を閉じて防御するしかありませんでした」

結界に行ってみると、かなり大きなひびが入っており。あと一息で崩壊するところだった。再度結界を張り直し。前回よりもさらに強化したものにする。

「何でゲュリフォンが襲ってくるんだ?」

「おそらく、魚の匂いでしょう。先日大量のエサラハルを捕獲して、そこからたたきを作ったり、乾燥エサラハルを作ったりしていますので、その匂いが海風に乗って森の奥まで届いたのだと思います」

「と、いうことは、またゲュリオンは」

「おそらく態勢を立て直して、襲いに来ると思います」

俺は「マップ」を見る。注意して見ていくと、大きな魔力の塊が森の奥にあった。そこだけ真っ赤に表示されているので、これがゲュリオンだろう。カイリークの町からそう離れていない所にとどまっている。おそらく狙いはカイリークだろう。

「今度襲ってくるのならば、コイツらと戦わねばならないな」

「しかし、ゲュリオンの数が多すぎる。我らだけではとても・・・」

「大丈夫だ。俺に考えがある」

しばらくすると、ゲュリオンの集団が動き始めた。やはり真っすぐに南下してきている。狙いはカイリークだ。

「ゲュリオンだ!ゲュリオンが出たぞ!」

門番の叫びを聞いて俺たちは城門に移動する。城壁の上から見ると、でかいゲュリオンが横一列に並んでゆっくりとこちらに移動してきている。しかも、上空にもかなりの数のゲュリオンの姿が見える。よく見ると、一回り以上デカイ体を持つゲュリオンが先頭にいた。

「あれはゲュリオンキングでありますなー。さすがは森の王者でありますー。一番強い個体が先頭を切ってくるようでありますー」

俺は刀を装備して、城門から一人出る。ゆっくりとゲュリオンキングの所に歩いてく。そしてそいつに指をさし、指をクイクイと動かしてヤツを挑発する。

プライドを激しく傷つけられたゲュリオンキングは、俺に向けて猛ダッシュで突っ込んでくる。俺は「黒刀」を抜いてそいつの眉間を狙って突きを入れる。しかしヤツは真横に飛びそれを躱す。そして鋭い爪を持った前足で俺を切り裂こうと腕を振り下ろす。それを俺は体を躱していなす。

翼を動かしながらゴウ、ゴウと鳴き声を出すゲュリオンキング。体から緑色の霧が立ち上る。しばらくすると、無数の風魔法「風刃」が俺に向けて放たれた。俺は同じ風魔法を発動させて風刃をカンストする。

俺は再びヤツに突きを入れる。今度は顔を躱してよけにかかる。しかし、俺は突きを途中でやめ、そのまま奴の左前脚を狙って刀を振るい落す。

「バキィ!」

刀に手ごたえを感じる。

「ゴアァァァァl!!!」

凄まじい叫び声。見るとヤツの左足が折れている。そのまま俺は、奴の頭をめがけて刀を振り下ろす。

「ギャゥオ!!」

ガクンとヤツの体が落ちる。流れるような動きで俺は奴の右前脚と両後ろ足に刀を振るう。両手・両足を完全に砕かれてヤツは地面に這いつくばった。

「まだやるか?」

荒い息をしながらヤツは俺に殺意を込めた目を向けてくる。どうやらまだまだやるようだ。俺はヤツに回復魔法をかけて傷を回復させる。

「さて、二回戦と行くか?」

襲い掛かってくると思いきや、ヤツは俺を睨んだままゆっくり後ろへと下がっていく。他のゲュリオンは固唾をのんで見守っている。そのまま逃げるのかと思いきや、ぴたりと動きを止めた瞬間、奴の姿が消えた。

気が付くと、奴の顔が俺の頭の上にあった。大きな口を開け、俺の体をかみ砕こうとしている。反射的に体を避けるが間に合わず、左肩に食いつかれる。

「ガキィィィィーン!バリバリバリー!!!」

「リノス!」

「リノスさぁぁん!!」

「師匠!」

リコたちの悲鳴のような絶叫のような叫び声が響き渡る。俺は微動だにしない。しばらくすると、ズルリとゲュリオンキングの頭が俺の肩から滑り落ちた。

「キュァァァ・・・」

立派な牙は俺の結界に阻まれ、完全に砕けていた。口から血を出しながら声にならないうめき声を上げ続けている。俺は背中のホーリーソードを抜き、一閃する。ゲュリオンキングの両目を斬り、光を奪う。あとは背中の翼、両前足、両後ろ足を順番に斬り飛ばしていき、再びヤツは地面に這いつくばった。

「ずいぶん素早い動きだな。一瞬とはいえ俺の視界から消えたのは褒めてやる。さて、三度目の正直と言うからな。その素早さと突撃力でもう一度やってみるか。まあ、二度あることは三度あるとも言うが、頑張ってみろ」

再び回復魔法をかけてゲュリオンキングを治癒してやる。

最早コイツに戦意はなかった。尻尾を後ろ足の間に挟みながら、少しずつ後退し、ある程度俺との距離が出来ると、脱兎のごとく逃げ出した。

「バカ野郎、逃げてんじゃねぇよ」

俺は「灼熱弾」を放ち、ゲュリオンキングの右後ろ脚を奪う。突然後ろ足の一本を飛ばされたためバランスを崩してヤツは倒れる。その直後、飛ばされた足から火が噴き出し、同時に、奴の前方が大爆発を起こす。爆風で俺の近くに飛ばされてきたヤツは全身に大火傷を負い、瀕死の状態になっていた。

俺は三度ヤツに回復魔法をかける。

ゲュリオンキングは微動だにしない。俺はホーリーソードを鞘に仕舞い、「鬼切」を抜いてヤツの前に立つ。

「もう一回やろうか?今度はこれまで以上の地獄を見せてやるよ?」

「クゥアァァァァァ」

両目を固く閉じ、腹を見せて降伏のポーズを取った。その体勢のまま俺はヤツに話しかける。

「なんだ、もうやらんのか?」

「お願いである。殺さないでほしいのである」

「お前、俺たちの村を襲っておきながら、今になって命乞いか?ちと、虫が良すぎるんじゃないのか?」

「・・・そうかもしれん。で、あれば一思いに殺してほしいのである」

そんな会話をしていると、10匹ほどのゲュリオンが俺に向かって走ってきた。どうやら俺に噛みつこうとしているようだ。さっきの戦いを見てなかったのか?と思いつつ、コイツらを次々に「鬼切」でぶった切っていく。

「ゴアアアアアアアアアアアーーーーーー!!!」
「ギャオオオオオオオーーーーギャオオオオ!!」
「グオギャァァァァァァ!!!!グギャァー!!」

10匹のゲュリオンがのたうち回っている。その光景を見て、他のゲュリオンは完全に戦意を喪失したようだ。

「お前はゲュリオンキングと見た。引き連れているゲュリオンたちに降伏させろ。それが出来るのであれば、命は助けてやる。それが出来ぬのなら、お前らは皆殺しだ。こいつらのように狂い死にするか、お前が受けたような全身火だるまになって死ぬか、選ばせてやる」

ゲュリオンキングは立ち上がり、くるりと仲間の方を振り返ると、すさまじい咆哮を上げた。すると、上空にいるゲュリオンと森の中にいるゲュリオンが俺のところに集まり、全員が座って頭を下げて、俺に降伏の意思を見せた。

それを確認し、のたうち回っている奴らも治癒してやる。治癒が終わった瞬間から奴らは腹を見せたポーズをとり、微動だにしなくなった。これはこれで放っておこう。

「お前らは俺に敗れて、俺の配下となった。俺の命令は絶対だ。背くはもちろん、拒否の姿勢も、お前らの死を意味するからそう思え」

「・・・わかった」

ゲュリオンキングが群れを代表して答える。

「俺は配下の者たちを守る。どう守っているかは配下のハーピーに説明させる。まずは、なぜ、俺たちの町を襲ったのか、聞かせてもらおうか?」

「食糧確保のためである。海から美味そうな魚の匂いが毎日してくるのである。我慢できるわけがないのである。少々魚を取らせに行かせた者たちが簡単に撃退され、森の王の名にかけて一族全員を引き連れて攻撃しようと思っていたのが、このザマである」

「なるほど、見たところお前たちは猫のような風貌をしているので、もしかすると魚が好きなのか?俺の配下でいることを約束するのであれば、魚を分けてやってもいい。どうだ?」

「我らは降伏したので、ご主人の命令には従うのである」

「よしわかった。マルセル!エサラハルを分けてやってくれ。あと、たたきも分けてやってくれ」

「わ、わかりました」

夥しい数のエサラハルがゲュリフォンたちに与えられ、彼らは我を忘れたようにそれらを貪り食った。

俺たちは一旦、館に帰り、ハーピーたちをゲュリフォンの所に向かわせて、彼らに俺と配下であるハーピーとの関係を説明すると共に、彼らを館まで連れてくるように命じた。

しばらくして、200頭のゲュリオンが館の前に現れた。俺の姿を見ると何故か全員が腹を見せて、俺に降伏のポーズを取った。森の王者と歌われたゲュリオン200頭の腹が見られる機会は前代未聞だろう。しかし、ハーピーたちは一体、どんな説明をしたのだろう?

この日を境に、「森の支配者」が魔獣から人族へと変わった。
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