自由連想法
龍次は、ふと呟いた。
「せっかく同じ時代に生まれてきたんじゃないか。一緒に生きようぜ、同士!」
「龍次さん。今あなたの瞳は輝いているわ。」
「そうかなあ。」
「きっと、きっと、あなたは変わったのよ。」
「そうかなあ。」
「そうに決まっているわ。綺麗な瞳だわ。」
「君は、思い込みが激しいんだねえ。」
「そうよ。それだけで生きてきたの。今まで・・、そしてこれからも。」
パソコンの横には、紙がバラバラに無造作に捨ててあった。
「わあ〜〜、紙だらけ!」
龍次は拾って、ゴミ箱に入れようとした。
「だめ〜!それ、大事な私の人生なの。」
「ああ、そうなんですか。じゃあ、人生のゴミではないんですね。」
「そうなんです。とっても、とっても大切なものなんですよ。」
「そうなんですか。ゴミんね!」
「現実ばかりを見ていると、手品のように、見えてるものだけに心を奪われてしまうわ。」
「なあるほど。」
「世の中に見えてるものは、嘘だらけ。」
「なんて素敵な、セニョリータ・・・。どうも、さっきから言葉がおかしいなあ・・・」
「会話が変ですねえ・・」
「スミレちゃんと逢うと、いつもこうなんですよ。」
「わたしもです。」
「なぜなんだ〜〜!?」
「なぜなんだ〜〜!」
「これじゃあ、オペラだ。」
「そうですねえ。」
「普通の会話に戻しましょう。」
「そうですね。でも、戻るかしら?」
「スミレちゃんの魂のコアが、僕の魂を動かしてる・・」
「コア?」
「僕の潜在意識に働きかけている・・」
「スミレちゃん。」
「海岸・・」
「海・・」
「青・・」
「信号・・」
「クルマ・・」
「事故・・」
「救急車・・」
「白・・」
「看護婦・・」
「コスプレ・・」
「秋葉原・・」
「電気街・・」
「パソコン・・」
「マウス・・」
「ダブルクリック・・」
「いやらしい・・」
「なんですか、これ?」
「フロイトの、自由連想法です。手掛かりになるかと思って。」
「駄目ですよ、こんなんじゃあ。互いに無意味に誘導されてるだけですよ。」
「そうですねえ。」
「意味の無い世界を泳いでも仕方ありません。何も出てきません。」
「ほんとうは、意味があるのかも?」
「精神分析ですか?」
「はい。」
「あったとしても、素人には無理ですよ。分析する手掛かりがない。」
「そうですね。」
「いつも、寝たら消えるんです。」
「わたしもです。」
「わたしと、一緒だ。結婚しましょう。」
「まだ、直ってませんねえ。」
「なんで、こんなことを平気で言ってしまうんだろう?」
「草野球でもしません?」
「えつ?」
「わたし、学生の頃、ソフトボールやってたんです。愛美ちゃんもやってたんですよ。」
「ああ、そうですかあ。野球だったら、得意ですよ。」
「じゃあ、やりましょう。」
「仕事はいいんですか?」
「いいんです。いいんです。ほんとうは、休みなんです。」
「そうですか。」
「風を感じ自由を感じれば、自分自身に戻るかも知れません。」
「そうですね、やってみましょう。」
「わたしの魔球、打てますかな?」
「魔球ですか。それは面白い。」
三人は、グローブとソフトボールとバットを持って、自由を求め外に出て行った。
僕は 自由であろうとし 僕は僕で 自由な僕であろうとし
僕は 僕で 僕であろうとし なにものにも染まらず 自由な僕であろうとし
悲しいくらいに自由であろうとし
苦しいくらいに自由であろうとし
切ないくらいに 僕は僕であろうとし
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