探偵ゴッコ 第8話
「今日は色々と悪かったなサンタ?!ジャージは美希のアホに洗って返させるからさー!!」
制服の上から着ていたジャージを脱いだ壱春に、柚先生が灰色のパーカーを投げて渡し、壱春はそれを受けとると同時に大きさを確かめる様に広げてみる。
「まぁ別にいいっすけど…このパーカー小さ過ぎっすよね?!絶対入らないと思うんですけど?? 」
「文句言うなよー!それでも一番大きい奴なんだからさっ。」
そう言って苦笑いを浮かべた柚先生は、酔い潰れた妹の美希を見て更に口元を緩めていた。
その寝ている美希はというと、何時でも吐いて良い様に柚先生にバケツを抱えさせられている。
「妹の美希って自己中でワガママだろ?!私でさえ振り回される事は結構あるからなー!!」
「そうっすねー。身長はともかくとして、顔の作りもそうですけど、少しひねくれた性格も柚先生ソックリ…」
「誰がひねくれた性格だっちゅーの?!」
「柚先生、『だっちゅーの』ってもうそれ死語…」
「うるさいなーサンタ!お前こそひねくれてるぞっ?!て言うかそのピチピチパーカー着てさっさと帰れー。」
2回程どつかれた頭を擦りながら苦笑いを浮かべる壱春に、柚先生も今回ばかりは不機嫌な感じではなくハハハッと笑顔を浮かべていた。
「何だよサンタ? このパーカー着て行かないのかよー?!」
「いやいや…夜にこんなの着て出歩いてたらそれこそ捕まりますって!」
玄関先でスニーカーを履く壱春にパーカーを差し出す柚先生。
壱春は直ぐに首を振りながらそれを着て行くのを拒否する。
この時期夜になると寒いのは解っているが、流石に女物のパーカーを着て夜道を歩く程の勇気を壱春は持ち合わせていなかった。
「…それなら下まで送ってやるよ。」
柚先生はそう言うと壱春に貸そうとしていたパーカーを自分で羽織り、頭にニット帽そして首にマフラーの防寒対策バッチリの格好で、壱春よりも先に自分のマンションの玄関を出て行く。
「「………。」」
エレベーターを待つ間、2人の間に沈黙と言う時間が流れる。
それは酔い潰れて寝てしまった美希の横で、柚先生に頼まれて尾行した男性の事を話してから、初めての無言状態。
そんな状態のまま1階のエントランスにつき、オートロックのドアを出る壱春と柚先生。
「…んじゃサンタ。今日は長い間付き合わせて悪かったな?!」
申し訳なさそうな、寂しそうな表情を見せた柚先生の言葉に、何故か壱春が心を痛めていた。
「…柚先生。」
「ん? 何だ?!」
「そのパーカー…やっぱり寒いからかりていいっすか? 」
「?? あぁいいけど…。」
柚先生はパーカーを脱ぐと壱春に手渡した。
「…ブハハッ!!何だその姿!? ピチピチ過ぎて上半身だけ全身タイツ着たみたいになってるぞサンタ!!超ウケル!!!」
壱春の着替えた姿を見て大爆笑する柚先生は、笑い泣きする程面白がり、壱春はその柚先生の様子を見て安心した様に苦笑いを浮かべていた。
壱春が着れるはずの無いパーカーを無理矢理着たのは、それは壱春なりの柚先生を元気付ける方法だった…。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。