停学中 第5話
「おっさん個人プレーしすぎだってばーっ!!」
「ヘェーイッ!誰がおっさんだ誰がーっ!!そんな奴にはパスはしないぞーー? お兄様と呼べぇーい!!」
「呼ばないしー!」
少年達に囲まれながらも、ボールを取られずにドリブルを続ける広幸。
その広幸から難なくボールをカットするのは、相手チームに加わる壱春。
壱春はカウンターで味方の少年に絶妙のスルーパスを出し、アッサリと点が入る。
「イエーイ!」
喜び合う味方同士の少年達と手を叩き合う壱春。
その間に、不満気な表情を浮かべた少年達が割り込み口を開く。
「チーム変えーっ!絶対に壱兄の方がうまいんだからずるいよ!」
「えーっ?!さっきじゃんけんで決めたじゃん!」
味方に付ける高校生をどちらにするかモメ始めた少年達をなだめる様に広幸から1つの提案。
「それじゃぁ、壱やんとおれっち…ベンチに座るあの女の人の3人対そっちは全員でどう? 」
「おいおいヒロ、美希さんはやんねーだろ? 」
「ちょっと勝手に決めないで……」
「しょうがないなー!それじゃー壱兄の彼女がゴールキーパーならいいよ!」
「っ?!」
広幸の発言に不機嫌気味な表情で慌てて食い付く美希だったが、思いがけない少年の言葉にその表情を固まらせたままポケットから飴玉を取り出し無言で少年へと手渡す。
飴玉を手渡された少年は不思議そうにしている。
そして何故持っていたのか解らないが、ベンチに置いてあった鞄から軍手を取り出し手にはめると、ゴールに見立てた鉄棒の前に立つ美希の頬は赤い。
「美希さんやるんすか? 別にヒロの言う事なんか無視していいっすよー? 」
そんな美希に、苦笑いを浮かべて壱春が近付くと、より一層頬は真っ赤になり目線を壱春から外していた。
「………いや別に、正直迷惑な話だけど…春壱あんた鈍すぎっ?!」
「嫌々なら尚更参加しなくても……鈍すぎとわ?? 」
「くっ……子供達に頼まれてるんだからしょ、しょうがなくよしょうがなくっ!!早く始めなよっ!!ほらほら試合開始!!」
美希に促される様に試合開始のキックオフをする広幸。
「強く蹴り過ぎー!!」
「馬鹿ヒロジジイー!!」
「なはは…イヤーすんませんねー、って誰がジジイだーっ!!」
短い時間の間に既に少年達にナメられている広幸の蹴り出したボールを追い掛けて公園の外へ出て行く少年達の後を、広幸も叫びながら追い掛けて行く。
だが直ぐに必死の表情で戻って来た広幸の服の襟を掴むのは柚先生だった。
「こら待て戸高!!停学中にブラブラ遊び歩くとは随分なご身分だなーっオイ!!」
「イヤー…ブラブラしてた訳じゃなくてですね、壱やんと一緒に図書館で…」
「…ハアッ?!サンタも此処に居るのか? 」
「…………。」
『な、なに普通にバラしてんだよあのアホ!!…っ!!? 』
運良く柚先生に見付かる事無く公園の隅に隠れる事の出来た壱春の携帯が激しく振動する。
勿論表示されるのは柚先生の名前。
「………電話に出た方がいいと思うよバレてるんだし…。」
「それは分かってるんすけど、心の準備が…。」
「……あっ。」
「……へ? 」
ヒソヒソと小声で話す壱春と美希が不意に顔を上げると、見つけたぞと言いたげな笑みを浮かべる柚先生はポキポキと指の関節を鳴らし始める。
そしてその柚先生の背後には、公園の真ん中で横たわる広幸の姿があった。
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