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  春風 作者:給湯器
体育祭に向けて 第9話


『なんか最近ムシャクシャするんだよなー…。』

いつもの様にランニングウェアに身を包み、暗くなり始めた夜道を走り出す壱春。
夏も終わり徐々にだが、陽の落ちる時間も早くなっていた。
聞いていた音楽を止めてイヤホンをポケットへとしまうと、それと同時に小銭を取りだし自販機の前で立ち止まる。

「何買おうかな…。」
独り言を言った壱春の言葉に誰かが反応する。

「やっぱり走った後は、スポーツドリンクじゃないですか? 」


「そうなんだけど水かスポーツドリンクで迷ってんだよなー………って、うおっっ!!」


普通に会話してしまった壱春は、会話が終わってから自分が一人で走っていた事を思い出して慌てて後ろを振り返る。

「なんだ陸かー…。驚かすなよなー!」

「あはは!すいません壱春先輩。」


相変わらずのニコニコとした笑顔を向けている陸はサッカー部のジャージにハーフパンツと、いかにも部活帰りの格好で壱春の後ろに立っていた。
その陸にスポーツドリンクのペットボトルを自販機から取り出し手渡すと、自分は水のペットボトルを手に取る。

「あっどうもです!でも今日はどっちかと言うと…オレンジジュースの気分だったんですけどねー。」

「その反応…千秋かお前はっ!」

苦笑いを浮かべる壱春は、ペットボトルのキャップを開けながら近くの公園へと向かい歩き出し、陸も壱春の後に続いて公園の中へと入っていった。


…しばらくして夜の公園にボールの弾む音が響き始める。
意外と明るい公園の外灯の下で、初めて会った時の様に地面へとボールを落とさないようにパスを交換し合う壱春と陸。


「そういえば最近美波先輩が自分のクラスにやって来ましたよー。」

「…………何て言ってた? 」


「小雪姉さんと壱春先輩がどういう関係なのか、それと肉体関係的にはどこまで進んでるのかって事を言ってましたねー。」


「………。」


美波が陸の教室まで行った事を聞いて、ある程度は予想出来ていたが、あまりの予想通りな美波の言動に逆に驚いた壱春は、陸から返されたボールに反応出来ずに後ろにそらしてしまう。


『まったく…一体どうしたらあそこまで異常な行動が出来るのか不思議でしょうが無いな…。』


美波の行動にため息をつきながらそんな事を考え、転がるボールを追い掛けて公園の入り口を走って出る壱春に突っ込んでくる自動車。

「壱春先輩っ!!危ないっっ!!」

「プアァァァァァー…」


今まで聞いた事の無い陸の大声とクラクションの音と共に、壱春の視界は自動車の眩しいライトの光に包まれていた。




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