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学園序列最底辺の出戻り少年は、サクッと学園最強になられるようです 作者:こしひかり

帰還

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VS狩夜(1)




 「――で、どうなんだい? 上手く行きそうなのかい?」

 ソファに身を沈め、取り巻きの生徒の一人が持ってきた高級菓子店のスイーツを堪能する狩夜が訊ねる。一連の大まかな案は狩夜が立てたものだが、それを実行したのは全て取り巻きの生徒たち一同であった。

 「は、はい。今のところ全て予定通りに進んでいるようでして、ついさっき川島と別れて一人になったとの報告が少し前に入ってます」

 「ウンウン。良いね良いねぇ」

 取り巻きの生徒の報告に狩夜は唇を弧の形に描かせると、芸術的なまでに作られた優美なケーキをフォークでグチャリと潰した。



 星眼の異能眼(カラーズ)保持者(ホルダー)の生徒により、放課後にランク判定試験を控えている事を知らぬ所で(つまび)らかとされてしまったいろは。

 そんないろはに対し狩夜が取った手段は妨害――正確にはランク判定試験を受けさせない為の阻害行動――であった。

 自分がいろは(落第者)に劣るとは微塵も思ってはいない。死に物狂いでAランクの地位を維持し続ける為に努力している自分が、六年もの間引き篭もり生活を送っていた怠惰な人間に劣る理由がないのだから。


 だが、だからといって自分が直接手を下さなければいけないといった道理はない――雑魚は雑魚同士で潰し合えばいいのだ。

 (あの女子生徒のスマホを使って出した指示通り、ちゃんと一人になったようだしねぇ。あとはこのまま何所かで時間を潰させればミッションコンプリートだね)

 一部の狂いもなく進む計画に、思わずクヒッ、と笑い声が漏れた。

 それが自分の思い描いた未来の景色を想像してのものなのか、はたまた――――本人さえも自覚はしていないが、得体の知れない(、、、、、、、)者との直接対決(、、、、、、、)を避けられた(、、、、、、)ことに対する安堵からなのか。


 ――だが、その答えに価値など無い。
 次の瞬間にはその笑みは凍り付き、何もかもに裏切られる事となるのだから。



 ガラッ

 「よぉ。お邪魔します――あ、これ謙遜でも何でもないから」



 勢い良く開かれた扉の先。

 そこに、来る筈のない落第者の姿が在った。  




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 「知らなかったな。Aランクになるとこんな個室を持てるのか。俺がAランクだった時は貰えなかったんだけどなぁ」

 流石に教室ほどの広さはないが、それでも一般的な部室程度よりかはずっと広い狩夜のプライベートルームをいろははわざとらしく(、、、、、、)、興味深げに見渡した。

 「……何の用かな? 悪いけど今忙しくてね。また出直してもらえないかな」

 のらりくらりとした様子のいろはに、頬を引き攣らせつつも笑みと分かるそれを作り上げた狩夜がソファから立ち上がると退室を促した。ここに来たという事はつまりそういう事(、、、、、、、)だと考えられるが、だからといってそうだとと決めつけるにはまだ早い。ならば今は何も余計なことは喋らず、ただいろはを遠ざけるだけに留めたいと思った上での発言だった。

 そんな狩夜の内心を知ってか知らずか、いろはは眺めていた部屋の調度品等から狩夜へと向き直ると端的に告げた。




 「――透視系統の星眼」

 「っっ?!」

 今度こそ、笑みを作るのに失敗をした狩夜に、いろははニヤリと形の良い唇を歪ませると言葉を続けた。

 「お互い無駄な腹の探り合いは止めようぜ紫道。俺の知りたい事は一つ――灯の居場所だけだ」

 (やはり、バレていたか……)

 異能眼保持者の存在がこちらの手の内にある事を知っているという事は、芋づる的に今回の一件の全貌も把握していると考えるべきだろう。おそらく取り巻きの誰かから聞き出したのではないかと予想する狩夜であっだが、流石に分かるのはそこまでであった。




 「――――――ふぅ」

 一件の疑う余地もなく断定口調で話すいろはに、もはや誤魔化しは効かないと判断したのであろう。狩夜は溜息を一つ吐き出すと、開き直った様子を見せ再びソファへと身を委ねた。

 「灯は無事なんだろうな?」

 「うん? ああ、当然だろう? 暴行を加えるのは流石に庇い様もない程の犯罪行為だからね。誓って言うけど彼女には傷一つ付けていないよ。多分」

 「拉致監禁も充分に犯罪行為だけどな」

 「人聞きの悪い事を言わないでもらえるかい? ボクはただ取り巻きたちの前で“彼女とゆっくりお茶がしたい”と呟いただけだよ?」

 「……つまり、灯はお前の大勢の手下(取り巻き)脅されて(頼まれて)連れて行かれた訳か」 

 「アハ!? せいかぁぁああい!」

 ゲラゲラと笑いながらグチャグチャに潰れたケーキを味わう狩夜にいろはが眉を顰める。くちゃくちゃと口を開けながらケーキを食べる狩夜に生理的嫌悪感を憶える事にもだが、なにより追い詰めているにもかかわらずこの余裕は何なのか疑念が浮かんだからだ。

 だが自分が優位な立ち位置にいる事に変わりはない。いろはは微かに感じた予感を振り払うと狩夜に要求を突き付けた。

 「これ以上の問答は不要だな。紫道、十分やるからさっさと灯を連れて来い」

 「ムリ」

 間髪入れずに返された返答に、いろはが訝しげな表情を浮かべて眉間に皺を寄せた。正直条件を付けて灯を返すか、煮え切らない態度を貫くものばかりだと思っていたのだが、狩夜の答えはいろはの予想から大きく外れたものであった。

 そんないろはの態度に益々機嫌を良くすると、狩夜は自分の考えを滔々と語ってみせた。

 「無理っていうか知らないんだよねぇ。まあもし知っていたとして今彼女を返したら、キミはすぐ試験を受けに行くんだろう? ――それは困るんだよ。困るんだよねぇ。
 だってさ、もうキミも知っての通りそもそも今回のコレはそもそもキミに試験を受けさせない為のものなんだよ? せっかく朝から彼女をもてなしてるっていうのにさぁ、ここで彼女を返しちゃったら意味ないじゃん。ただの馬鹿じゃん。返す訳ないだろう?」 

 「……こっちはお前たちのやらかした事を全部知っているんだぜ。それを大人たちに伝えたって構わないんだぜ?」

 「うんいいよ? ボクも別に構わないよ? さあさあ、ドウゾドウゾ! 
 だってボクは“何もやってない”からね。ボクはただ、“こうなればいいなぁ”って独り言を呟いただけで、それを取り巻きたちが勝手に何かやっただけの話なんだよ――だからキミが教師たちに今回の一件を伝えたところで、どうなっても良い有象無象の低ランク(凡人)たちに処分が下るだけなんだよ?」

 首を傾げキョトンとした表情を浮かべてそう主張する狩夜の言動に、いろはは爪が食い込む程に掌を固く握りしめなければ内から湧き上がる激情を抑えられなかった。

 (こいつ……! 自分の取り巻きたちを蜥蜴の尻尾切りに使おうってのか!)

 狩夜と取り巻きの生徒たちの間にどんな利害関係があるのかは知らないし、こうして自分に試験を受けさせないように妨害してくることも、狩夜の言を信じるなら灯を拘束した事も許し難いことではある。

 だがそれは上の立場(狩夜)の指示によるもので、取り巻きの生徒たちはただそれに従っただけに過ぎない。特別棟で捕らえたあの男子生徒のように、やりたくなくても狩夜に睨まれたくないという一心で行動に移らざるを得なかった生徒だって少なからず居るはずなのだ。

 こうして真実が白日下へと曝された今、ならば狩夜はせめて取り巻きの生徒たちだけでもと減刑を求めなければいけない筈だ。


 だというのに、よりにもよってこの男は、わが身可愛さにそんな取り巻きたちを平然と切り捨てようというのだ。

 (それが上に立つ人間のすることかよ……!)

 嘗てのいろはの上司たちも、大を得る為に小を犠牲にする選択をする事があった。
 けれどその誰もが、いつだってその勘定の中に自分という存在を含めて取捨選択をしていた。両者の有り様は似ている様で、しかしその有り様は余りにも大きく乖離していた。


 ギリッ、抑え難い激情を奥歯と共に噛み締めるいろはの内心など知る由もない狩夜であったが――次の瞬間、天啓を得たとばかりに一つの案を提示した。

 「とは言え、ボクの取り巻きが行ったのは事実だ。
 けどだからといって、ボクにだけ旨味が無い目に合うのも可笑しな話だろう?

 だからさ――こんなのはどうかな?」

 さも素晴らしい考えだと、いろはや周囲の取り巻きの生徒たちに同意を求めるかのように大仰な素振りで両手を広げると、狩夜はそこで一度言葉を溜めてから続きを口にした。





 「たとえば、天才(ボク)凡人(キミ)とで“勝負”をするんだ。

 ――キミはキミ自身の身を賭けて、ボクはキミの友人の身を賭けて、さ?」


 結果の見えた結末のゲームほど退屈なものは無い。

 ならばそれを愉しむ為には、過程を面白く(、、、、、、)させる他ない(、、、、、、)


 新たな獲物を見付けた狩夜の瞳は、酷く嗜虐的な光を湛えていた。






 ようやく戦ってくれそう。書いた本人が言うのもなんだけど、物語が動かな過ぎだね。




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