修学旅行 夜 第1話
広間に修学旅行生全員が集まり食事をするなかで、壱春だけが落ち着かない様子で辺りを見回す。
「どうしたのハルちゃん?? 『叔父さんの料理』…美味しくない? 」
千秋のその言葉からも、この旅館が千秋の親戚が経営してる事に、確信を持つ。
その事は尚更壱春をソワソワさせる。
「いや…料理はマジで美味いぞっ! 千秋んとこの叔父さんは凄いなっ!!」
「そう?! よかったー!!」
いつもの様に『エヘヘ』と嬉しそうに笑う千秋。
そんな千秋を見ていると、
『考え過ぎだな。』
と、安心する壱春。
料理に箸を伸ばしながら、壱春は千秋の髪が少し濡れている事に気付く。
「千秋、お前また髪の毛ちゃんと乾かさなかっただろ! 修学旅行に来て迄風邪ひくきかっ!? 」
「だって露天風呂入ってたら、夕食迄に髪を乾かす時間が…そんなに無かったんだもんっ!!」
「…まったく…。ちょっと横向いてろよー。 …これでよし!!乾く迄そうしてなっ。」
注意され、ふて腐れた態度を取る千秋に、壱春は自分の首に巻いていたタオルを、少し濡れた千秋の髪を包み込む様に巻いてあげた。
不意をつかれた壱春の行動に頭が直ぐに働く事が出来ず、千秋がお礼を口にする前に、壱春は広幸に呼ばれ腰を上げ席を立っていた。
「壱やーん!!高級な伊勢海老がまだ残ってるよー!? ジャンケンで勝った人が……伊勢海老ゲットだぜぇーーぃ!!それも…余ってる3皿分ぜんぶだぁーー!!!」
「あははっ。どうせヒロは負けるぞっ?! 勝負運ないからさー。」
笑いながら歩いて行く壱春の背中を、千秋は紅い顔でボーッと見つめていた。
そんな千秋に、横に座っていた奈緒が耳打ちする。
「修学旅行に来てぇー、何だかいい感じじゃないですかぁー? お2人さぁーん!? 」
「いいっ…いい感じって!!!なっ、奈っちゃん!?何をいきなりっっ!? 」
千秋のうろたえた表情と態度に、奈緒は言葉を続けた。
「絶対いい感じだよぉー。最初は美波先輩きてビックリしちゃったけどぉー…今はそのライバルも居ないわけだしさぁー!チャンス到来だよぉー!? 」
食事をしながらニコニコと笑う菜緒の言葉を否定するかの様に千秋は手と首をブンブンと力一杯横に振る。
「ライバルとかそんなんじゃっ!!」
そんな千秋に溜め息混じりに奈緒が呟く。
「なーんで今日という日をそんなに消極的かなぁー?? たまに度が過ぎるぐらい積極的にいくことだってあるのにさぁー。」
「積極的って………。」
千秋はそれだけ呟くと、俯きながら『うぅ…』っと唸っていた。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。