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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第八章 疫病撲滅とクリミアーナ教国対決編

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第二百話   小娘の戯言

アガルタの都では、一昨日から降り出した雪が、さらに勢いを増して降り続いている。今年は例年になく大雪であり、一部では珍しく、都の人々が道路を雪かきをする光景も見られる。

そんな大雪の中、約十日前にガルビーに上陸したクリミア―ナ教の代表者たちが、アガルタの都にやってきた。彼らは到着するなり、すぐさまリノスに謁見を申し出た。

「アガルタ王におかれましては、ご機嫌も麗しく何よりでございます。私はヴィエイユと申します。そして、これに控えますは、我が一族に名を連ねます、カッセルでございます。まだまだ幼くはありますが、クリミア―ナ様へ忠誠は誰よりも深き者です。必ずや、この国を、この世界を、正しき天道に導く者でございます。何卒、お見知りおき下さいませ」

ヴィエイユは淀みのない声であいさつを述べる。リノスはそれを無表情で見ていた。

「ヴィエイユ、とか言ったな?まだ若いな。いくつかな?」

「はい、私は十四歳になります」

「十四歳?はぁぁぁ。その年で遠路はるばるよく来たな。そっちのカッセルだっけ?君は・・・八歳?すごいな。お、そこに居るのはコフレシ君じゃないか。久しぶりだな。元気そうで何よりだ。ところで、今日は何の御用で?」

「はい。我らが教皇聖下の書簡を預かって参りましたので。お届けに上がりました」

「何?教皇の書簡?」

リノスは周囲にいたクノゲンとマトカルに目配せをする。クノゲンは聞いてないよ、という顔をする。リノスは胡散臭そうな顔をしてその書簡を受け取り、目を通す。

「・・・何だこりゃ?」

リノスはそう言い捨てて、教皇の手紙をクノゲンに渡す。

「アガルタの都を楽園にする手伝いをするために、二人を遣わしたとあるが、一体どういうことだ?」

ヴィエイユは目を見開いて笑顔を作る。

「アガルタの都は、大魔王が降臨した地。その大魔王は討伐されたと伺いましたが、また再び大魔王、もしくはそれに類する魔物が降臨する可能性がございます。我々は主神・クリミア―ナ様のご加護をもちましてその降臨を阻止し、アガルタ国に真の平和をもたらせます。国の発展は、平和であること、人心の康寧が第一かと存じます。我々はそれを、この国にもたらしたく思っております」

「大魔王・・・。お前らもか・・・」

「お前らも、とは?」

「大体、大魔王大魔王っていうけど、そんなに悪いヤツか?なりたくてなったんじゃないと思うぞ?」

「それはどいう意味でしょう?」

ヴィエイユの目が鋭くなっている。カッセルは小さな声で邪教徒か?などと呟いている。

「いや、大魔王が直接俺に何かしたわけじゃないからな」

ヴィエイユはホホホと上品に笑う。

「これはアガルタ王ともあろうお方が!いいえ、失礼いたしました。アガルタ王は、長きにわたりヒーデータ帝国におられたと聞き及んでおります。それでしたら、大魔王がいかに恐ろしい存在であるのかをご存じないのも道理でございます。大魔王は、この地に長い間君臨し、死屍累々たる地獄の惨状を作り出しました。生きとし生けるもの全ての命を奪い、この国を滅ぼし、生き残った者にも苛烈な仕打ちを与え、この世の生き地獄を生み出しました。もう二度と、あのような悲劇を生み出してはなりません。その大魔王の降臨を阻止することが出来ますのは、わが主神様、クリミア―ナ様であり、その敬虔な信徒である我々のみでございます」

リノスは苦笑いを浮かべながら話を聞いていたが、やがて首をゆっくり左右に振る。

「さらに、アガルタ王におかれては、クリミア―ナ様が夢枕に立たれ、その御声を聞かれたと伺っております。これはクリミア―ナ様のご加護を頂戴している証。であれば、同じクリミア―ナ様にお仕えする我々が、お力になるのは道理でございます。このアガルタが、この都が、楽園になりますようお手伝いさせていただきたく存じます」

爛爛と輝く目でヴィエイユは語る。リノスはため息をつきながら口を開く。

「お前らの言う楽園ってのは、何だ?」

「皆が平和に、楽しく、そして穏やかに暮らせること。真の幸福がある国です」

「・・・人の価値観は千差万別。人によって幸福の定義は違うだろうに、真の幸福などあるものかね?」

「ございます。平和に、楽しく、穏やかな暮らしがあれば、皆、必ず幸福になります」

「ハッハッハ・・・。必ずか。そうか。では、具体的にどうするんだ?」

「我々にお任せください。アガルタの国はまだまだ発展途上。いえ、これからますます栄えていかねばならぬ国でございます。その思いは我が教皇様を始め、クリミア―ナ教の信徒も同じ考えでございます。既にアガルタの国づくりをお手伝いしたいと、世界中から信徒がこのアガルタに向けて続々と集まっております」

「なるほど。その前に、俺の質問に答えようか?君たちは、具体的に、この国で何をするんだい?」

「これは失礼いたしました。我々は、この国の発展に寄与します。具体的には、この国に住み、ある者は兵士としてお役に立ち、ある者は魔術師として、またある者は武器や魔道具を作り、またある者は病に倒れた者を救い、またある者は、荒れた土地を開墾し、ある者は街を作ります。信徒それぞれが技術と経験を持っております。それらをこの国で生かすことで、アガルタという国を栄えさせ、この世の楽園を築いてまいります。さらに言えば、信徒たちがこの都で生活することによって、この国は財政的に潤うことにもなるかとも存じます」

「なるほど、信徒はわかった。で、ヴィエイユとやら、貴女は、具体的に何をするの?」

「私は、呪われた者を正しき道へ。即ち、天道に従わせることが責務と考えております」

「天道に、従わせる・・・か。なかなか、だな」

リノスとヴィエイユのやり取りを見ていたカッセルが口を挟んでくる。

「アガルタ王におかれましては、是非、我々にこの国で活動する機会を頂戴できますと、ありがたく存じます。我々には優秀な医師もおります。先だっての伝染病騒動におきましても、まだまだ獣人たちの病原菌説が払しょくされたとは言えません。もしかすると、このアガルタで病の流行が起こるやもしれません。そうならぬよう、手を尽くしたく存じます」

彼は恭しく一礼をする。

「まあ、話の内容はよくわかった。ただ、見てもらえれば分かるが、この都は既に人口が増えすぎていてな。そんなに多くの信徒を迎え入れるだけの場所がない。先に獣人たちを保護した時も、彼らを都の中で保護したかったのだが、それが出来ずに、都の外に獣人村を作って保護した有様だ。アガルタの国は基本的に来るもの拒まずだ。しかし、先ほど言ったように場所がないからな。都の外に自分たちで住むところを建ててもらわなけりゃならない。それでもいいのであれば、俺はなにも言うつもりはない」

ヴィエイユとカッセルの眼がキラリと光る。そしてヴィエイユはすぐさま飛び切りの笑顔を見せる。

「アガルタ王様は、きっと我々を受け入れてくださると思っていました。ありがとうございます」

「礼には及ばない。ただし、この国では、人に迷惑をかけないというのが唯一無二の約束事だ。人に迷惑をかけるヤツはこの国にいらん。お前たちクリミア―ナ教の人間が人に迷惑をかけるとは思えんが、くれぐれも、その点だけは注意してくれ」

「畏まりました。ご懸念には及びません。我々は人を救うのが使命。人に迷惑など・・・あろうはずがございません」

嬉しそうな顔をしながらヴィエイユは答える。リノスはそれを苦笑いしながら見つめていた。

ヴィエイユ達、クリミア―ナの使者は一旦ガルビーに戻り、信徒と共に再びこのアガルタの都に戻ってくると言って、リノスのもとを辞していった。



「リノス様、あんなことを約束して、大丈夫なのか?」

マトカルが不安そうな顔をしている。

「心配するな、マト。奴らがどれだけのものか見てやろうじゃないか。奴らの思う通りことが進めばいいんだがな。さて、どこまで頑張るかな・・・?」

リノスは、意地の悪そうな顔をしながら、クックックと含み笑いを浮かべた。
次回予告:「挑戦状と暗殺予告」 3/21(火)更新予定。
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