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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第八章 疫病撲滅とクリミアーナ教国対決編

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第百九十七話 第二ラウンドの鐘が鳴る

結局、数千年にわたって人族を苦しめてきた、キリスレイ、ガイッシャ、ルロワンスという伝染病は、公開質問会に出席し、参加を表明した三十四か国において、協同研究が行われることになった。

その議長国は当然アガルタ国が選ばれ、総責任者はアガルタ王リノスが就くことになった。もっともそれは名目上のことであり、実質はメイリアスを中心に、ポーセハイのチワンとローニが補佐にあたり、その下に各国の研究者たちが居るという図式になった。

大聖堂で行われた会議は、とても白熱したものになった。結果的に、研究室の中心はアガルタに置くことになり、二か月後を目途に、研究者たちをアガルタに派遣してくることになった。それまで、実験に協力してもらった患者は、ポーセハイの里で面倒を見ることになった。この点については、ヨームアン王国にも要請を入れ、近日中にポーセハイが患者を迎えに行くと言伝を入れた。

その他、諸々のことがこの場で効率よく決まっていった。お陰で議事録を取る俺の右手は完全に限界を超えてしまい、夜は回復魔法をかけながらそれを文字起こししたのだった。俺はほぼ、一睡もすることなく、前日の会議の議事録と共に二本の議事録を書き上げ、その横でゴンがそれを同時並行で書き写していった。そして全てを書き終えた俺は、そのまま深い眠りについた。

俺がブッ倒れている間、リコを筆頭に、家族の皆が議事録を書き写してくれた。エリルとアリリアという二人の乳飲み子を、皆でサポートしながら午前中いっぱいかけて作成してくれたのだという。俺が昼前に起きて、ダイニングに降りてくると十六冊の議事録が出来がっていた。テーブルの傍ではゴンが眠りについている。俺の姿を見つけて、フェアリがパタパタと飛んでくる。

「フェアリ、みんなはどこに行ったんだ?」

「仕事に行ったよー」

「マジか・・・」

その時、ダイニングの扉が開き、リコが入ってきた。

「あ、リノス、おはようございます。ちょうど今、起こそうと思っていたところだったのですわ。皆は、お仕事に出かけられました。メイから伝言です。十三時から再び会議を行うので、クリミアーナまでお越しくださいとのことでした」

「わかった。すぐに向かう」

「あ、昼食を作っていますわ。食べて行って下さいませ」

そこには沢山のサンドイッチが作られていた。俺は遠慮せずにそれを頬張り、スヤスヤと寝ているエリルとアリリアを見てしばし癒される。そして、リコを抱きしめてから、クリミアーナに転移した。

大聖堂を使う許可は得ていなかったが、皆、当然のようにここに集まっている。チワンとローニもいる。今回は、俺の議事録の確認が中心だった。さすがに数が足りないので、回し読みをせざるを得ず、少々時間がかかった。それに一部、修正依頼が出たため、その部分を赤字で修正し、議事録は承認された。議事録を手に入れられなかった国については、各国が分担して書き写し、本日中に届けることで合意した。

結局教皇はこの二日間、姿を現さなかった。俺は議事録を司教のコフレシに預け、明日ここを離れると告げた。彼は何とも言えぬ顔をしながら、俺に挨拶をしていた。

ヒーデータの船に帰ると、ヴァイラス殿下以下、連れてきた帝国とニザのドワーフの研究者たち数十名が俺の議事録をシャカリキになって写していた。何でも、アフロディーテに住む研究者や、どさくさに紛れて入国してきた者たちが、俺の議事録を読みたいと声を上げているのだという。

「我々の成果を示すいい機会ですからね。ギリギリまで作業を行いますよ。どうせ船の中は暇なのです。いい暇つぶしになります」

ヴァイラス殿下は笑いながら、自分も書き写し作業に入っていった。

次の日、俺たちは、大量の議事録をクリミアーナ市民への置き土産に、この国を後にした。さすがにこの日だけは教皇は姿を見せ、各国の使節団に労いの言葉をかけて見送っていた。



俺とメイは早速アガルタに転移し、シディを呼んで打ち合わせをする。そして、大工のゲンさんを呼び出す。

「待たせたな大将てぇしょう!何だい、話ってなぁ」

「すまないゲンさん。都の東側にある貴族屋敷を改造してもらいたいんだ。詳しくはこのメイから聞いてほしいんだが・・・。忙しいところにさらに忙しくしてしまうな」

ゲンさんは、メイから工事の概要をフンフンと頷きながら聴いている。そして、握りこぶしをドンと自分の胸に当てる。

「任してくんねぇ!そのくらいのこと、造作もねぇやなぁ。ただ、屋敷の中をキレイにするだけの話だろ?なにも俺っちがするまでもねぇやな。んなこたぁヨタの野郎に任せときゃ一週間で終わらせちまわぁ。で、中身の工事のことだが・・・」

再びメイ、シディー、ゲンさんの三人で話合いが始まる。

「合点だ。その、ドワーフたちの作業に、俺っちと俺っちの弟子も交えてもらいてぇ」

「ゲンさん、獣人村は大丈夫かい?」

「ああ、建物の建て方は全部弟子たちに伝授してるんでぇ。ヤツらが何とかするだろうよ。何ともならなけりゃ、俺っちが何とかなるようにすらぁな。ドワーフの腕が見られるなんざなかなかねぇこった。俺っちのウデも上がろうってもんよ。ついでに、弟子たちも見させときゃ、少しは参考になるだろうよ」

「そうかい。わかった。よろしく頼むよ」

ゲンさんはニカッと笑う。その後、この三人はかなり長い時間、アガルタ医療研究所の建物について、楽しそうに議論を交わしていた。



リノス達がクリミアーナを離れて三日。首都アフロディーテでは、臨時枢機卿会議が招集されていた。一年の間に二回ものこの会議が招集されたことは、長いクリミアーナ教国の歴史の中でも、かなり稀有なことであると言えた。

非公式での開催とあって、会議の列席を許された枢機卿、司教たちは緊張の面持ちで、会場である大聖堂に着席していた。そこにゆっくりと教皇が登壇する。同時に、一人の少女と一人の少年が、教皇が入場してきた扉の前に控えている。教皇は席に着くと、ゆっくりと列席した人々を見回し、おもむろに口を開いた。

「皆さん、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。この度、特別のジモークを行うこととなりましたので、発表いたします」

会場中が騒めく。特例のジモークが行われるのは五十年ぶりのことである。通例として、特例のジモークに選ばれた者は、その大半が後に教皇に就任している。つまり、今回の特例のジモークを発表するということは、現教皇の後継者指名と同じ意味を持っていた。

「この度、特例のジモークを行いますのは、ヴィエイユとカッセルです」

会場内が再びざわめきに包まれる。後継者と目されていた教皇の息子、カトー枢機卿ではなく、その娘と甥にジモークが行われるのである。カトー枢機卿は現在、この国にはおらず、遠く離れた異国の地に赴任中である。カトー枢機卿を呼び戻すことなく、特別のジモークの実施はつまり、カトー枢機卿の廃嫡を意味し、次期教皇はヴィエイユとカッセルの二人による後継者レースが幕を開けたことを告げるものだった。

「二人の任地は、アガルタです。皆さんもご存じのとおり、アガルタ王はクリミアーナ様の御声を聞かれた御方。言わば、クリミアーナ様の加護を受けておられる御方と見ております。しかし、アガルタ王の周囲はまだまだ天道に従わぬものも多いと聞きます。このままでは、クリミアーナ様のご加護が無くなる可能性があります。ヴェイユとカッセルには、力を合わせて、アガルタ王、そしてアガルタ国を天道に導くよう期待しています」

ヴィエイユとカッセルは恭しく頭を下げる。

「ただし、ご覧の通り、二人はまだ幼い。この二人だけの力では難しい面もあるでしょう。そこで、お集まりの皆さん。どうか、この二人を助けてあげてください。我がクリミアーナ教が総力を挙げてアガルタを天道に導き、主神さまのご加護を受けたアガルタ王を、お守りしようではありませんか」

大聖堂が割れんばかりの拍手に包まれる。その中で、ヴィエイユとカッセルは何度も頭を下げて、その栄誉を噛みしめていた。教皇はその光景を満足げな表情を浮かべながら、独り言を呟く。

「アガルタの都に、全世界からクリミアーナ教の信徒が押し寄せるのです・・・。すばらしい光景が見られるのでしょうね。楽しみです。実に、楽しみです・・・」

大聖堂の拍手は、何時までも鳴りやむことはなかった。
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