始業式 放課後第8話
…。
無言でしかめっ面のまま、壱春は少年を…少年はかわらずニコニコと、笑顔のまま壱春を見ている…。
しばらくして…
『フッ』と壱春の強張っていた肩の力が抜け、苦笑いしながら一歩前に歩き出し…
「お前名前わっ…!!」
真横から凄い力でタックルをくらい、壱春は人工芝に倒れ込む。
「……ってぇな千秋!何すん…だ…。」
お腹の当たりでモソモソと動き、涙目で壱春を見つめ…
「喧嘩しちゃ…ダメだよハルちゃん……。」
「…。」
オデコを壱春の胸にあて、涙目を見せないようにする千秋の頭に、無言で手を置く壱春…。
そして千秋を抱き着かせたまま状態を起こし、立ち上がる。
壱春が立ち上がると同時に、千秋は身体から離れ、壱春と少年の間に立ち『ファイティングポーズ』をとる。
そんな『お馬鹿な幼馴染み』の頭を、壱春は左手で抑えながら、少年に名前を聞く。
「お前…名前は? 」
「宮崎陸『みやざきりく』です。壱春先輩。」
相変わらずの笑顔を向けて笑う『宮崎陸』……
『えっ!?宮崎って!? 』
小雪と美波が、少し遅れてやってきて、陸に気付く。
「あれぇ!? 誰かと思ったら陸くんじゃん! おっきくなったねぇー。」
「こんにちわ。お久しぶりです美波さん。」
笑顔を向けて挨拶すると、小雪の方を見て
「小雪姉さんは何してるんですか?」
『ヤッパリ!! 』
小雪の言っていた…今年入学してくる弟というのは、やはり少年の事だった…。
「何してるか聞きたいのは私の方です。入学式は明後日でしょ? まだ生徒でもないのに学園に入って……。」
小雪から笑顔が消え、怒ってはいないが、少しキツい調子の声で、陸に質問していた。
「ランニングの途中に、サッカー部の練習を見学していたら誘っていただいたんですよ。 凄い頭の人に。」
あぁ…『アフロ頭』のヒロか…。
「そうですか。でももうすぐ稽古の時間ですよ? 」
小雪が校舎の時計を指差す。
陸は少しだけ慌てた様子で、
「お先に失礼します」
と頭を下げ、校門に向かって軽く走り出した。
だが、転がっていたボールを見つけ立ち止まり、壱春に声をかける。
「……自分の憧れの選手は、昔も今も変わらずに、壱春先輩です! 」
そう言い、陸はボールを壱春に向かって大きく蹴り出した。
それを、壱春は『左足』で綺麗に止める。
「またな…!」
その壱春の返事に、陸はもう一度頭を下げ、校門を出ていった…。
小雪はもう一度時計を見て
「それでは、私もそろそろ帰りますので。美波さん、千秋さん、壱春さん…でわまた明日…。」
深く頭を下げた後、『ニコッ』と微笑み帰って行く…。
小雪の姿が見えなくなって、千秋が壱春に聞いた…。
「ハルちゃん…サッカー……始めるの? 」
壱春は『左足』にあるボールを見ながら…
「まだ………まだやらねぇ…。」
そう呟き、美波の持って来てくれた制服の上着と、鞄を貰い歩きだす。
…帰り道、少し重い雰囲気が漂うなか、美波が喋る。
「春坊がサッカー始めたら私は…サッカー選手のお嫁さんかぁー。」
その美波の『妄想』に食いつく千秋。
「おっ…お姉ちゃんは関係ないでしょ!?」
口論を始める2人をおいていく壱春。
「ちょっと春坊!待ちなさいよー! 」
「ハルちゃん待ってー!」
そして千秋と美波が追いついたとき…
壱春が姉妹に向けた表情は…自然と笑顔になっていた。
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