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学園序列最底辺の出戻り少年は、サクッと学園最強になられるようです 作者:こしひかり

帰還

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行方











 親しい者に対しては若干辛辣で、見事な亜麻色の髪に均整の取れたプロポーション。


 “今風の、遊んでいそうな女の子”


 初めて彼女を見た者の大半が抱く第一印象がそれであった。


 だがそんなイメージも、彼女の人となりを少し知るだけで容易く覆されることとなる。
 “口撃(こうげき)”が痛いのは素直になれない彼女の性格の表れであり、明るい髪色は染めた訳ではなく地毛だ。


 ――それになにより、ランク(結果)が全てとされるこの学園に於いて極めて珍しいことに、彼女は大多数の教師や生徒たちとは違いランクだけで人への接し方を変えない生徒の一人であった。

 ランクはCランク(平凡)。その中でも成績も平均的。何か一つ秀でたものを持っているという訳でもなく、本当に成るべくしてCランクへと成った彼女。

 そんなごく一般的な生徒の一人に過ぎない彼女が、周囲に流されずに自分の考えを貫いて行動しているのだ。“ランクだけが全てではない、試験で測れない価値(何か)だって有るはずだ”と。
 それがどれだけの“強さ”を求められることなのか――正しく理解出来ている者は、果たしてどれだけ存在することか。





 彼女の担任教師である、葉月こおりも又、そんな彼女の“強さ”を正確に理解している者の一人であった。

 少し天邪鬼気質な点や口の悪さが気になるところではあるが、クラスメイトたちとの交友関係や授業態度、成績に問題は無く、ランクに囚われることなく年長者への礼儀を忘れない稀有な生徒の一人。


 彼女をそう評価するこおりだからこそ、違和感を憶えたのも早かった。

 (……出席していない?)

 一時間目の授業を終え職員室に戻り確認をするも、未だ彼女の家――藤咲家からは何の連絡も無いままであった。もしも欠席をするなら、藤咲家――少なくとも灯なら、必ず自分か学園に連絡する筈だとこおりは確信に近い予想を立てていた。

 (遅刻の可能性もあったから、HR(ホームルーム)が終わった後も連絡を入れなかったけど……)

 連絡をし忘れてるだけなのか。はたまた、連絡をするのも厳しいくらいに体調を崩しているのか。(いず)れにせよ、もう確認の電話を入れても構わないだろう。

 受話器を取り、灯の母親の連絡先を探し当てたこおりは架電確認を行った。自分の思い過ごしである事を願いながら。





 ――結果だけ言えば、思い過ごしどころか、それ以上の事態である事が発覚するのだが。







 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 「駄目だ。電源が切られてるのか繋がらない。この調子だと、LINEやメールも期待出来そうにないな」

 「藤咲がサボるなんてありえねぇ。絶対に何かに巻き込まれたに決まってる」

 スマホをジャケットの内ポケットに仕舞ういろはに、焦燥を隠せない様子の隼人が答える。昼食を取る間も惜しんだ二人は懸命に灯の行方を追うものの、その足取りは依然として影さえ見付けることすら出来ていなかった。

 「なぁいろは。なんで灯の親は警察に通報しないんだ?」

 「学園側から通報するのは止めるよう懇願されたらしい。事件(騒ぎ)にしたくないからだろうな。
 事実、灯の姿が最後に確認されてるのは下駄箱だ。何らかの事件に巻き込まれてるとしたら、まず学園の責任問題になる」

 「それでも自分の娘が誘拐とかされたかもしんないんだぜ。普通、学園に止められたとしても通報するもんじゃないか?」

 「もし通報したら灯を退学にするとやんわりと仄めかされたそうだ。この学園、設備が良いのに学費は安いだろう? 灯の家はお世辞にも裕福とはいえないからな。もし退学させられたとなると、灯の復学は絶望的なものになる」

 灯の行方が知れなくなってから約五時間。
 その(かん)灯からの連絡は勿論、そもそも居るかどうかすら分からない犯人からの連絡も無いのだ。そうなると今回の一件が事件かすらどうか定かではない為、リスクの事を考えると灯の両親としても思い切った行動が取れずにいるのが現状であった。

 「そんな理由があったのか……まぁそもそも、警察が事件として取り扱うかどうかも分かんねえしな」

 眉間に皺を寄せ警察が介入する可能性を諦めた隼人を横目で窺いつつも、いろはは決して優先順位を間違えはしない。それ以上追及することは見せずに次へと話を進めた。

 「さっきも言ったが、灯を朝下駄箱で見かけたって生徒が何人か居たのは隼人も聞いてたな。だから灯はこの学園内の何処かにいる可能性が非常に高い」

 「もしいなかったとしたらどうする?」

 「その時になったらまた考えよう。 ――部活棟の方は隼人に任せていいか? 俺よりも顔は広いだろうし。もし手伝ってくれるって奴がいたら協力してもらってくれ」

 「いろはは? 一緒に来ないのか?」

 「ああ。ここで二手に分かれよう。その方が効率が良いからな。俺はこの特別棟を片っ端から当たってみる。鍵が掛かってるようだがこの程度なら……問題無い」


 カチャッ――――――ガラッ


 「な?」

 「……、…………まあ。いいけどよ」

 手慣れた様子で簡単に解錠(ピッキング)を行ったいろはに、呆れやら感心やらをない混ぜにした微妙な表情を向ける隼人。色々聞きたい事が増えてしまったが、すぐさま今はそれどころではない事を思い返し口を噤んだ。

 「ならそっちは任せた! 部活棟の方が早く終わるだろうから確認し終わったらまた電話するぜ!」

 特別棟をいろはに一任すると、隼人はいろはの返事を待たずに走り出した。元々、あまり頭を使うのがあまり得意ではない隼人なので、兎に角身体を動かしていないと落ち着かないのであろう。

 そんな不器用ながらも真っ直ぐな性根の友人の背を、眩しいものでも見るかのような目で見送りながら、いろははまずは予定通りに(、、、、、、、)事が進んで何より(、、、、、、、、、)だと胸を撫で下ろした。



 ガラッ――

 解錠して開いた扉の先――無人の教室には机も椅子も置かれておらず、ただの一度も使われた形跡のない伽藍とした空間が広がっていた。千人以上もの生徒が籍を置く白鳳学園であるが、それでも尚、使用されていない教室が存在するというのだから驚きだ。

 教室内に人が隠れられそうなスペースは一切無い。である以上、ここに灯の姿が有る可能性は皆無であるのだが――いったい、何の用事があっていろははこの教室に足を踏み入れたというのか?

 ――その答えは他の誰でもない、いろはの口から告げられた。



 「見てた通り(、、、、、)一人になったぞ(、、、、、、、)。約束通り、灯の居場所を教えてもらうぜ」


 誰も居ない教室であるにもかかわらず、いろはは虚空の一点に視線を(、、、、、、、、、)固定したまま口を(、、、、、、、、)開いた(、、、、)。その口振りはまるで――この場に居る何者(、、、、、、、、)かを問い詰める(、、、、、、、)ような口振りであった。

 「おっと、逃さないぜ。何の為にお前をここに誘き寄せたと思ってるんだ?」

 そう告げ、自分たち(、、、、)が入って来た扉に立ち塞がるいろは。相変わらずの飄々とした態度ではあるが――気付ける者は気付けたことだろう。今のいろはの立ち振る舞いに、ほんの僅かでも付け入る隙が無いことを。

 「もう一度訊く。灯は何処だ」




 ――先に痺れを切らしたのは男子生徒であった。視線を(、、、)逸らさずに(、、、、、)見据えてくる(、、、、、、)いろはに、とうとう堪えきれなくなったのだ。



 「う――うわああぁぁぁぁ!!」

 いったい、いつから居たというのであろうか。今では完全にその姿を露にした男子生徒がいろはへと襲い掛かる。

何かしらの計算や後のことを考えた上での行動ではない。ただ単にここでやらなければ(、、、、、、)やられてしまう(、、、、、、、)といった本能的な恐怖心からの愚行であった。





 ――その代償は、自らの身を以て支払われることとなる。

 男子生徒から伸ばされた手を最低限の挙動だけで余裕を持って回避すると、今度は逆にいろはが手を伸ばすと男子生徒の首を掴んでみせた。

 「ぐぇっ!?」

 その勢いを持ったまま教室の壁へと背を強かに打ち付けられた男子生徒は肺に残っていた息を強制的に吐き出させられると、次いで掴まれた首に掛かる圧力に目を剥いた。

 (なんて握力だ!)

 細身の身体からでは信じられない程に込められた握力に男子生徒が呻き声を上げるが、そんな様子など一切気にした様子を見せないいろはは、なんとそのまま男子生徒を掲げ上げた(、、、、、、、、、、)

「ぐ、が……は……!」

 自分の首を掴み、軽々と自分を宙吊りに持ち上げるいろはの左手を剥がそうと必死の形相を浮かべ(もが)く男子生徒だが、掴まれた手の力が緩むことは微塵もなかった。

 「もう理解出来たか? それとも、まだ理解出来ないか? どちらにせよ、何度でも訊くまでだがな」

 当たり前だが、いろはに男子生徒を殺すつもりは欠片も無い。現状、この男子生徒だけが灯の行方へと繋がる唯一の手掛かりなのだから。

 ――だが別に、五体満足でいさせる必要性もない。口か利き手さえ無事ならどうとでもなる。

 下から自身の目を覗き込まれる男子生徒がその事実を朧気ながらも察するのと、いろはが口を開いたのは奇しくも全くの同時であった。

 「答えろ――灯は何処にいる?」






誤字脱字、大丈夫だよな……?(ハラハラ
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