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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第五章 新・ジュカ王国編

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第百二十七話 対ラマロン軍作戦、発動!

「ハハハ、面白い作戦だの」

陛下はカラカラと笑い転げている。俺の隣ではラファイエンスがニヤリとニヒルな笑みを湛えている。

「まあそれで敵の動揺が生まれれば、それに越したことはないと思うんですが・・・」

「よかろう。やってみよ。余からライッセンに勅命を発しておく」

それから三日後、帝都からの早馬が国境地帯の南方方面軍に届いた。

「何だこの書簡は?」

帝国南方軍軍団長のライッセンは不快をあらわにしている。

「一体どうされたのですか?」

「これを見てみろ」

ライッセンは部下に届けられたばかりの書類を渡す。

「陛下の名代としてバーサーム様がお見えになるのですか?しかも作戦があるので、その指示に従えとは、これは一体・・・?」

「フン、戦闘をしたこともない陛下が思い付きで現場に介入してくるとは・・・。しかもご丁寧に勅命だ。やれやれ、頭が痛いわ」

ライッセンは天を仰いだ。帝国軍の陣にリノスが到着したと告げられたのは、それからしばらくしてのことだった。


「・・・なぜ、貴公がおられる?」

ライッセンは挨拶も抜きに目を丸くして驚いている。

「いやなに、長期の休暇を取ってな」

「き、休暇ぁ?」

驚くのも無理はない。俺の隣にいたのは、北方軍軍団長のラファイエンスだったからだ。

「陛下から命じられたのだ。バーサーム侯爵を警護せよと」

「・・・北方軍はどうされたのです?」

「私が居なくても、どうにかするだろう」

「・・・」

「まあ心配しなさんな。私も長い間、帝都を離れるわけにはいかないからな。2、3日後には帰らねばならない。侯爵様の作戦を見届けて、我々はお暇するよ」

ハハハと笑い飛ばすラファイエンスをライッセンは胡散臭そうな目で見つめていた。


「・・・これは、先に動いた方が負けですね」

俺と老将軍はライッセンの案内で、帝国軍と皇国軍が見渡せる山の上に来ていた。

「ああ。両軍どうにかして敵をおびき出そうといろいろやっておるが、一向に敵に動く気配がないのだ」

「敵も動けば負けだというのが分かっていますからね。しかし、こう膠着した状態も限界があるでしょう?」

「我が帝国軍は勝利を手にするまで一歩たりと動くことはない」

「強がりを言うなライッセン殿。ここに陣を張って約一ヶ月。兵達にも厭戦気分がみなぎるころであろう。南方軍軍団長たる貴公が立場上それを言えぬのはわからんでもないがな」

ライッセンはプイとそっぽを向く。

「山の中ですから魔物の襲来も多いでしょうに」

「それは何とかなっている」

「・・・まあ、ここいらの山全てに数十万人もの人間がいるのですから、魔物も襲ってきませんか?」

「・・・心配はいらんと言っているだろう!」

ライッセンは俺たちを促し、その場を離れた。そして案内されたのは、大きなテントの中だった。そこには、南方方面軍の幕僚が勢ぞろいしていた。

「さて、名誉侯爵殿の作戦を聞こうか?」

俺は幕僚たちに作戦内容を説明する。

「・・・まあ、敵をおびき寄せる作戦は理解できる。それがうまくいけばいいのだがな。しかし、問題はその後だ。何でそんなものを我々が作らなければならんのだ?」

「まあ、できるところまでで構いませんのでご協力をお願いいたします。・・・それでは、我々は早速作戦にあたります」

「さあ、楽しみだな!」

俺と老将軍はその場を後にし、クノゲンたちとの待ち合わせ地点に向かった。


「それではクノゲン、よろしく頼む」

「お任せください」

俺たちは両軍が睨み合っているイルベジ川に来ていた。対岸にはラマロン軍が柵を構築するなどして、強固な防衛線を築いている。クノゲンは懐から鋼鉄糸を取り出し、ラマロン兵の一人に狙いを定めた。

突然、対岸のラマロン兵の一人が空を飛んだ。そして、帝国軍近くの川の中に落ちた。

空を飛んだ兵士は、何が起こったのかが分からず、キョロキョロとあたりを見渡している。

「よし、行け!」

ラファイエンスの号令で、親衛隊の5駒がラマロン兵に襲いかかる。彼は慌てて起き上がり、川の中を逃げていく。親衛隊もすぐ殺さずに、一定の距離を取りながらラマロン兵を追い立てていく。

「おい見ろ!あそこ!ウチの兵が襲われてるぞ!」

対岸から20人ほどのラマロン兵が出てきて、親衛隊に襲いかかろうとする。

「よし、行け!」

そのラマロン兵に50人の親衛隊が襲いかかる。そんなことをしていると、対岸のラマロン兵に動きがあり、そのうちの一隊が動き始めた。

「今だ!」

俺は空に向かって灼熱弾を放つ。それを合図にして帝国軍の一部が動き出す。ラマロン軍同様、川の中を進み始める。軍勢的にはラマロン軍より少ない。そこに気が付いたラマロン側からさらに軍勢が押し出してきた。

「退けぇ!」

ラマロン軍が川の真ん中までやってきたところで、帝国軍が退き始める。ラマロン側はさらに追い打ちをかけようと追撃態勢に入った。部隊の先頭が渡河しようとしたその直後、森の中から弓矢と魔法がラマロン兵に向かって雨あられと降り注いだ。


「一体、前線で何が起こっている!報告せよ!」

カリエス将軍は声を荒げる。絶対に動くなと厳命していた前線で動きがあったのだ。しかも皇国軍が自ら動き出しているように見える。これはあってはならないことであった。

「左翼に展開している第二軍が突撃しています!」

「すぐに退かせろ!各自持ち場に戻れと厳命せよ!」

カリエスは怒りを込めた声で、伝令の兵士に命令を伝えた。

しかし、一旦動き出した、しかも川の中に展開している軍はなかなか動きが取れず、ラマロンの兵は次々と帝国軍の弓矢と魔法の餌食になり、その屍を川に晒した。間の悪いことに、第二軍の兵士は川に入った自軍の兵士を助けようと次から次へと川に入り、そこを狙い撃たれてさらに被害を拡大させていた。

「よし、敵陣の左翼をもぎ取るぞ!」

ラファイエンスが馬に乗り、駆け出そうとする。そこに風のように駆ける1人の騎馬武者がいた。

「退けぇぇぇぇ!!!!退けぇぇぇぇ!!!退くんだぁぁぁぁぁ!!!」

対岸の帝国軍にも響き渡る大声で河原を駆けていく。あまりの鮮やかさに一瞬、帝国軍の動きが止まる。

騎馬武者の声を聞いたラマロン軍は我先へと自陣に戻り始めた。騎馬武者は盾で弓矢や魔法を防ぎながら、最前線の兵士に声をかけていく。

「もう大丈夫だぁぁぁ!!!慌てず退け!!帝国軍は追いかけてこないぞぉ!!!」

波が引くように、彼らは引き上げて行った。しかし、川はラマロン兵の死体で溢れ、流れ出る血で真っ赤に染まっていた。

「お見事です侯爵様。まずは成功ですな」

満面の笑みを湛えたクノゲンが俺のところにやってくる。

「クッ・・・あの騎士がおらねば、私も戦いに出られたものを!」

ラファイエンスが悔しがっている。

「いや将軍、ここで怪我でもされたら俺は陛下に怒られます。まずは馬を下りてください」

しぶしぶ老将軍は馬を下りる。そして、対岸に目をやり

「あの騎士、見事な采配だったな」

「そうですな。まさか一騎だけで最前線に乗り込んでくるとは、見上げたものですな」

「ああ、なかなかできんことだ。ラマロンにも、良い騎士がいるのだな」

ラマロン軍の迅速な撤退に感心しつつ、俺たちは次の作戦準備に取り掛かる。


「・・・どういうことだ、アーモンド?」

「・・・」

ラマロン軍の本部、幕僚たちが居並ぶ中で、カリエス将軍の怒りを含んだ声がアーモンド軍団長に向けられていた。

「・・・あのままでは、第二軍は壊滅すると思ったのです」

「だからと言って自軍を離れての行動。しかも、たった一騎での行動は褒められたものではない。お前が死ねば誰が第三軍を指揮するのだ」

「お言葉ですが将軍、将たるものが命を懸けなければ、どうして兵たちに死ねと言えるのです!」

「アーモンド、お前はいくつになった?」

「・・・32歳です」

「その若さで第三軍の軍団長に任じられるだけの将器がお前にはあるのだ。もっと将たるものの振る舞いを学べ」

アーモンドはじっとカリエス将軍を見据えた。声は怒気をはらんでいるが、目は氷のように冷たい。

「アーモンド。大将が死ねばその戦いは負けだ。将たる者は最後の最後まで生きなければならん。お前の行動はどうだ?一歩間違えれば死ぬところだったのだぞ?お前が死ねば第三軍は総崩れになる。そうなれば、この戦いは皇国にとって圧倒的に不利になるのだ。わかるな?」

アーモンドは何も言わず、一礼をしてその場を離れた。

「全く・・・将器はあるのだがな。惜しいな」

「将軍閣下、やはり平民上がりのアーモンドに軍団長の任は重すぎるのではありませんか?」

猫なで声で意見を述べるのは、第二軍の軍団長であるジゼウである。

「しかし、奴の働きで第二軍は壊滅を免れた。違うか?」

「ハッ・・・」

ジゼウはバツの悪そうな顔をして頭を下げた。

あたりは既に、夕方になろうとしていた。
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