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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第三章 クルムファル編

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第七十話   一大作戦、「大漁」

「恩赦を受けたリコレット様の近習が、全員いなくなっただと?」

「それどころか、帝都に住む貴族の次男、三男などもいなくなっているようです」

「一体、どうなっているのだ?」

「何でも、バーサーム名誉侯爵が経営するダーケ商会が、積極的に彼らを雇用して、侯爵の領地に送り込んでいるようです」

「あんなどうしようもない領地で何をするつもりだ・・・?」

宮城内では、そんな噂で持ちきりだったらしい。無理もない。事情を知っているのは皇帝陛下とヴァイラス殿下、そして宰相閣下だけだったのだから。

カイリークの町長であるマルセルとの話を終えた俺は、すぐさま帝都に取って返した。そして、宮城に向かい、陛下に直接、リコに仕えていた者たちに即、恩赦をしてもらえるようにお願いした。幸いそれはすぐに許可され、それぞれの者たちに通達が出された。その際に、リコの名前で、バーサーム名誉侯爵家で召し抱えてもよい。希望者はこの通達をもって三日後に遠征できる装備を整えて集まるように、という通知も同時に行われた。

宮城から退出した後は、ひたすら買い出しに行く。その時に、店の人々に恩赦の者たちに出した通達を伝えて置き、希望者は三日後に指定された場所に集まるよう、知らせておいた。

大量の食糧、衣料、寝具、その他諸々の生活用品を無限収納に入れて、俺は屋敷に帰る。そして、丸二日間、俺たち一家は総出で弁当作りにいそしんだ。用意した弁当は約3000個。それを7人で作り上げたのだから、我ながら大したものだと思う。

弁当の種類も三種類作った。もっと作りたかったが、人員的にそれが限界だったのだ。

それにしても、ペーリスを筆頭に、リコ、フェリスの働きは目覚ましかった。メイなども、抗菌作用のあるバカでかい笹の葉を見つけて、それを次々にハーピーたちに取って来させていた。ゴンも屋敷で栽培している野菜等の収穫にいそしみ、その間でルアラは泣きながら手伝いをさせられていた。

俺も遊んでいたわけではない。マルセルには三日後までに漁民たちを総動員してもらうよう手はずを整えたり、館のピウスたちにもいろいろと準備物の用意を頼んだりしていたのだ。あとは、ひたすら俺も料理の手伝いである。かなりのMPを消費したが、良い仕事が出来たと思っている。

そして三日後。まずは待ち合わせ場所に集まったリコの近習たちを出迎える。その数、100名。兵士や役人もいたが、さすがに皇女だけあって、女性が多い。大半が女性だった。

こいつらはリコと共に、カイリークの町に転移させる。転移した先でリコから説明をしてもらい、準備を手伝ってもらう。

その後、帝都で噂を聞き付けた者たちを迎える。兵士や役人、獣人、冒険者もいた。その数およそ150人。俺達は先にカイリークに転移し、集まった奴らはゴンに面接をしてもらう。「呪い」のスキルがないか、物騒なスキルを持っていないかだけの確認だったが、それでも、最終的には100名まで絞られた。

ほぼ、全ての準備が整ったとき、100名の希望者たちが転移してきた。

「皆、よく来てくれた!これから一大作戦を行う!マルセル以下、600名の海人族の皆は、男は波打ち際でエサラハルの捕獲、女は捕獲されたエサラハルの解体。リコの家臣たちは、兵士たちは城門および町の警護、その他の者は指示されたことに従ってくれ。ピウスたちは、最後に転移してきた奴らに付いてくれ。帝都からの転移組は、彼らの指示に従ってくれ!」

手際よく、集まった人間たちがグループに振り分けられる。

「今から行う作戦は、エサラハルの捕獲だ。腐敗までが早い魚だ。海人族は早く、迅速に魚を捕獲し、解体してもらいたい。そして、人族は速やかにそれを処理してもらいたい!死んだ直後から腐敗が始まる。時間勝負だ!よろしく頼む!これが成功すれば、間違いなく全員が仕事にありつけるだろう。今は不安かもしれないが、俺を信じてやってもらいたい!」

そして俺は、用意された一軒家に結界をかける。そこにはメイがいた。

「メイ、頼むぞ!」

「ハイ、任せてください!きっと大丈夫です!」

全ての準備が整ったのを見届けた俺は、カイリークの海が一望できる高台の上に立つ。太陽は登り切っている。波も穏やかだ。しかし、カイリークの海はかなり先まで真っ黒になっている。

「それでは、始めるぞ!」

俺は両手に白色の球体を作り出す。その中身は、俺が火魔法で何百発の爆発を起こしているものだ。その音と衝撃を完全に閉じ込めた結界を、俺は海の中に投げる。エサラハルの群れを囲むようにそれを投げていき、その群れの真ん中に、特大の結界を投げ込む。それが海の中に消えた直後、結界を解除する。

「ドォーーーーン!」
「ドォーーーーーン!!」
「ドドドォーーーーーーン!!!」

あちらこちらで数十メートルの水柱が上がる。俺は、海岸の上に結界を張ってやる。するとそこに爆発に巻き込まれて空中に放り投げられたエサラハルが数百匹落ちてきた。それをまとめてやり、魚を解体する女どものところに届けた。

女どもが魚を解体すると同時に、海には夥しい数のエサラハルが浮き上がってきて、しばらくすると海がエサラハルで満たされた。それを海岸で男たちがとどめを刺し、女たちのところに持っていく。女たちは素早くそれを解体して、用意された箱の中にそれを入れる。それをもって人族の男たちは、ある者はメイの下に向かい、ある者は、ピウスたちの下に向かった。上から見ていると、初めてとは思えないほどのスムーズな連携が取れていた。

俺は一旦海岸に出て、海に浮いている新鮮なエサラハルを結界を使って回収し、無限収納に収める。そして、ピウスたちの下に向かう。そこでは藁でエサラハルを焼く作業を至る所で行っていた。俺は大量の氷を生成し、ピウスに渡す。その後、メイのところに移動し、メイと一緒に作業を行った。

エサラハルを狩り始めて約2時間。浮き上がったエサラハルの3分の1を回収したところで、海に異変があった。バカでかい魚が数十匹現れてエサラハルを食らい始めた。

さすがに海岸にいるのは危険なため、ここで俺たちは昼飯を食うことにする。

「ピウス!エサラハルのたたきを出してくれ!」

藁で炙られたエサラハルの刺身、その上に、スライスしたニンニク、玉ねぎ、ネギをのせ、その上からメイとペーリスの苦心作である「ポン酢」を大量にぶっかけたものが運ばれてくる。

「このメシと一緒に食べると、最高だぞ!」

一緒にお櫃に居れたアツアツのごはんも出してやる。

「うん、うまい!」

「うまみが凝縮されているようだ!」

「アタシャこの味、好きだね!」

海人族にも好評のようだ。そこに、海人族から捌きたてのエサラハルが届けられ、皆で舌鼓を打った。

海の方を見ると、見る見るうちにエサラハルは食いつくされていく。ものの1時間で、海を埋め尽くしていたエサラハルはその姿を消した。

「あいつらも食えるのか?」

「オルレインという魚でありますー。赤身の魚で、これも美味でありますー」

俺は再び爆裂結界を作り、海の中に放り投げて爆発させる。しばらくすると、エサラハルを食いつくしていたでかい魚が浮かび上がり、今度はそいつらが海を埋め尽くした。

「マルセル!あの魚たちも採ってもらえるか?」

「もちろんだ!おい、お前ら、行くぞ!」

海岸の男たちがすぐさま船の下に行き、出港する。今度は海人族たちがオルレインを実に手際よく回収していく。約1時間後、90頭に及ぶオルレインは全てマルセルたちによって釣り上げられた。

「このオルレインも捌いてもらえるのか?」

「もちろんだ。俺が捌く」

マルセㇽがどデカイ包丁をいとも簡単に操りながら、瞬く間に解体していく。そのまま10匹を解体すると、大量のオルレインの刺身が出来上がった。残りは俺の無限収納の中だ。しばらく、オルレインが食べられる。

日暮れ時になり、夕日が水平線の彼方に沈みかけたころ、ようやく一段落就くことができた。

「みんな、お疲れ様でした!見てくれ!海を!」

そこには、夕日に照らし出された、穏やかな海があった。

「俺たちの海が戻ってきた!」

「明日から漁に出られる!!」

「リノス殿、本当に海を取り戻していただけるとは思わなかった。感謝する。本当に、感謝する!!」

マイセルが力強く俺の手を握る。俺も、それに負けないくらい、彼の手を握る。

「よーし、今日は宴だ!みんな存分に飲んでくれ!食ってくれ!」

オルレインの刺身とその脂身を焼いたステーキ、エサラハルのたたきと刺身など、数種類の料理とごはん、そして酒を出して皆に振る舞う。兵士も、貴族も、冒険者も、獣人も、海人族も、男も、女も皆で料理に舌鼓を打っている。ふと見ると、海を見てひとり黄昏れるルアラを見つけた。

「おい、腹減ってんじゃないのか?お前も食え。あ、エサラハル食べると、共食いになるのか?」

大丈夫です、と言いながらルアラは俺が差し出したたたきに手を伸ばす。

「・・・おいしい」

「そうだろう?働いた後に食う飯は美味いもんだ。それが一緒に働いた仲間と一緒に食う飯だ。極上のテイストだぞ?」

「・・・でも、よかった。海が下に戻って。私、どうしようかと・・・私のせいで沢山の人が迷惑を・・・グスン・・・」

「泣くな。泣いたって過去は戻らねぇんだ。気が付いたときに直す、それでいいんだよ」

「ハイ、ありがとうございます・・・」

「まずは食え!食わねぇと力も出ないぞ!」

ハイ、とルアラは皆の輪に入っていった。

ふと、メイがいないことに気が付く。探してみると、俺が張った結界に居た。中で何やら作業をしているみたいだ。

「おーい、メイ。どうした?大丈夫か?」

「あ!ご主人様。大丈夫です。ちょっと出来栄えが気になって・・・」

「きっと大丈夫だ。ダメならダメでやり直せばいい」

「ずっと気になっていたんだが、一体何をしているんだ?」

マイセルと、その部下たちがやってきた。

「ああ、乾燥エサラハルを作っているんだ。こうすれば日持ちするし、いいダシがでる。この町の新たな産業になるかなと思ってな」

「乾燥・・・。なるほど、水気を抜いてしまえば腐らなくて済む、か・・・。そこには気が付かなかったな」

「まだ作りかけだがな。いい味に仕上がるといいのだが。なるべくそうなるように結界の中を調整しているが、まだ少し時間がかかりそうだ。ちょっと待ってくれ」

「エサラハルが商品として売ることが出来れば、この町は潤う・・・。リノス殿、いや、領主殿、感謝の言葉もない」

「いや、俺は領主じゃない。あくまで管理人だ。リノスでいい」

「リノス殿、我ら海人族は、いついかなる時でも、貴方の力となりますぞ」

「ありがとう。ところで、飯は食ったのか?飯食おう!そして酒も用意してある。今日はみんなで飲もう!」

「我らの酒も用意しました。是非、飲んでください」

「よーし!みんなで飲むぞー!」

この日、俺は記憶が無くなるまで飲んだ。そのためにある悲しい出来事に遭遇することを、この時の俺は知る由もなかった。
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