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  春風 作者:給湯器
バレンタインデー 第4話


「手作りなんだからぁ、ちゃんと食べてねぇ春坊ぉー!!」

「あ、どうもっす。」


自分の身体と一緒にチョコをグイグイと押し付けてくる美波。
その様子を一限目の授業の準備をしながら見詰める男子生徒達。
その視線は、見詰めるというよりは、どちらかと言うと睨み付けるという方に近い。


「少し大きめに作りすぎたからぁー、もし千秋からチョコ貰ってもぉ…千秋のは食べれないかもねぇー!!」

「あ、あははは…。」


そう言って微笑みかけてくる美波の言葉に反応し、鬼のような形相で見詰めてくる千秋から、壱春は視線を直ぐに外して苦笑いを浮かべた。


「……いいなー、健ちゃんと壱やんはチョコ貰えてさー!!」

「広幸君にもチョコ有るよぉー!勿論義理だけどぉー!」


羨ましそうな表情の広幸と、ポケットに手を入れて義理チョコを取り出す美波。


「マジですかっ?!生徒会長様っ!!」

「はぁーいコレ!」


美波は広幸にもチョコを手渡すと、壱春に手を振りながら教室を出て行く。

広幸は美波から貰った義理チョコと壱春の本命チョコを見比べる様に交互に見詰めて口を開く。


「…………本命チョコと義理チョコってさー、ものすごーく『差』があるもんなんだね壱やん…。」


悲し気な口調で呟く広幸の手に置かれたのはチョコボール1粒。


「貰った方がショックが大きかったみたいだなヒロユキ。」

「くぅぅぅ!!うるせーやい健ちゃんっ!!」


慰める様に広幸の肩をポンポンと叩く健太を泣き真似をしながら追い掛け回す広幸。

流石の壱春も少しだけ同情した時、いまだにチョコと格闘していた柚先生が広幸を呼び止めた。


「マジで割れないな…。おい戸高っ!チョコが欲しいならコレやるぞっ?!」

「…………あー、ソレは要らないっす。」

「何だよお前っ!あげるって言ってるのに…本当失礼な奴だな!!めちゃくちゃムカつく!!」


明らかに嫌な表情を見せて断った広幸を取っ捕まえた柚先生は、一方的に暴力をふるい始めていた。


「人の好意を邪険にするとこういう目にあうんだぞっ!!解ったか戸高っ?!」

「すいません…でした…。」


精神的にも肉体的にもボコボコにされた広幸はフラフラと立ち上がると、自分の席に着き顔を埋め本気で泣いている。

フンと鼻を鳴らして振り返る柚先生と、運悪く視線が合う壱春。
柚先生は一度教卓に戻るとチョコを持って壱春の席の隣に立った。


「おいサンタ。チョコやるぞ!…嬉しいか? 」

「はいとても!!」

「よしよし!お前は戸高と違って可愛い奴だなサンタ!!あはははっ!!」


大声で笑いながら教室を出ていく柚先生の背中を見送った後、溜め息を着き机の上のチョコ2つを見詰める壱春。
美波のチョコはまだ包装を開けていないから分からないが、柚先生のチョコは明らかに罰ゲームに等しい。

「良かったねハルちゃん!チョコレート沢山貰えて!!」


困った表情を見せる壱春に対して、何故かイライラしている千秋は嫌みったらしくそう言っていた。


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