最後の一日 第2話
「いってぇーなぁーっ!!何すんだよっ?!」
千秋に蹴られた背中を擦りながら、壱春は千秋を睨み付ける。
その千秋は蹴られた壱春よりも自分へと返ってきた痛みが大きかったのか、右足を押さえながらカーペットの上を右へ左へと転がり、必死に痛みに耐えていた。
「………岩。…岩だよハルちゃんの背中……。」
「そうかそんなに痛いか千秋? なら許してやる。」
自分よりも重症な千秋の姿に気を良くした壱春は、千秋の顔をニヤニヤと笑いながら見ていた…。
「…それじゃぁハルちゃんは私の宿題を写しに来たってわけなんだ? 」
「そう言う事だなー。」
痛い足を擦りながら、テーブルを挟み壱春の向かい側に座る千秋は、白紙に近い状態の壱春の宿題をペラペラと捲った後顔をあげる。
「でもさー、年頃の女の子の部屋に侵入するのはダメだと思うよ?!」
「わかったって!すまんすまん。」
千秋がいくら冷たい目で壱春を睨んでも、特に気にした様子は無く、いまだにテーブルだけに視線を落としている壱春。
真剣な表情で宿題を書き写していく壱春を只じっと見詰めている千秋。
しばらくしてその視線にやっと気づいた壱春が手を止めて鉛筆を置くと、ボーッと自分を見てくる千秋に話しかけた。
「どうした千秋?!」
「いや別に……ハルちゃんも髪伸びたんだなーっと思ってさー。」
千秋の言葉に笑みを浮かべて自分の髪を触りながら笑い、口を開く壱春。
「そりゃー5ヶ月位経つからなー…お前が俺の前髪をバッサリとやっちゃってから。 あれ? 千秋はあの時謝ったかー?!」
肩眉を上げて質問してくる壱春に対して、ムキになり始めた千秋。
「…わ、忘れたもんっそんな昔の話っ!!ていうかハルちゃんしつこいよーっ!? 」
「あはは!残念ながら、俺はねちっこい性格してんだよねー。」
「知ってますー!!それに…超がつく程の変態だしっ!」
「…変態言うのやめなさい。」
他愛ない話で盛り上がり始めたのかどうかは分からないが、賑やかな千秋の部屋に飛び込んで来たのは、隣の部屋から久し振りに壱春の声が聞こえて興奮気味の美波。
その美波は扉を壊してしまいそうな程の勢いで千秋の部屋に入ってきたかと思うと、勢いをそのままに壱春へと飛び付く。
「春坊ぉーーーっ!!」
「ぐふっ!!」
美波の頭が壱春の胸へとめり込み、壱春はしばしの間意識を飛ばすが、そんな事などお構い無しに美波は壱春の胸に頬擦りしつづける。
「あぁー…春坊の匂い。…やっぱり落ち着くぅー。」
「………本物の変態だね。お姉ちゃんわ…。」
恍惚の表情で呟く姉の姿を見て溜め息しか出ない妹の千秋だった。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。