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  春風 作者:給湯器
海の家でバイト 第9話


「ほらほら早く塗ってくれよサンターー……有る意味触り放題なんだぞー?!」

「さ、触り放題って…。」


その言葉に一度ごくりと生唾を飲む壱春の事を、そう急かしてくる柚先生の横でジッと睨むようにして見詰めてくる美希の目は、完璧に軽蔑している眼差し。
その目に気圧される様に壱春は手渡された日焼け止めを持ちながら一歩後退さりする。


「いやーー…そういうのはやっぱりちょっと問題があ……どおっっ?!!」


スケベ扱いしてくる美希に応対するかの様に苦笑いを浮かべつつ、日焼け止めを塗る事を断る壱春の背中に勢い良く何かがぶつかってきた。

慌てて振り返る壱春の身体に、抱きつき密着しているのは…まさかの……美波。


「年増女のぉっ、柚先生の身体よりもぉー…やっぱり私みたいなぁ水も弾くピチピチ女子大生のぉっ、肌に触れる方がいいよねぇー春坊ぉーっ?!!」


年増女と女子大生の部分を強調している美波の言葉に、敏感に反応する柚先生は眉間にシワを寄せながら立ち上がる。
勿論、外したままの水着の紐を結び直す事無く。


「誰が年増女だっ?!誰がっ!!」

「ち、ちょっと柚ちゃんっ?!胸っ!胸っっ!!」

「へっ?…おっと危ない危ない。」

「………っ?!!ぬわっ!!」


上半身裸の姿で立ち上がる姉の柚先生を慌てて静止させようとする美希とは違い、当の本人の柚先生は至って冷静に手で胸を隠す。

それは一瞬の出来事だったが、柚先生の胸へと当然目が行き凝視する壱春は、美波の手によって勢い良く視線を外させられる形で首を後ろの方へと向けられゴキッと有り得ない音を鳴らしていた。


「大きいだけでぇ、重力に逆らえなくなった胸はぁ…見ても嬉しくないでしょっ?!」

「このっ…私の胸はまだまだ垂れてないっつーのっ!!見ろっ!ほらほらほらっ!!」

「ちょっ、お願いだから隠してってば柚ちゃんっ!!」


再び上半身裸の姿で美波へと怒り狂う柚先生を美希が止めているのだが、しっかりと美波の両手で顔を固定されている壱春には見たくても見る事は出来ない。


「そうやってぇっ…私の春坊を誘惑しないでぇっ!」


必要以上に身体を密着させる美波が、敵意剥き出しの目で壱春の背後に立つ柚先生を睨む。


「誘惑っ?!パシリのサンタを私が誘惑する必要性は無いってのっ!」

「春坊はぁ柚先生のパシリじゃ無くて未来の私の旦那ですぅっ!」

「………言っとくがストーカーは立派な犯罪だぞ沢尻姉。」

「………露出狂のぉ柚先生にはぁ犯罪なんてぇ、言われたくないですねぇーっ。」


美波の言葉に遂に理性を失った柚先生が美波に襲い掛かり、間に挟まれる壱春は、美波と柚先生にもみくちゃにされながらも一生懸命止めようと頑張るが、その気力を失う程に壱春の身体には2人の柔肌が何度も何度も擦り付けられていた。


「邪魔だサンタ!お前どけっ!!」


柚先生に突き飛ばされた壱春は、意識が半分妄想の世界へと行っていたのかフラフラと力無く砂浜に膝まづく。

そんな壱春にゆっくりと歩み寄り声をかけるのは美波と一緒に来たであろう千秋。


「大好きな大きな胸に囲まれて本当に、ほんとーに幸せそうな顔してるねーハルちゃん。」


穏やかな声の調子とは裏腹に、トゲの有る千秋の言葉と黒いオーラに、苦笑いしながら無言で笑顔を作る壱春の身体を冷や汗がつたっていた。


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