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結界師への転生 作者:片岡直太郎

第五章 新・ジュカ王国編

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第百八話   戦いの準備ではやっぱり何かが起こる

帝都ホテル・・・。俺が帝都に来て初めて宿泊したホテルだ。以降俺はこのホテルを折に触れて利用してきた。そのため、ここの支配人をはじめとするスタッフのほとんどは顔見知りであり、かなりの無理も聞いてもらえる間柄になった。

そんな帝都ホテルのスィートルームの一室に、俺とリコは座っている。目の前には、サイリュースのソレイユとアステスだ。彼女たちに、俺がジュカ王国に向かうことを伝えに来たのだ。

「詳しいことは教えられませんが、取りあえず、俺がジュカに行くことになりました。行けるかどうかわかりませんが、できれば、あなた方の集落に行きたいと思います」

「侯爵様、本当に、ありがとうございます」

「それまで、こちらの部屋でお寛ぎください。あとは出来るだけ、外出する時はローブを着てお出かけください」

「ええ、わかっています。我々は元々ラマロンの人間ですから。帝国と戦争になれば私たちは敵国の人間になりますものね・・・」

そういう意味で言ったのではないのだが、まあ、大人しくホテルに軟禁状態になってくれれば、それに越したことはない。

ソレイユたちから、ジュカ王国にある彼女の集落を聞き出す。どうやら「ルノアの森」にあるようだ。それならばちょうど通り道だし、俺の庭のような場所でもある。おそらく簡単に見つけられるだろう。

取りあえず彼女らには伝言のみを伝えて、早々に屋敷に戻る。そして俺は、屋敷に居る全員に「思念」のスキルを付与した。ポーセハイたちには「念話」とステータスに表示されていたが、俺たちには「伝達魔法LV1」と表示されていた。

「伝達魔法というのは、文字通り何かを伝える魔法でありますー。LV1は言葉、LV2は文字、LV3は見ている景色、LV4は状況、LV5は記憶が伝えられると言われているでありますー」

さすがはゴン、よく知っている。つまり、LV2でメールが送れて、LV3は画像、LV4は動画と解釈すればいいだろうか。意外とコイツも便利な機能かもしれない。

少々魔力を消費したが、俺的には全く問題はない。全員でちょっと遅めの朝食を取り、俺たちはそれぞれの仕事に取り掛かった。

リコはクルムファルに、メイはニザに転移し、ペーリスは大学に出かけていく。フェアリはお留守番だ。そして、俺、ゴン、イリモ、フェリス、ルアラは帝都に転移して、そこからクシャナを目指す。

本日の目的はクシャナに転移結界を張ることだ。帝都を歩いていると防衛隊の兵士がやけに多い。彼らとて、数日後にはラマロン国境に向かうのだ。当然、大半の兵士が動員されているために、帝都はいつも以上に混雑していた。

クシャナまで帝都からだと1日かかる。ちょっと帝都を出るまでに時間を取られてしまったので、到着がかなり遅くなるのではと心配したのだが、さすがはイリモである。わずか数時間で到着してしまった。このところ彼女の体は大きくなり、普通の馬とそう変わらない姿になった。そのために走る速さが上がり、翼での飛行時間も、半日程度であれば問題なくできるようになっていた。

道中、何らかの襲撃を警戒したが、全くの杞憂に終わった。クシャナの町が見えてくると、イリモの翼で空に舞い上がる。眼下に見下ろす、夕日に照らし出されたクシャナの町は、なかなかの美しさだった。俺たちは町を通り越し、ジュカ山脈のふもと近くに降り立って、そこに転移結界を張る。そして、一旦俺たちは屋敷に転移する。

屋敷では既にリコたちが帰ってきていて、夕食の準備が整ったところだった。

皆でワイワイと、今日の出来事を報告し合う。リコのクルムファルは順調で、最近オープンしたアキマおばさんの遊郭、ミラヤ・クルムファルも、建設に一年半もかけただけあって洗練された外観と、その雰囲気によって「文化サロン」としての機能を果たしつつあるらしい。どうやら王侯貴族が頻繁に利用しているようだ。

こういう身分の高い人々は、なかなか気軽に庶民に会うことは出来ない。公式に会ってしまうとやれ身分だの礼儀作法だのが煩くて、打ち解けてゆっくり話をすることができない。しかし、こうした遊郭でサロン的な場所となると、その身分は無きに等しいものとなる。単にスケベ心だけでなく、こうした身分を越えての交流の場になりつつあるのは、うれしい限りだ。

メイの方も順調だ。作物も豊作であり、毒物も皆無だ。それどころか国王様からオリハルコンの精製の仕方を内々に教わっているという。色々とドワーフの鍛冶師と話をしていると、何となくオリハルコンの精製技術に気づいてしまったそうで、それを国王に話すと、観念したように教えてくれたのだという。あまり国家機密に触れるのは心配だが、あの国王様に限ってメイを傷つけることはないだろう。今のところは放っておくことにする。

にぎやかな、いつもと変わらぬ夕食が終わり、それぞれが風呂に入って眠りにつく頃、俺とリコ、そしてフェリスは再びクシャナまで転移してきていた。

そこでフェリスにお弁当を渡し、彼女には先にジュカ山脈に出発してもらう。クルルカンに俺たちのことを伝えてもらうためだ。

フェリスの持っている「念話」は、範囲がかなり狭く限定的だ。ジュカ山脈のごく一部でしか通話ができない。彼女の飛行能力であれば、明日の朝方には群れに接触できるらしい。夜通しの旅になるが、ちょっと無理をしてもらう。

「じゃあフェリス、頼んだぞ」

「任せてください。必ず、許しを得ますから」

満面の笑みを浮かべて、彼女は山に向かって羽ばたいていった。


翌朝、朝食を食べ終わった頃に、フェリスから思念が送られてきた。

『ご主人様、ご主人様』

『フェリスか、どうした?』

『先ほど族長様と話をしましたところ、我々クルルカンの縄張りを通る許可をいただきました。今後はいつでも、自由に我々の縄張りを通られるがいいというお言葉までいただきました』

『おお、それはありがたいな。フェリス、ありがとうな』

『いえいえ。お安い御用です』

『今から俺たちはそっちに向かう。おそらく昼過ぎには合流できると思う。それまで休んでいてくれ』

『わかりました』

『あ、リコがお弁当を作ってくれているから、フェリスの分も持っていくな』

『やったー!わーい!』


早速俺たちはクシャナに転移し、そこからイリモの翼を使ってジュカ山脈に入った。

しばらく進むと、上空に黒龍が一匹現れたが、俺たちに手を出すことはなく、かなり長い間観察されているようだった。黒龍と言えば狡猾と言われているが、意外に用心深い種族なのかもしれない。

そのまま何事もなく山の中を進む。イリモも疲れはなく絶好調のようだ。山を初めて見るルアラは興奮しっぱなしだ。黒龍を見て手を振る余裕すらある。お陰で俺の後ろはキャーキャーとうるさい。

パチッ、パチッ

パチッ、パチパチッ、パチッ

「・・・何か変な音鳴ってないか?おいルアラ、後ろで何やってるんだ?」

後ろで俺にしがみついているルアラを見る。

「何もしてないですよー」

「ああん?さっきから鳴ってるこの音、何だ?」

「わかんないですよー」

突然「マップ」が開く。見ると周囲が真っ赤に染まっている。

「敵に囲まれているみたいだぞ?」

「この音が敵の襲撃なのでありますかー」

「わからん。おそらく、襲撃しているんだろうが俺の結界に弾かれている。その音なのだろう」

「全然姿が見えないですね。とりあえず魔法を撃ってみましょうか?」

「やめろ。もし別のドラゴンの縄張りに当たりでもしたら、敵意があると思われる。一旦下に降りよう」

ちょうど草原のようになっている所にイリモを着陸させる。


パチッ

パチチッ

パチパチ、パチッ

パチチチチ


相変わらず音だけが聞こえてくる。

「確かに、小さい殺気は感じるでありますなー」

「ゴァァァァァァァァァァァァァ~~~~~~!!!!!!」

不意に大音響が響き渡る。その瞬間、俺の周りに何かが落ちてきた。思わず咆哮のした方向を見ると、ちょっと小柄なクルルカン四匹が見えた。

「おお、クルルカンが迎えに来てくれたようだ」

「ご主人、見るでありますー」

俺のまわりには、数十頭の、背中に蝶の羽を生やした緑色の小型ドラゴンが気を失って倒れていた。
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