始業式第1話
「はぁぁぁー…」
洗面所の鏡の前で深いため息をつく『坊主頭』の壱春。
この短さにするのはサッカーしてた中学生の頃以来だな…と、爽やかになった自分の頭を触りながら思う。
それにしても…
「あのアホ千秋!」
あの後…
「ごめん! ごめんなさい! …許してハルちぁゃん!」
「…世の中には…家族でも…恋人でも…夫婦でも許せない事ってあるよな?」
鏡を見ながら小声で呟く壱春に
千秋はうなづきながら少しトーンの落ちた声で
「でも…私とハルちゃんは仲良しの幼馴染みでしょ? 小、中、高ずっと一緒だし…それに…」
「…」
「それに…何だよ千秋? 何も言う事ないなら俺は帰るからな!」
壱春は鏡の置いてある位置から反対側の少し大きめの窓へと向かい、二メートル先の自分の部屋へ跳び移るために窓枠に足をかけた。
「ちょっと待って!……それにそれにそれに… かっ 帰るならお金払って!」
「はぁ? なんの?」
千秋は左手を壱春の顔の前に出し
「か…鏡の使用料と髪の毛のカット代と…その他諸々込みで1万6千円!」
「…バカ尻…」
声を出さず口だけ動かして壱春は窓枠にかけていた足を踏み込みジャンプッ―――…
出来なかった…。
運動神経ダケは抜群の壱春が、たった二メートルも跳べなかった…。
そのまま2階から1階の庭に着地。
靴も何も履いてない事での足の裏の痛みとシビレを我慢し、
『背中を押した』千秋を睨む。
「私は『バカ尻』じゃない! 『サワジリ』だもん! 『サンタちゃん』のアホー!マヌケー!ヘンタイー!…」
勢いよく窓とカーテンを、子供のようにアカンベーしながら閉める千秋を見て…
「俺の名字は『サンタ』じゃなくて『ミタ』だ…」
壱春は呟きながら、声に出してないのに『バカ尻』と言った事に気付いた千秋を
見て少し笑った。
正確には閉められたカーテンの向こう側にいる千秋を想像してだが…
そして壱春は痺れた左足をさすりながら、家の玄関へ向かった。
やっぱりフッと思う事は
やっぱり俺は
アイツの事
いつか『ブッ飛ばす! 』
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