ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  春風 作者:給湯器
恋のキューピッド 第5話


「……柚ちゃんが言うには喜んでデートの誘いに乗ったって聞いたんだけど…。」


しばらくの沈黙の後、重い空気を漂わせ寂し気な表情で口を開く美希。


『そんな事一言も聞いてないぞ…第一にアレは…デートの誘いだったのか? 』

美希の表情と言葉に戸惑う壱春は職員室での柚先生との会話を思い出してみるが、今日ここに来る事だけしか言われていない。
ましてや美希が来る事やデートだと言う事など全く知らなかった。


「…あぁー、えっとですね……。」


蛇に睨まれた蛙の様に固まり黙っていた壱春が喋り始めると同時に、ジーパンのポケットに入れていた携帯電話に千秋からの電話がかかってきていた。
目を反らしてそっぽを向いてる美希に対して、壱春は遠慮がちに通話ボタンを押す。


「おー、なんだ千秋? 悪いけど今取り込み中…」

「もしもしハルちゃんっ?!今近くに柚先生居ない?!」


人の話を最後迄聞かずに通話先で慌てて話し掛けてくる千秋。
壱春は周辺を一度見渡した後、目の前に居る美希を見ながら口を開く。


「柚先生?……美希さんしか居ない、イッテェっ!!」


携帯電話を持っていた手に痛みが走り、足元に落ちたのは銀色のパチンコ玉。


「何でパチンコ玉が飛んで来るんだよ!!……くぅーーっつ!」


千秋との通話を中止して携帯電話を折り畳みポケットにしまうと、手を押さえて痛みに耐える。
そして凶器と化したパチンコ玉を眺めながら、千秋の電話の意味を理解した涙目の壱春。

『俺の知ってる限りこんな危ない事してくるのは柚先生ぐらいしかいねーっ!!』

「……着いてこないでって言ったのに。」


その言葉に壱春が視線を上げると、美希も柚先生が近くに居る事が解った様子で辺りを見渡していた。
頭を右へ左へと動かしている時、人とぶつかり運悪くバランスを崩した美希が前のめりに倒れる。


「キャッ?!」

「おっと、大丈夫っすか? 」

「……あ、ありがと春壱。」


受け止められて一瞬嬉しそうにはにかむ美希は上目遣いで壱春の事を見上げる。
その美希とは対象的に、受け止めたと同時に何故か背中に悪寒を感じた壱春は身震いしていた。
その原因は勿論、柚先生の色んな意味で熱い視線のせいだったかもしれない。






+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。