挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
刻の守護者 〜乙女的大河絵巻〜 作者:いっちー

第八章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

29/36

あまつ空なる、君を恋ふ(1)

 長く、嫌な夢を見ていた気がする。
 頬に当たる、穏やかな日差し――
(ああ、今日は晴れてる……)
 あまねは、閉じた瞼を揺らした。
(猪を狩りに行こうって、頼朝が言ってたっけ……義平さんと、朝長さんも誘って、みんなで行こう。きっと、楽しい)
 …………きっと、楽しい。
 あまねは、瞼を持ち上げる。
「お疲れさま。あまねちゃん」
「……直愛さん?」
 直ぐ側から聞こえた声に、あまねは身を起こした。
 ……身体中が痛かった。
 爪が割れて剥けた指先が、じんじん鼓動する。
 あまねの意識は、微睡みの中から急速に覚醒した。
「よ、頼朝は!?」
 あまねは、一緒にいたはずの頼朝の姿が見えないのに、はっとする。
「安心して。まだ、生きてる」
 直愛は穏やかに頷いた。
 あまねは乗りだしていた身を元に戻すと、ゆるゆると力なく項垂れた。
 ――嫌な、夢。
「夢、だったら、良かったのに」
 あまねは、傷だらけの手を見下ろした。
 直愛は何も言わなかった。
 あまねは、あかぎれで捲れた皮を摘んで、引っ張った。じくり、と血が滲んだ。
「………………私にとって歴史は……数字と単語でした」
 教科書にマーカーを引く。
 語呂合わせで年号を覚える。
 テスト前に確認する。……それで、お終いだった。
「でも、血の通ったものなんですね。生きて、生きて、その生き様が綴られたものが、歴史なんですね」
 あまねは、直愛に訴えかけるような眼差しを向けた。
「私、未来を知ってるから、どうにかできるんじゃないか、って思い上がってました。この世界を、どこか、本の中のような、そんな、非現実的な所のように、思っていて」
 ぎゅっと上掛けを握り締め、あまねは唇を噛んだ。
「だけど、此処にいる私は、何かをどうにかできるような、凄い魔法使いじゃなかった。ちっぽけな、無力な、人間でした」
 脳裏に、精気を失った朝長の顔が過ぎる。義平の、力ない皮肉な笑みが過ぎる。
「――――――誰も、救えなかったっ!!」
 身悶えして、あまねは叫んだ。
 突きつけられる、無力無力無力……大好きな人たちが、いなくなってしまった。
 大好きな人が、悲しむのを止められなかった。
 頼朝は決して、あまねの前で泣かなかった。
 それが、自分の不甲斐なさを浮き彫りにしているような気がした。
「まだ終わってないよ、あまねちゃん」
 直愛の両手が、あまねの手を包み込む。
「俺たちの仕事は、頼朝を祟りから守ること。彼を守りきって、彼の命を未来に繋げて初めて、お終いなんだ」
「直愛さん……」
「頼朝の処刑は、今日だ」
「なっ……」
 言って、彼は背に隠し持っていた物をあまねに差し出した。それは……清盛が処分してしまったと言う、あの髑髏だった。
「行こう、あまねちゃん。頼朝を、助けに」
お読み下さり、ありがとうございます。
週2回更新予定です。できたらもう少し多めに更新したいかな、と思っています。
もう少しで完結です。宜しくお願いします。
linenovel.gif


感想や評価などいただけるととても励みになります。
よろしくお願いします!

web拍手 by FC2

cont_access.php?citi_cont_id=262038010&s

小説家になろう 勝手にランキング


素材お借りしました→  ふわふわ。り  はこ
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ