春休み 第2話
「さ、流石に…話題作だけあって結構怖いな…。…ハハハッ…。」
残酷なシーンにビビリながらも強がる様に笑みを浮かべている壱春は、ベッドに座っている千秋に、後ろを振り返る様にして視線をおくる。
「………。」
「………おいおいビビリ過ぎだろ!それでテレビ画面見えてるのかよ? 」
壱春が驚くのも無理は無くその千秋はと言うと、ベッドの上で布団に頭迄くるまり、目の辺りのスペースだけを覗かせている。
「………べ、別に全然全くこれっぽっちも怖がって無いもんっ!さ、寒いだけだよっ!!」
「………まぁ、確かに寒いけどさ…。」
春休みとはいえ、3月下旬のこの季節の夜はかなり冷え込み、壱春も又、千秋とまではいかないが毛布を身体に巻き付けながらベッドに寄りかかってホラー映画を観ていた。
………それから30分後。
話の内容もほぼ終盤へと進み、その内容にのめり込んでいく千秋とは対称的に、壱春は徐々に重くなっていく自分の頭と両方の目蓋とひたすら格闘していた。
「………。」
「……今寝てたでしょハルちゃん…。」
「………寝てねーし…。」
ベッドの端にのせた頭をユックリと起こし、そしてまた再びベッドへと倒す行動を何度も繰り返している壱春を見て、可哀想に感じ始めた千秋が声を掛けた。
「もうすぐ終わりだし、寝てもいいよーハルちゃん。」
「………それじゃぁ遠慮無く…。」
毛布をベッドの上に引き上げて立ち上がる壱春が、動きを止めて千秋の事をジッと見詰めた後、真剣な表情で千秋に近付いて行く。
「何よハルちゃん……っ?!!ね、寝てもいいって言ったのは別にその、ハルちゃんの考えてる様な意味じゃなくてっ!!…私はまだ色々と心の準備とか、ホラー映画観て冷や汗かいちゃったしっ!!」
「………いや…俺が考えてるのはそこに居られると寝るのに邪魔だなと思って…。」
「じゃ、邪魔っ?!、……だよねっ!!邪魔だよね私っ!!ふんっっ!」
顔を真っ赤に染めて頬を膨らました千秋は、壱春の肩を突き飛ばしてベッドから降りるとそのまま無言でテレビ画面を見続け、反論する体力の無い壱春もまた、無言でベッドに横になり毛布にくるまって寝始めている。
「…自分1人さっさと寝ちゃってさー…こんな夜遅くに見送りもしてくれないなんてハルちゃんは冷たすぎるよ!」
壱春の事を睨み付けながらブツブツと独り言を呟く千秋が、ふと自分の携帯に目をやるとメールがきた事を知らせるピンクのランプがチカチカと光っていた。
「……エッ?!嘘でしょ?!」
メールを確認した千秋が壱春の事を起こす様にして身体を揺らす。
「んっ?…なんだよ千秋……。」
「あのさ、今日お父さんお母さん帰ってこないんだって…。」
「…………………でっ?」
既に爆睡しかけていた壱春は面倒臭そうにアクビをしながら聞き返す。
そんな千秋はさっき迄の自分の悪態に申し訳なさそうな表情を見せながらモジモジしている。
「えっとぉー………。」
「…………。」
千秋のその様子で言いたい事をある程度理解した壱春が溜め息をつきながら立ち上がると、押し入れからもう1つ毛布を取り出して千秋に手渡す。
そして再びベッドに横になり隅によると、千秋を見て『しょうがねぇから隣で寝ていーぞ』と言いた気に目配せをしていた。
「ハ、ハルちゃん?? 」
「何だよ? まだ何かあるのかっ?? 」
「もしかしたらって事も有るし…いざって時の為にお風呂入って来ていいかな? 」
「よし!お前帰れ!」
少し照れた様子ではに噛む千秋に、壱春は満面の笑みを向けながら強い口調でそう即答していた。
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