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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第六章 アガルタ国編

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第百三十九話 戦い済んで・・・も、仕事は終わらない

ラマロン軍の撤退を見届けた俺たちは、部隊を二つに分け、奪われた食料の接収と、怪我をして動けないでいるラマロン兵たちの捕獲に向かうことにした。敵兵の捕獲についてはラファイエンスに任せることにして、俺たちは食料の接収に向かう。

「ぎょ~さんあるなぁ・・・」

思わず口をついて出てきた言葉がそれである。本当に、そうとしか言い表せないほどの沢山の荷台が放置されていたのだ。

「国王様、この食料、どうしますか?」

部下の一人が尋ねてくる。俺は顔をしかめて

「その、国王様はやめろ。リノスでいい。しかし、これを都に持って帰るのもアレだな。まあ、ラマロンの奴らが領民から奪った食料だ。奴らに返してやろう」

俺はあらかじめ持ってきていた紙に一筆したためる。


『アガルタ国を預かるはめになった、リノスです。ラマロン軍に食料を奪われてお気の毒さまでした。ラマロン軍は問題なく我々が討伐しました。ついては、奪われた食料は返そうかと思います。ご希望の方は、ダイワース平原まで。ただし、本日の日暮れまでしか待ちません。なお、雨天になれば撤退しますので、お早目にお越しください。ご近所お誘いあわせの上、奮ってのお越し、お待ちしております』


それを部下たちに書き写しをさせ、サダキチ達フェアリードラゴンに持たせて、領主たちの下に遣わした。直接、奴らに渡らない可能性も考慮して手紙は数十枚用意し、領主の館近辺に撒いてくるように命じたのだった。

一方、ラファイエンスたちは、とても効率的に倒れているラマロン兵を捕獲していった。捕らえてみてわかったのだが、重軽傷者が2000名近くいたのだ。特に重傷者については、俺もその治癒に駆り出される始末だった。ちなみに、ラマロン側の戦死者は、1000名を少し超える程度だった。

俺は、武装解除された捕虜たちを結界内に閉じ込め、そして、土魔法で草原に大きな穴を掘る。そこに死者を埋めるよう兵士たちに指示を出した。それらを行いつつ、ちょっと遅い昼飯の準備にかかるよう兵士たちに命じた。

昼飯はバーベキューのようなものにした。朝食用の余った焼きおにぎりを中心に、肉と野菜をどんどん焼いていく。すぐに、おいしそうな匂いが辺りに漂ってきた。俺は手が空いたものから飯を食うように指示を出す。ふと、捕虜たちを見ると、奴らは結界にベッタリとくっついてバーベキューを見ていた。俺はそいつらのところに向かう。

「何だお前ら、腹減ってるのか?」

コクコクと兵士たちが頷く。

「おーい、お前ら!コイツらにもメシ食わせてやれ!」

朝までの雨が嘘のように晴れ上がった青空の下、バーベキュー大会が始まった。


メシが食い終わり、俺たちの軍勢にも大きめの結界を張り、まったりと休憩の時間を取っているところに、食料を奪われた領主の一人が、数十人の男たちを連れて到着した。そしてその後、次々と領主たちが食料の引き取りにやってきたのだった。

領主たちの対応は様々だった。高圧的に、俺たちからむしり取るように食料を持って帰ろうとする者、ぶっきらぼうに淡々と食料を持って帰ろうとする者、そして、一番多かったのが、言い訳をしつつ俺におべんちゃらを言う者だった。

「いや、さすがは我らが王。ラマロン軍を討伐してくれると信じておりましたぞ。我らも一矢報いたかったのですが、これは王に手柄を譲らねばならんと思いましてな。敢えて奴らを見過ごしたのです。我が目に狂いはなかった!」

さすがにこれには俺も笑うしかなかった。どうしようもないバカはどこにでもいるものだが、こんな領主に仕えている者たちが、本当に気の毒に思えてならなかった。

俺は三者三様の態度を見せる領主たちに呆れながら、全員に同じ言葉を伝える。

「まずもってお前に領主としての資格はない。領民を守れなかったのだからな。欲に目がくらみ、保身に走った結果がこれだ。今後もお前に領民が守れるとは思えない。その力がないことが今回のことで証明されたからな。油断してたとか計略でしたとか言い訳するなよ?今回はたまたま俺の部下が気付いたから救援できたんだ。本来ならばお前らは領民ともども飢えていた。何より可哀想なのは領民だ。その善良なる領民に免じて、今回は奪われたものを返してやる。今後の自分たちの身の振り方をよくよく考えろ。・・・次は、ないぞ?」

領主たちは一様に俺に憎しみの視線を投げ、有り余る食料を手に、自領に帰っていった。

日が落ちかけた頃、アガルタ領の最奥に領土を持つ、サラセニア伯爵が到着した。

「・・・もう、時間切れかな?・・・国王殿」

「いや、リノスでいい。よく来てくれたな、サラセニア伯爵。奪われた食料はあそこだ。持って帰るといい」

サラセニア伯爵はじっと食料が詰まれた荷台を見つめている。そして、大きなため息をついた。

「民を・・・飢えさせるところであった」

「ああ、そうだな」

「敵の子供だましのような甘言に乗ってしまい・・・。国王、いや、リノス殿。今回のこと、サラセニア・ジャーヘム、礼を言いますぞ」

「ああ、礼には及ばん。しかし、次はない。自分の身の振り方を一度、考えてみるんだな。領民を食わせられない領主なんて、百害あって一利なしだからな」

サラセニア伯爵は、しばらくじっと俺の目を見つめ、そして、部下たちと共に食料を持って領地に帰っていった。

伯爵を見送る俺の横に、ラファイエンスがやってくる。

「リノス殿、今日はもうこの辺で、お屋敷に帰られてはどうかな?」

「しかし、将軍・・・」

「今宵はここで野営をする。なぁに、リノス殿のこの結界があれば今宵は大丈夫だ。兵士たちに持たせた結界石も、あと二日持つ。明日の朝、捕虜たちを連れて都に帰るまで、何の問題もない。奥方が、寂しがっているのではないかな?」

老将軍は俺にウインクを飛ばす。

「しかし、捕虜たちの数が多いですよ?大丈夫ですか?」

「心配いらん。捕虜たちを食わせるだけの食料も十分にある。それに、兵たちにもよい訓練になる。自軍より多い捕虜を護送するなど、これほど良い訓練の機会は滅多にない」

老将軍は兵士たちを見て嬉々とした顔で話している。

「わかりました。では、お言葉に甘えて・・・。くれぐれも兵士たちに、無理はさせないようにしてくださいね」

「ああ、分かっている!」

俺はイリモに跨り、兵士たちに声をかける。

「お前ら!俺は先に都に帰る。あとはラファイエンス将軍の指示に従ってくれ。今日の戦いぶりは実に見事だった!また、都で会おう!」

そう言って俺はイリモを走らせた。

兵士たちの姿が見えなくなるところまで移動した俺は、イリモから降り、帝都の屋敷につながる転移結界を張る。屋敷の裏庭に転移すると、何とそこにリコがいた。

「リノス!」

俺の姿を見るや、いきなり俺の胸に飛び込んでくる。その様子を察してか、イリモは一人で馬小屋に向かって歩いていった。

「どうしたんだ、リコ?」

「・・・怖い夢を見たのですわ」

「夢?」

俺はリコの背中を撫でてやりながら答える。リコは小刻みに震えていた。

「戦いの中で・・・リノスの結界が破られて・・・リノスが殺される夢でしたわ」

「そうか。それは怖い夢だったな。安心してくれ。俺はちゃんと生きている。約束通り、生きて帰ってきたよ、リコ」

リコは俺の胸から顔を上げ、まじまじと俺の顔を見つめる。

「本当にリノスですね?リノスですわね?」

俺の顔と体をペタペタと触りながら、リコは呟いている。

「大丈夫だ。ちゃーんと足もあるぞ?」

「足・・・は何か関係あるんですの?・・・やっぱり、リノスですわ」

フッとリコは笑みを漏らす。ヤバイ、マジでかわいい。

俺はリコを伴って屋敷に入った。ちょうどダイニングには夕食が並べられてあり、ペーリス特製の魚料理が並んでいた。

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

「おかえりなさい!ご主人様!」

「師匠!おかえりなさい!」

口々に皆が俺を出迎えてくれる。そしてちょうどメイが俺たちの後ろから現れる。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

「ただいま、メイ」

「朝からリコ様がずっと落ち着かずに、アガルタでも部屋の中を行ったり来たりされていました。お屋敷に帰ってきても、ご主人様を心配して裏庭と家を行ったり来たり・・・。ご無事で戻られて、本当によかったです」

「ああ、心配かけたな。・・・何だリコ、顔色が悪いぞ?大丈夫か?」

「だって・・・あんなに怖い夢をみたものですから・・・」

「そうか、せっかくだ、メシにしよう。うわっ、美味そうだな!さすがはペーリスだな!冷めないうちに食べよう!」

全員が席に着いたことを確認して、俺は口を開く。

「今回の戦闘も、ほぼ被害ゼロで勝つことが出来ました。皆さんのお蔭でもあります。感謝します。それでは・・・いただきます!」

「「「「「「いただきます!」」」」」」

皆でワイワイと食事を楽しむ。いつもの晩餐の光景が、そこにあった。
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