妖怪月光姫
月明かりの中を、鮮やかな着物をきた、青白い顔の女がやってきた。
若者の前で立ち止まり、静か振り向いた。
「あけましておめでとうございます。」と言って、頭を下げた。
若者も、反射的に頭を下げ、
「あけましておめでとうございます。」と、挨拶をした。
女は、百鬼夜行海岸の方に向かって行った。
若者は、特攻隊の亡霊に尋ねた。
「なんですか、今のは?」
「妖怪月光姫です。」
月光姫は、いつまでも暗闇の中に青白く光っていた。
戻ると、赤鬼と青鬼が、部屋の掃除をしていた。
駄洒落坊主は、台所で「皿は、さらさら洗いましょ。」と言いながら、皿を洗っていた。
姉さんが隣にいて、
「あんた、黙って洗えないの!?」と叱っていた。
駄洒落坊主は、「ごめんなさい!」と、謝った。
赤鬼が、掃除機を持って、二階に上がって行った。
若者は、テーブルの上を拭いている青鬼に、
「何か手伝いましょうか。」と尋ねると、
青鬼は、「けっこうです。」と、丁寧に断った。
「お客さんは、テレビでも見ていてください。」
「はい。」
若者は、黙ってソファーに座った。
今日午後六時ごろ 女の<おだて>に乗った若い男が
レインボーブリッジから飛び降り 行方不明になっています
男のみなさん 女の<おだて>には乗らないようにしましょう
掃除が終わった頃、お父さんは二階から降りてきた。
「だれか、ビールを持ってきてくれないか。」
妖怪駄洒落坊主が「は〜い!」と返事をして、すぐにビールと栓抜きとコップを持ってきた。
「ありがとう。」
駄洒落坊主は、「おいらが、注ぎましょう。」と言って、栓を開けた。
「ありがとう。」
いつものことだった。
「君も飲むかね。」
「わたし、お酒は駄目なんです。その代わり、歌わせてください。」
「ああ、いいよ。」
「それでは、春夏秋冬を歌います。」
季節のない街に生まれ 風の無い丘に育ち〜 ♪
夢のない家を出て 愛のない人に逢う〜 ♪
今日で すべてが終わるさ〜 ♪
今日で すべてが変わる 今日ですべてが始まるさ〜 ♪
駄洒落坊主が、後を追って歌っていた。
今日で すけべが始まるさ〜 ♪
「続いて、ザ・タイガースの、君だけに愛を。」
赤鬼と青鬼が、「その曲知ってます。おいらたちが、バックで歌いましょう。」と言って、出てきた。
「よろしく!」
君だけに〜 <君だけに〜> ♪ 教えよう〜 <教えよう〜> ♪
不思議な〜 <不思議な〜> ♪ 僕の〜 胸のつぶやきを〜 ♪
駄洒落坊主が、後を追って歌っていた。
チビだけに〜 チビだけに〜 ♪
この小説は、<妖精スミレちゃん>に続きます。
同作者の最新作は、人間村 です。
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