「ねぇ、子どもの頃に思い描いてた夢ってなんだか覚えてる?」
「んー。どうだろうな」
「なにそれ」
「夢って、叶えるもんだ―なんて謳ってるやつ、たまにいるけどさ…」
「え?」
「それってちょっと違うよなぁ」
「はい?」
「ほら、なんていうの?現実があるだろ、それで夢があって………てまぁ、子どもに現実って言ってもわからないか…」
「えぇ?あたし、今のコウのがわかんないよ」
「あ、お前っていっつもそうな。最後まで説明聞かないでさぁ」
「だっていっつもコウが言うことわけわからないんだもん」
「お前が理解しようとしないからだろ?」
「そんなことないよ。あのとき―あたしが初めてケータイ買ったときもわけわかんないこと言ってさー」
「…いつの話だよ」
「高一の春!」
「あぁ、大した記憶力で」
「他にもあるよ?一緒に自由研究したときにさ、あたしの―…」
「もう、いいって。俺が悪かったよ。ほんとお前、記憶力いいのな…」
「でしょ? そんで、現実がなんなの?ちゃんと聞いてあげるから、話してよ」
「あー、うん。あのさ、今自分たちがいるのって、現実だろ?」
「うんうん」
「んでさ、夢があったとして、それが今、叶ってるとするじゃん?そうすると今が夢であり、現実でもある。だから、ああ、なんだこんなもんかって思うっていうね」
「ああ…」
「まぁ、確かにわかんねぇよな、こんなこと。俺だけっつうか…」
「わかるよ?」
「そう?」
「うん。それって、コウ自身のことでしょ?」
「んー。まぁな」
「やっぱり。どんな夢だったの?今は叶ったんだよね」
「それはまぁ、…いいだろ」
「ええー?そこ、秘密?」
「秘密だよ」
「いいじゃん、ここまで話したんだからさ?」
「やーだ」
「じゃあ、あたしも言う!」
「何を?」
「子どものころの夢!そしたら、なんであたしがコウの言ったことがわかるかも、たぶんわかるからさ」
「えー…」
「せーの、だよ?」
「えー…」
「いいの!行くよ?せーの…」
「ずっと、ハナといれますように」
「ずっと、コウといれますように」
「…言わないかと思った」
「俺だって」
「でも、これでわかったでしょ?」
「うん。なんていうかな、子どものころはさぁ、ハナと結婚して、子どもいて、ってすごい幸せな光景を思い描いてた」
「あたしもだよ。でも実際はこうやって、変わんない場所に散歩して、日が暮れたねーみたいなこと言って、なんでもないんだよね」
「だけどまぁ、それもそれで一緒にいるし、笑ってるから、」
「幸せ―でしょ?」
「まぁな」
「それに、結婚なんてまだまだこれからの話だよ」
「ほんと?」
「あはは、言っちゃった」
「…幸せ?」
「うん」 |