シュールミント(23/75)縦書き表示RDF


シュールミント
作:六角オセロ



望郷


『鬼だぁ〜〜〜!』
若者は、血相を変えて下へ降りて行った。
『おに、おに、鬼が出た〜〜!』
姉さんは、きょとんとした顔をしていた。
「鬼?」
『おにです、鬼。赤い鬼!金色のハタキみたいなのを持ってました!』
「あ〜〜、あれはね。うちで雇ってる鬼なの。」
『えっ?』
「鬼の邪気払いハタキで、各部屋の悪い邪悪な邪気を払ってもらっているの。」
『邪気・・』
「邪気は邪気を呼び込んで、放っておくとチェーンのように繋がって、取れにくくなっちゃうの。」
『邪気って何ですか?』
「邪気は、病気を招き込むの。」
『そうなんですか。』
妖怪駄洒落坊主が、横から口を挟んだ。
「それをカンフー映画で、ジャキチェーンと言います。」
姉さんは、駄洒落坊主を睨みつけた。
「あんた、隅にいなさいよ!」
「隅に置けないやつ!ってことで、隅ですみません。」
『さっきと同じこと言ってる。』
「普通の人には見えないんだけども、あなたには見えるんだったわね。忘れていたわ。」
『きょん姉さん、若い頃の山崎ハコに似てますねえ。』
「あんた、ずいぶんと古い歌手知ってるのね。」
『わたしの母が好きだったもので。』
「そうなの。」
『きょん姉さんこそ、どうして。』
「父が好きな歌手なの。」
『へ〜〜〜ぇ。そうなんですか。』
発明家の、きょん姉さんのおとうさんが、望郷の目で言葉を挟んだ。
「それは奇遇だなあ。いいねえ。山崎ハコは。」
姉さんが、カラオケのマイクを手に持った。お父さんが、カラオケのスイッチを入れた。
「じゃあ1曲。山崎ハコの、ANOUあのう〜〜!」
赤鬼が両足を開き右手をかざし、大きく見得みえを切った。< あの〜う! >
きょん姉さんは、急に歌いだした。駄洒落坊主と青鬼が、バックで追いかけハモった。

 あの〜 ♪ < あの〜 ♪ >

 僕は要りませんか〜〜 ♪ 君を好きなんだけど〜〜 ♪

 あの〜 ♪ < あの〜 ♪ >

 僕は要りませんか〜〜♪ 夜が好きなんだけど〜 ♪

 あの〜 ♪ < あの〜 ♪ > 履歴書なしで〜〜 おっお〜〜〜ぅ ♪

 < おっお〜〜〜ぅ ♪ >

 深夜のコンビニ〜 ♪ おっお〜〜〜ぅ ♪

 < おっお〜〜〜ぅ ♪ >

曲の終わりに、駄洒落坊主がぼそぼそっと歌った。
「深夜の昆布煮〜〜。おっお〜〜〜ぅ。」

「娘は、山崎ハコって言うと、ANOUという曲を直ぐに歌いだすんだよ。」
『そうなんですか。でも、上手いですねえ。そっくり!』
きょん姉さんと妖怪たちの歌は、あっという間に終わった。
「娘は、せっかちだから、テンポの速い曲しか歌わないんだよ。」
「じゃあ、お父さん、1曲!」
「それじゃあ、望郷を。きょん、ギターを持ってきてくれ。」
『カラオケじゃないんですか。』
「わしゃあ、カラオケはどうもね。」
「はい、ギター。」
きょん姉さんのお父さんは、静かにフォークギターを弾きながら歌いだした。
『あっ、それ、母が好きな曲だ!』
みんなが拍手をした。駄洒落坊主も赤鬼や青鬼も拍手をした。

 青い空 白い雲 菜の花の小道を 駆けまわり蝶々とり遊んだふるさと〜〜〜 ♪

部屋の片隅で、若い特攻隊の亡霊が、直立不動の姿勢で敬礼をしていた。深くかぶった帽子で涙を隠していた。
外では、蟻達が大雨に流されまいと、必死に命をかけて松の木にしがみついていた。









 六角オセロゲーム 

 シュールミント・ドラゴンゲーム

 ♪テーマ曲 REBECCA - Friends 1985





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう