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  春風 作者:給湯器
それぞれの夏休み 第5話


「それじゃ私は帰るからなー。じゃぁな沢尻姉妹っ!サンタは疲れててもちゃんと学校に来いよー!? 」


「分かってますって。……あっ!…柚先生っ!!」


「んー?!」


壱春の声で歩きを止めた柚先生はゆっくりと振り返る。


「今日は本当…どーもですっ!」


「はははっ。んじゃまた明日なっ!」


壱春の言葉に笑みを浮かべ走って行く柚先生の背中が見えなくなると、黙っていた美波がいよいよ行動を開始する。


「柚先生とのラブラブなお話は終了したみたいだねぇぇぇぇーっ…春坊ぉ!? 」


「ラブラブってそんなんじゃ…………っ!!? 」


美波の身体から盛大に発せられるドス黒いオーラは、夜の闇を更に真っ暗な深い闇へと変えていく。

その闇をまとった美波は一歩ずつ確実に壱春に近づいて来るが、その壱春は逃げる事は勿論の事、視線を外す事さえ出来ずにいた。


「柚先生も春坊も言ってた色々ってぇー……なぁーんだろぉーなぁー?? 」


「えっと…それは…その………。」


美波の冷たい笑顔と裏腹の優しい言葉に、悪い事など何もしていないはずなのに口ごもる壱春。

『蛇に睨まれた蛙』

そんな光景など今迄見た事は無いが、それを見た事が有る人がいれば美波は勿論大蛇で、壱春はオタマジャクシから手足が生え出したギリギリ蛙みたいなもんだと言うに違いない。


「何か本当にとてつもない勘違いしてますって美波先輩っ!…なぁっ!? 千秋ならわかるだろっ?!」


「……さぁー?…バカで鈍感で巨乳好きで女たらしでゲーム好きでA型でそろそろ誕生日のハルちゃんの事は何も分かりません。」


慌てて千秋に助けを求める壱春を見る事無く、ソファーに座り直しテレビを見続けている千秋は、美波と同じ様に黒いオーラを出していた。

しかしその千秋も、次に発した美波の言動によって壱春以上に慌てだす事になる。


「もしかしてぇっっ!? 担任の美人教師に誘惑された補修の生徒はラブホテルで大人の補修授業をっっ…」


「お姉ちゃんっ!!……夏休みだからって昼ドラの見過ぎだよっ!!」


妄想がとてつもない方向へ進み出した美波の口を、必死に押さえる千秋。

しばらくしてやっと我に返った美波が、落ち着いた様子で喋り出した。



「ごめんごめぇーんっ!…ちょっとだけイケない方向にぃ……。でも100パーセント春坊ぉを信じた訳じゃないんだからねぇー!!…だから……だからここは1つ、私の部屋で身も心も裸になってぇー、お互いの気持ちを素直に感じ合うのはどうかなぁー??…肌と肌の触れ合いでっ!?」


「「…………。」」


壱春は開いた口が塞がらずにそのまま硬直してしまい、
千秋は自分の姉の、色んな意味で恐ろしい所を目の当たりにすると、小さな声で呟いていた。


「お姉ちゃんは……もう昼ドラ…禁止だから。変人が2人か……。」


「こらこら千秋!そこで俺を見るなっての俺をっ!!」


頬を染めて身体をくねらせ照れている美波と、
深い溜め息をついて壱春と美波を見る千秋、
そしてその2人の様子に疲れた様子で顔をひきつらせている壱春。




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