期末試験 第5話
次の日、昨日の自分の失敗に落ち込みながら靴を履き替える美波。
下駄箱に入っているラブレターを鞄にしまうと、溜め息をつきながら階段へと向かった美波の背中を壱春がパシッと叩く。
「朝から元気無いっすね?!美波先輩っ!」
「…春坊は朝から元気だねぇー?」
「まぁ昨日美波先輩に懐かしい物もらって…やる気出ましたからねー!また夏祭りでもいきましょーよ!」
満面の笑みで階段を駆け上がって行く壱春を、叩かれた背中を擦りながら見詰める事3秒、そして階段の前で立ち尽くす事2分。
そんな美波に後からやって来た千秋が話し掛ける。
「お姉ちゃん何してるの?……ってどうしたの?!何で…泣いてるわけ…? 」
「……なんだかぁ…とても嬉しくてぇ…。って千秋ぃ!? いつからそこにいるのよぉーー?!」
「いつからって…今だけど? 」
美波の訳の分からない言動に表情をしかめる千秋だが、続けて心配そうに口を開く。
「それで…何かあったの…? 泣いちゃう程の事って…。」
「えっ??…………エヘヘェー。千秋には秘密だよぉー。…フフッ。」
幸せそうな笑顔を浮かべた美波は、心配してくれていた千秋を置いて鼻唄を歌いながら階段を上って行く。
「……。」
そんな美波を無言で見詰めながら、千秋も教室へと向かった。
「ハルちゃーん。今日の朝、お姉ちゃんに何かしたー? 」
「んー? 質問の意味がいまいち分からんぞ千秋。まぁ挨拶はしたけどなー。何かあったのか? 」
「…いや、別に。」
早く学校に来て教科書を広げている壱春に、今さっきの美波の事を質問するが、壱春は顔を上げる事無く左手でペンを回しながら答える。
壱春のその態度に少しムッとする千秋だが、素直に自分の席に着くと壱春と同じ様に教科書を広げ始める。
「おっ!なんだなんだー!? 千秋も俺と一緒で試験勉強かー?? 」
千秋のその様子を見てニタニタと笑う壱春を横目で見て、千秋は鼻で笑う。
「…フッ。ハルちゃんのは悪あがきだけど、私は授業の予習ですからー!」
そう言って今日の1限目にやる教科書を勝ち誇る様な表情で指差す千秋。
その態度に…千秋に向けていた視線を自分の机の上へと向け直して、壱春も鼻で笑いながら呟いた。
「…フッ。そりゃ失礼しました…貧乳さん。」
「………っ!!」
「……イッテェェェェーーッッ!!」
2ーDの教室を中心に広がる壱春の叫び声。
机に突っ伏して右手を押さえる壱春に千秋が優しく話し掛ける。
「せっかくだから、左手も折っちゃって試験受けれなくなっちゃおうかハルちゃん? そしたら夏休み中大好きなお勉強たくさん出来るよー? ねぇハルちゃん? 」
「……俺が悪かったです……。巨乳千秋…。」
「…フンっ!!!」
余計な事を言った壱春は千秋に英語の辞書で脳天を殴られ机に寝そべる。
「おっ!早いなーイチハル!?…って沢尻さん…こいつ眠たくなる程早く来て勉強してたの? 」
教科書を広げたまま机に横たわる壱春を見て健太が千秋に訪ねる。
「わっかんなーーい。」
千秋は健太に笑顔で答えると予習の続きを黙々と始めていた。
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