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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第二章 ヒーデータ帝国編

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第三十五話  帝都からの招待②

「うむうむ。摂政殿は有能だったな。これも惜しい人を亡くした」

宰相閣下との会話が続く。俺が呼ばれたのはジュカ王国の様子を聞くだけだろうか。もしそれだけなら、もうすぐ話も終わるだろう。ホテルに帰ってどうするかな、と思っていると、宰相閣下の顔が変った。

「さて、貴殿を呼んだのは他でもない。一つ、聞きたいことがあったのだ」

ほう、一体何だ?難しいことはわからんよ。

「他でもない。バーサーム家の魔導士、ファルコの行方は知っておるか?」

「ファルコ師匠!?ファルコ師匠をご存じなのですか?大魔導士ファルコは私の師匠です。生憎と・・・」

「そうか、やはり亡くなったか。どのような最期を迎えたのか、知っていたら教えてくれまいか?」

俺は師匠の両腕が切り落とされていたこと、胸を剣で貫かれ、首長竜に食われて死んだことを話した。

「ファルコらしくない最期だ。あのファルコの腕を切り落とすとは相当の手練れだな。やはりジュカ王国に手を出さなくてよかった。倍の兵数を有するとはいえ、おそらくジュカ王国に侵攻すれば、我々は壊滅していただろう」

「恐れ入りますが、どうしてファルコ師匠のことを?」

「ファルコと私は幼馴染でな。そうだ、ファルコはヒーデータ帝国の人間だ。幼いころから魔術に秀でていてな。魔法大学を卒業するころには、ほぼすべての属性の魔法は扱えるようになっておった。特に火魔法は帝国魔法使いの中でもトップクラスでな。将来を嘱望された魔法使いだったのだ」

「その大魔導士がなぜ、ジュカ王国に?」

「それは・・・皇女様の部屋に夜這いをかけてな。何とか阻止はしたが、警護の兵が数名死んだのだ」

・・・師匠、アンタ何やってるんだ?

「それだけであれば、何とか有耶無耶にすることはできたのだ。何と言っても、帝国始まって以来の天才魔術師だからな。しかしファルコは当時、魔法大学の教官をしておったのだが、あまりにも指導が厳しくてな。自分は回復魔法が使えるので、怪我をすれば治癒すればよいという考えであったから、情け容赦なしでな。あまりにも厳しい授業であったため、魔導士を断念する若者が激増していたのだ」

わっ、わかる~。師匠の教えを受けたことのない人にはわからないけど、マジでキツかった。本当に死ぬ一歩手前まで攻撃するんだから。子供でも情け容赦なかったんだから・・・。その後、エリルが来てフルボッコ・・・。

あの地獄の日々が蘇る。涙が出てきた。

「帝国内では、ファルコの評判は芳しくなかった。優秀な魔導士であることは認めるが、人格が最悪という評価だった。そこにきて皇女様への夜這いだ。有耶無耶に出来ぬのはわかるだろう」

ですよね~。完全に死刑になっちゃう路線ですよね。

「ファルコについてはさすがに命を奪うのは憚られた。しばらく牢に繋いでおくことにしたのだが、ヤツめ。牢を破り、再び皇女様に夜這いをかけおった」

ええっ!?二回も??師匠、あんたマジで何やってるんですかー!

「侍女のとっさの機転で皇女様は難を逃れたのだが、問題はファルコだ。帝国では討伐軍まで編成されたのだ。そんな時にアイツは私の屋敷に逃れてきたのだ」

また、ややこしいことを。

「ファルコを引き渡そうとはしたのだが、アイツは他国に逃れたいなどと言い出してな。私にとってもファルコは幼馴染で、できれば死んでほしくはなかったのだ。そこにたまたま居合わせたのがバーサーム殿でな。侯爵殿の計らいでジュカ王国に逃げることができたのだ。侯爵殿とはそれ以来懇意にさせてもらっていたのだよ」

そんなこと俺に言ってしまって大丈夫なのか?と思ったが、宰相たる者が自分の立場を悪くすることを軽々しく言うわけはない。つまり、そのようなことを言っても誰も何も言えない程度の力を、この人は持っているということだろう。

師匠は都落ちの際、とんでもない三文芝居を演じたらしい。討伐軍を前にして宰相に斬られ(もちろんフリなのだが)、「うぐぐぐぐ・・・俺の幼馴染、グレモントに致命傷を与えられるとは!!」と言って苦しみながら消えたらしい。そんなことすりゃバレるんじゃないか?とも思うが、そこは宰相閣下の手腕で何とかしたらしい。そういう意味でもこの閣下は優秀な人材なのだろう。

そんな話をしていると、一人の男が部屋に入ってきて、宰相閣下に耳打ちをする。なに?まことか?と驚く閣下。一体何事かと思っていると、

「皇帝陛下が貴殿に会うそうだ。ご苦労であるが、私と謁見の間に同道してもらえまいか」

イヤとは言えませんね。大人しく閣下の後ろについていく。迷路のような通路を歩くこと数分、バカでかい扉の前に着く。

「しばらくそこで控えていてくれ」

宰相閣下は先に入出する。しばらくすると扉が開き、中に入るよう促される。かなり広い部屋の奥に玉座が見える。進んでいくと兵士が立っている。ここで止まれ、ということなのだろう。

俺は膝をつき右手を左胸に当てる。

「お初にお目にかかります。ジュカ王国、バーサーム侯爵家に仕えます、リノスと申します。麗しきご尊顔を拝し、歓喜に堪えません」

とりあえず、紋切り型の挨拶を述べ、首を垂れる。宰相閣下の面を上げよ、の声で頭を上げて皇帝の顔を見る。

精悍な顔である。少々老いてはいるが、若いころはさぞ、と思わせる顔立ちだ。口ひげを生やしているためか、そんな印象を受ける。しばらくすると、皇帝が口を開く。

「・・・たびは・・・・く・・・った。・・・であ・・・く・・・が・・い」

あんだって?聞こえねぇよ?もう少し声張ってくれよ!

宰相閣下を見てみると、ドヤ顔で頷いている。いや、頷いてんじゃねぇよ。声がきこえねぇっつーんだよ!

「爵位も持たぬ貴殿に謁見を許されるのは異例中の異例。陛下の直接貴殿にお尋ねになりたいとの御意である。ご厚恩に感謝し、詳らかにお答えするがよい」

と宰相閣下のお話があり、その後、宰相閣下からこれまでクシャナの詰め所で聞かれたことや宰相閣下に先ほど聞かれたことを質問をされ、同じ内容を答えた。もちろんファルコ師匠の話はオフレコである。皇帝は俺の話にうむ、うむと興味深く聞いていた。

「・・・ぎ・・・た。・・・が・・・って・・・い」

やっぱり皇帝陛下の声が聞こえにくい。宰相閣下はよくあの声が聞き取れるものだ。何か特殊なスキルを持っているのだろうか?そんなことを考えていると、閣下に退出を促されて俺は謁見の間を出た。

この後、宰相閣下は政務があるとのことで俺は、案内役の侍従にその身を預けられた。また後日、宰相殿の屋敷に招待をしてくれるようだ。

宮城きゅうじょう からまっすぐホテルまで戻ってきた。既に時刻は正午を回っている。それにしても疲れた。とりあえず、昼飯を食うか。
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