始業式 放課後第4話
…
「春坊ゲットォォーッ! 」
『沢尻美波』…千秋の姉は朝と同じように、壱春の胸に、勢いよく頬を押し付けてくる。
余りの勢いに、壱春は自然と半歩後ろに下がった。
「今日は急に走っていなくなっちゃうんだもんなぁー…。」
美波の『潤んだ瞳』を直視出来ずに、壱春は答える…。
「何というか…その…本能的に…。」
「そっかぁー…。でもまぁ、急にあんな事したら誰だってビックリするもんねぇー!? 春坊に浮いた話も、『好きな人』が居るって話も聞かないから…まぁだ、焦らなくても平気だよねぇ? 」
…。
……。
…何故か言葉が出てこない…。
壱春の『間』をスグに理解した美波は、後ろに居る千秋へと向き直し、さっきまでの『ユルイ表情』から一変…眉間にシワを寄せ、千秋を問い詰める。
「千秋! あんた何か…知ってるでしょ!? 」
「…別に知らないし…興味ないもん…。」
その言葉と同時に、千秋は美波でわなく…壱春の方を睨む。
その千秋の行動で、全てを察したのか…美波もまた、無言で壱春を睨む。
その目は偽りの『潤んだ瞳』でわなく、確かに涙を含んでいた…それは『何も知らなかった自分』に対する、美波自身の悔しさの涙だったのかもしれない。
無言で壱春を睨む千秋と美波…。威圧的なその目に…無言で後ずさる壱春…。
「別に…『その人』を好きって訳じゃなくてだな……ただ…憧れてるだけだぞ!? 」
千秋はともかく、美波はそんな言葉では納得する様子もなく、『その人』の確信にせまろうとする。
「何年の誰なの? 」
美波は一歩ずつ、壱春との距離をつめ
「3年の……」
壱春は逆に一歩ずつ後退し、距離をとる…。
「3年の!? 」
美波が目の前まで距離をつめてきた事により、勢いに押され…壱春は『その人』の名前を言う…。
「み…みや……宮崎小雪…先輩です…。」
宮崎小雪………その名前を聞いた時の、千秋の『やっぱり』と言う表情が、やはり本当の事だと美波に伝えた…。
美波は腕を組み、右手を唇へと軽くあて…考え始めた…。
「よりによって…雪ちゃんか……。」
壱春にも、千秋にも聞こえない声で、美波は呟いていた…。
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