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アイムトリッパ 作者:亜牙憲志

第1部

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ヒーロー誕生

第二十二話 ヒーロー誕生

 ヒーローと言えば、物語の主人公を指す言葉だが、一般的に多くは英雄など通常人とは異にする、偉大な人物を想像するであろう。
 それがファンタジー世界やゲーム世界では、より明確になる。ヒーローと呼べるのは数々の冒険をこなせる、気力体力に優れた最強の戦士あり勇者である。少なくとも、貧弱な青二才が真っ先にイメージされることは無い。

 カピの今いる世界には、冒険者達がいて多様なクラス、職類を持っている。そのクラスの中に戦士系の職があり、その最高位に当たるのがヒーロークラスだ。

 虫も殺さぬような、ほっそりした青年、ついこの前まで冒険者ユニオンの事さえ大して知らなかった彼が言った。自分は「ヒーローだ」と。
 己もそれぞれが優れた冒険者であり、なおかつヒーローの鑑とも言えるマックス伯爵の勇姿を身近でよく見てきた彼ら、使用人達は戸惑った、その言葉に。


 ポン! と手を打ち、メイドのプリンシアが真っ先に戸惑いから抜け出した。

 「そりゃ凄い! やっぱりカピお坊ちゃまだねぇ~この若さでねぇ」
 上から下までじっくり若きヒーローを眺め、心から純真に感心し喜んだ。なぜなら、プリンシアはもうこの新しいカピバラ家の主人、カピが大好きだから。ポンポンとあまり筋肉の無いカピのお尻を叩きながら

 「あたしたちドワーフはね、魔法を使えないから、ヒーローに成れた者はいないんだよぉ、おやまあ~マックス様に続いて、また英雄にお使え出来るなんて嬉しいよ」

 執事のルシフィスは、驚きつつも、まだカピを冷静な眼で見つめている。主人の言っている事が本当なのか、それとも嘘、何か意図があるのだろうかと…それほど信じがたいことなのだ。

 職人のロックは思った。技師系クラスが不得意な戦闘においてでさえ、お世辞にも自分より強いとは思えないこの青年が、本当に優れた戦士なのだろうか。かと言って冗談とも、ましてや皆を騙そうとしてるとも思えず

 「ヒーローかい、そりゃ大きく出たね! まあ坊ちゃんが、俺達に嘘をついても仕方が無い……」
 執事の方をチラリと見て
 「白黒はっきりしたかったらユニオンで確かめられることじゃし、まあ……仮に大魔法使いだといくら自分で名のっても、魔法能力が低かったり、無かったりすりゃ登録されないのは周知の事実。ヒーローと登録されたのなら、坊ちゃんにその資格がある、もしくは素質かのぉ」

 いま一つ素直でない二人に不満のプリンシア
「あんた達! な~によ! まさか今さら焼きもちでもないだろうねぇ」

 「フフフッ、まあそう言うなよプリンシア。それぐらい簡単に信じられない驚くべきことじゃろ? あっそうじゃ、もしかしてこいつぁユニオンのミスか? なら前代未聞でそっちのほうが面白い――あ! 待て待て! 冗談、冗談じゃプリンシア!!」

 ロックの頑固頭にコブでも作らんとするプリンシアの構えに慌てる。

 まだ思考中の執事に向かってプリンシアが

 「ルシフィス! あんたも、マックス様と同じクラスになれ無かったって、ひがんでるんじゃないだろうねぇ~。すっごく嬉しいことじゃないの素直に喜びなさいよっ、カピお坊ちゃまが同じだって事を!」

 その言葉に執事はハッとする。ユニオンを良く存ぜぬカピが、初期クラスではなく上級クラスにまで昇っていたと言う事に、若干引っかかっていたのだが……。
 (そうだ! カピ様は、あのマックス様の血を引く方ではないか)

 「稀に、幼い頃から両親によってユニオンに登録なされ、素晴らしい才能に気がつくと言う話を耳にしたことがあります。考えます所…カピ様の場合も! はっきり覚えていなかったのはそういった事情が在ったに違いありません」

 言葉に出すと、これがまごうことなき真実だと思え、瑣末なことに疑いを持った自分が少々恥ずかしくなった執事、こころもち目を伏せる。


 仲間達の反応には実際多少の温度差があったのだが、カピは一考にもせず、ただ嬉しかった。自分の言葉が嘘で一蹴されなかったばかりか、信じてくれた事に。
 だが後幾つか付け加えて言っておかねばならない。果たして何処まで能力を話すべきか考えてみる。

 (何がどうなってこの能力値になるのかは、今の所見当つかない。が、恐らくゲームを知らない人がこの能力に設定したんだ…いくら高レベルのヒーローだといっても……こんな数値の上げ方じゃダメダメだ~)

 カピは主人を信頼しきっているメイドのつぶらな瞳を見た。

 (さすがにこれは……正直に話しても絶対変だと思われる、こんなネタ職、そう……お遊びで設定したようなキャラクターステータス)

 ステータスの能力値とは、現実世界で言えば、天性やポテンシャルにイメージが近い。もちろん努力などで増加していくのだが、当然職業クラスにより向き不向きがあり。例えば、戦士が「力」の能力を上げずに「知」を高めていけば、戦士としての重要能力が全く増えず、その者は戦士適性が無い、才能が全く無いと言う事に他ならないのだ。

 カピは高レベルのヒーロー。レベルの高さも同じく現実で言えば経験の多さ、相応の時間が必要。その経験をつむ時間によって能力も適正に上がって行く、又は上げて行くはずだ。つまり本来ならヒーローならヒーローらしいバランスの能力になっていなければおかしいのだ。

 「あのぉ……ヒーローは間違いないんだけど…レベルは……高くないんだよ…ね」
 能力値に見合うレベルを想定して言うことにした。みんなの顔を見て反応を探るカピ。

 (迷う…年齢ぐらいにしておこうか……)
 「レベルは20だった」

 執事ルシフィスの顔がパッと輝く
 「カピ様! おお素晴らしい。カピ様のお年でもう20に達するとは立派です!」

 (あぁ~まずった。そうなの~低めを狙ったのに……)

 マイスターのロックも悪戯な表情でウインクして
 「ほっほう~初心者クラスはお呼びでないって事か、やはりヒーローの称号は伊達ではないな? 坊ちゃん」

 「そ、そう? 普通はどれくらい?」カピはロックに聞く。

 「まあそうじゃなぁ~、これこそ人それぞれ努力や才能の差だが……冒険者の九割は一桁って話を聞いたことあるぞ。登録しただけって言う様な者も沢山おるからのぉ。しかし真っ当な冒険者で考えても20レベルは、なかなかなもんじゃ」

 「あたしはユニオンで5年以上前だけど、40って判定されたねぇ。お坊ちゃま! まだまだだね!」プリンシアはワハハと自慢げに胸を張る。

 「プリンシアさん、あなたみたいな筋肉バ……エリートとカピ様を一緒にしないで下さい。あなた方ドワーフは特別、まさに戦士になる為に生まれたような方々。その様な生まれついての与えられた才能と、カピ様の努力を一緒にされても困ります」ハーフエルフの執事が横槍を入れる。

 「なんだって! この無駄に歳だけ取った年寄り狐のくせにぃ~。あんただってちょ~っとレベルが高いからって、ぜんっぜんっ自慢にならないよっ、そっちこそお坊ちゃんと一緒にしないでよね」

 「わたくしがプリンシアさんより10も20もレベルが上なのは事実ですが、一言も言っておりませんよ、カピ様と比べてどうのこうのなどとは」

 ドワーフのプリンシアとハーフエルフのルシフィスが揉め出した。


 カピバラ家での日常茶飯事な風景になりつつある彼らのやり取りを横目に、カピの心は落ち込んでいた。
 この世界の真の姿を知り驚き、自分の残念で希代な能力を見せられショックを受け、その上まだまだ不安定な理解度の中、この良き仲間の信頼に足る返答をせねばならない重圧。

 (うっダメだ、まだ相場と言うものをぜんぜん把握していない、当たり前だ、これじゃ上手く誤魔化しきれない……この話題はさらっと強引に切り抜けよう!)

 「まあまあ、二人とも。あ~思い返せば……僕は運よくレベルが上がったね~」
(運がいいのは本当だ! 無駄に高い)

 「でもちょっとイイのはレベルだけ、見掛け倒しのレベルって感じ。……こんなつまらない事で、喧嘩になっても困るし……ステータスの話はこの辺で終わりにしようか?」

 執事は動きを止め、カピを正視する。
 メイドのプリンシアも首をかしげ、どうして? と、あまり納得してない。

 「はいはい! 分かりました」もはや半分ヤケクソ気味のカピ。

 「僕は体が弱いみたいでHPがなんと一桁! でもMPはそこそこあって魔法は使える……ぜんぜん肝心の魔法知らないけど。それに他の能力値も低い低い! 運だけだねマシなのは~ハハハハ~ねぇ? 一体どんな修行をしたんだか……まあ結論! 僕は最弱ヒーロー! と言う訳でみんな、これからもサポートよろしくお願いします」

 カピは畳み掛けるように残りの情報を、ほぼ正確にかつ強引に伝え、この話をスパッと切り上げた。 

 短時間で立て続けに起きた仰天インシデントに、カピの精神安定キャパシティも限界で溢れ出していたいたのだ。そのままクルリと振り向き、隠し扉の出口へ向かおうと、どんどん歩いて行く。


 ――と、罠が! 再発動した。
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