晩御飯第1話
始業式から2日後…の3限目…。
席替えも終わり、『特等席』…つまり真ん中の列の一番前をゲットした壱春。
壱春の席が決まった時…
「あははっ!サンタはクジ運ないなー。 」
と、大爆笑していた柚先生は、教卓に突っ伏し寝ている…。
そのおかげで残り20分『自習』になった。
他の生徒は、近くの席の友達同士で話したりしている様だが、
壱春の後ろの席の健太は寝てるし
左側の席の女子生徒は喋った事もなく、教科書を広げ黙々と『自習』をしている。
そして、右側の席の女子生徒は、柚先生と同じ様に机に突っ伏しながら、さっきから……
「エヘヘ…。」
と、声に出してニヤニヤ笑っている。
「なにニヤニヤしてんだよ千秋。本当に頭がおかしくなったのか? 」
『ガタンッ』
と椅子を鳴らし、背筋を伸ばして、
「べっ…別に『ニヤニヤ』なんてしてないもん! 」
「………あら、そうですか…。」
千秋にそう言うと窓の外を眺める壱春。
「…」
「……。」
「ねぇ…ハルちゃん…。」
「んー? 」
窓の外の青空を観ながら、声だけを千秋に返す。
「最近ゲームしに来ないね…。 何かあったの? 」
「あー…別に何かあったって訳じゃなくて、俺の母さん今年から夜間の『専門学校』通い始めたろ? だから家の事…色々大変なんですよ………。」
『ガクッ』と肩を落とし、落ち込むフリをして、『ニカッ』っと笑いながら腕を頭の後ろで組む。
「…まぁ、ほとんどの事は父さんがやってくれてるけど…自分の身の回りの事ぐらいはやらなきゃね。」
そう言う壱春の指には、絆創膏が2枚貼られていた。
「ハルちゃんが…料理してるの? 」
千秋の問いに、後ろで組んでいた腕をほどき、
「あぁ…これね! 昨日チャレンジしてみたら…大惨事! 料理禁止令がでたよ! 」
喋りながら千秋に見せる壱春の手には、絆創膏を貼っていた二つとは別に、小さな傷が沢山ついていた。
「俺には料理の才能が、少しも無いらしいから…今日から冷凍食品の毎日だなー。」
苦笑いしながら、また窓の外を観始める壱春。
「じゃぁ…ウチに晩ご飯食べにくればぁ? 」
千秋の誘いに、少し考え…
「父さんもそうだけど…母さんに『専門学校』のせいで、千秋ん家に迷惑かけたってバレたら……『面倒臭い事』になりそうだから、やめとくわ! 」
右手をヒラヒラさせる壱春に千秋は…
「そっか…残念だね…。今日はすき焼きだったのに……。」
ニコニコと笑顔を向ける。
『ヒラヒラ』させてた右手に『携帯』を持ちメールを打ち始める壱春…。
…そして、3限目が終わったと同時に、壱春は千秋の目の前に携帯を突きだし、
自分の母親からの『オーケーです!』と書かれたメールを見せる。
そして放課後まで…、『すき焼き』の事を考えソワソワする壱春と、
『ハルちゃんと食べる晩御飯』を想像し、『エヘヘ』と笑う千秋がいた。
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