ハッシー
化け物は、耳まで裂けるほどの大きな口を開け、叫んだ。
「わ〜〜、おばけ〜〜!」
物凄いスピードで逃げて行った。
「あれぇ、どうしたんだ?」若者は、後ろを見た。
「わぁ〜〜〜、天狗だ〜〜!」
金網の中で、子供ほどの大きさの天狗が立っていた。
彼女は声を出した。
「ハッシーです。」
「えっ、これが、ハッシー。」
そのハッシーは、ほとんど動かずに立っていた。
よく見ると、天狗の顔をした、頭でっかちの奇妙な鳥だった。恐竜のような目をしていた。
「ハシビロコウという鳥で、なんでも、恐竜の子孫らしいですよ。」
「ハシビロコウ。恐竜の子孫。ぅわ〜〜、すっごいなあ、これ!偉そうな顔してるなあ。」
「太古の生き残りって感じですよね。」
「ほんとだねえ。こんなのがいたんだ、地球に…これ、空飛ぶの?」
「ええ。」
「へぇ〜〜〜ぇ。こんなのが、大空を飛ぶんだ…」
「はじめて見るんですか。」
「はじめてなんです。わぁ〜〜〜ぁ!凄いくちばしだなあ。見れば見るほど凄い顔してるなあ…』
「アフリカのビクトリア湖にいるらしいです。ほら、ここに書いてあります。」
若者は案内板を見た。
ハシビロコウ 鳥類
体長約1.2メートル、体重約5キロ
アフリカ大陸のサハラ砂漠以南を占めるエリアに生息
ワシントン条約で国際取引が規制されている希少種
獲物を狙うときは数時間にわたってほとんど動かないのが特徴
空を飛ぶのも得意で羽を広げた時は約2メートルにもなる
「こっちを睨んで、ちっとも、動きませんね。」
「三十分くらい、じっとしてるんですよ。」
「え〜〜〜、凄いなあ。哲学者みたいだなあ!」
「ハンサムですよね。」
「すごいクチバシだなあ…天狗だなあ、こりゃあ、威張ってるなあ…』
「きっと、わたしたちよりも何億年も前から生き延びてきたので、威張っているんですよ。」
「う〜〜ん、そういう顔だね…こりゃあ、妖怪も逃げるはずだ。」
「妖怪なんかよりも、先輩ですから。」
「そうだねえ。」
ハシビロコウの前に、人が集まってきた。
「人気者なんですねえ。ちっとも知らなかった。」
「ここの公園の人気者なんです。」
「こんなものに出会えるなんて、生きてて良かった。」
子供たちが大喜びしていた。
わ〜 天狗の神様だ〜
すごいなあ〜
いい顔してるな〜 立派なクチバシだな〜
「仲間はいるんですか?」
「三羽いるんですが、皆離れているんです。」
「どうして?」
「ハッシーは、ひとりぼっちが好きなんです。」
「偉そうで、そういう顔してるなあ〜〜。」
「自分よりも偉い奴には、おじぎをして挨拶するんですよ。」
「へ〜〜〜、人間みたいだね。」
若者は、思わず頭を下げた。ハッシーは哲学者のように、身動きもせずに不動の姿勢のまま突っ立っていた。
この小説は、<妖精スミレちゃん>に続きます。
同作者の最新作は、人間村 です。
六角オセロゲーム 六角オセロの掲示板
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。