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シュールミント
作:六角オセロ



百鬼夜行


りゅうじの携帯電話が鳴った。
『あっ、サッチーからだ。』
  『見つかったの。』
     『あっ、そう。良かったじゃん!』
りゅうじは携帯電話を切った。
『自殺志願者。見つかったんだって。』
「で、どうしたの。」
『止めて、帰ったんだって。』
「人騒がせなやつだなあ。」
サングラスをかけた茶髪の女が上目で言った。「ほんとに終わったの、それで。」
『らしいよ。海も満ちてるし、風も強くなってきたし。帰ろう。』
編み笠をかぶった、お地蔵さんがあった。
『あっ、お地蔵さんだ。』
りゅうじは、お地蔵さんの前で両膝を曲げて姿勢を低くすると、手を合わせた。
『お参りしていこう。』
「お参り。」

 ばあちゃんの足が治りますように 元気になって歩けるようになりますように どうかおねがいします

「なんて祈ったの。」
『それは、内緒!』
「どうせ、女のことだろう。」
『あたり〜〜〜ぃ!』
「なあんだ。心の小っちゃいやつだなあ。」
「心が貧しいなあ。」
りゅうじは、手に缶コーヒーを握っていた。お地蔵さんの前に、それを置いた。
「それ、飲まないの。」
『これは、お地蔵さんが飲むの。』
「よっぽど惚れてんだね。」
「超小っちゃいやつだなあ。」

浜辺を、ホームレス風のおじさんが、バケツを持ってくわを肩に担いで歩いていた。
「なんだ、あのおじさん。海で鍬なんか担いで。」
『おそらく、シャコでも取りにきたんだろう。』
「シャコ?」
『海老みたいなやつだよ。からが柔らかくて甘くて美味しいだよ。』
「けっこう詳しいじゃん。」
『小さい頃、ばあちゃんにつれられて、よくここに来て取ってたよ。』
「ふ〜ん。」
『鍬で砂浜を少し掘って、隠れてる穴に筆を入れんだよ。』
「筆を?」
『そしたら、敵と間違えて筆を押し出してくんだ。そこを洗濯ハサミで捕まえるわっけ。』
「洗濯ハサミで取んの。」
『挟まれると痛いから、ばあちゃんは、そうやってたな。』
「ふ〜ん。」
「いいね。そういうの。あたしなんか何んにもないなあ。ばあちゃんもじいちゃんもいなかったから。」
「俺も。でも、そういうのっていいよなあ。ロマンチックで。」
『なんだか雲行きが怪しくなってきたじゃん。』

突然、どこからか甲高い声が発せられた。
「大雨が降ってくるよ〜!」
ピンクのミニ自転車に乗って、上空を指差していた。
「あっ、けんけんけんのきょん姉さんだぁ!」
「きょん姉さん、どこに行くの〜?」
「温泉よ〜〜。」
きょん姉さんは、ぴょんと漫画のヒーローのように飛び降りると、
「早く帰ったほうがいいよ〜!」と言い残し、「けんけんけん。」と言いながら、けんけん女乗りで、三人とは逆の方向に走って行った。
『きょん姉さん、百鬼夜行ひゃっきやこう海岸のほうに行っちゃったよ。』
「温泉なんてあったっけ。あっちは、松の木ばっかりで何もないよ。」
「夜になると、妖怪が大声で唄いながら行列して歩くとこじゃん。」
「顔面血だらけの運転手の幽霊観光バスとか。」
「やっぱ、妖怪だな。」風を見ると、風はケラケラとあざけるように笑っていた。
『逃げろ〜〜!』
三人は、風に向かって無邪気な子供のように走り出した。

 ここにあるのは とんでもない毎日
   うなづくくほどに 納得できない毎日
 死んで行った人たちが 笑いながら走って行った毎日









 六角オセロゲーム 

 シュールミント・ドラゴンゲーム

 ♪テーマ曲 REBECCA - Friends 1985





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