胸が苦しくなるくらいの恋愛をしたことがありますか?
ボクは文才があるわけでも、小説家になりたいわけでもない。
ただ、こんな気持ちになれたことを、いつまでも忘れずにいたかった。
これは小説ではなく、ボク自身の事実に基づく体験談です‥‥
『今日は金曜日か。』いつもの様に朝が来た。けだるい体を起こし、窓を開けてみる。今日は曇り。夏本番前の少しムンとした風が南国のそれにも似て心地良い。眼を閉じると、遥か遠くに波の音が聞こえてきそうだ。
『曇りも悪くない‥』そう思いながら、家を出た。いつも見る空も気分次第で全く違うものになる。一面雲に覆われたどんよりした空だって、今日は好きになれそうだ。こんな自分の気持ちの変化に気付いたのは、まだ最近の事だった‥‥
−優しい眼差しー
高校受験が終わり、志望校とは逆の高校に振り分けられたボクは、そこが昔女子高だったことに少し抵抗を感じていた。友人が逆にこっちに来たかったとぼやいていたのが、少しゼイタクにも思えた。確かに女子生徒の数を見ると、ウチの高校は圧倒的だ。2年生になる頃にはほとんどがカップルとなり、男子生徒はあぶれることはないとまで言われている。ついでに言うと、カップルになった男子生徒の半分は受験に失敗し、女子生徒は落ちる事なく、次々と【破局】を迎える、というウワサもある。
『とんでもないところに来てしまった。』正直初めはそう思っていた。それに、毎度の事だが、クラスに行っても自分の名前がない。女子の中に名前を探すと、案の定見つかった。紛らわしい名前なので、学校をかわる度にいつもコレだ。もう慣れっこなので、わざわざ指摘する気にもならない。
教室に入り、初めての出席をとったとき、やはりボクの名は間違った読み方で、女子の中に呼ばれた。ボクはいつもするように、思いきり男臭い声で返事をした。クラスのみんなが一斉に振り向いて笑う。コレがいつも通りの反応だ。でも今回は予想外のオマケがついた。後ろの『あはは‥っ』という声に振り向くと、両手で口を隠している長い髪の少女と目が合った。『ゴメン。』彼女はそう言いながら、固まっているボクの手から滑り落ちたボールペンを拾ってくれた。『ありがと‥‥』聞き取れない位の声になってしまったのが恥ずかしくて、その日は彼女を見る事が出来なかった。あの何とも言えない、大きな優しい瞳だけが、ボクの目に焼き付いていた。何であんな目で見れるのだろう‥‥多分見つめられた方は『自分に気が有る?』と誤解してしまいそうな罪な眼差しだった。一目惚れ!?そんなはずはない、ボクは一目惚れなんか信じない。そう思いながらも、どこかくすぐったいような気分だった。
家に帰るとすぐに自分の部屋に閉じこもった。それが不自然だったのか、食事の時に『可愛いコいた?』とおふくろから鋭いツッコミを受けた。なんて答えたかは覚えていない、慌てておかずを口に詰め込み、部屋に戻った。何となく、邪魔されたくなかった。その夜は布団に入っても、あの眼差しの残像でなかなか寝付けなかった。
−中学生時代−
中学1年の頃、ボクはとても背が低かった。色白で髪を伸ばしていたせいもあって、入学式の時、女子と間違えられた名前がそのままあだ名になった。上級生からラブレターをもらったり、通学の時、満員バスの中で女子高生の集団に囲まれたり、体育で女子が着替えるとき、一緒に教室に閉じ込められたり‥‥ほとんどペット扱いだったボクは、少し女嫌いだったと思う。そんな中でも恋はした。相手は中2の時同じクラスになった、色白でとてもおとなしいコだった。どんな声だったかあまり記憶がない。女の子たちの中でいつもただニコニコしているのが印象的だった。
ある日、彼女が風邪で休んだとき、3日分のノートをとって彼女の家に持っていった。ベルを鳴らすと、不思議そうな顔をして、母親が出てきた。ノートを差し出す。すると、全てを理解したかのように、『ちょっと待ってて。』と言い残し、家の中に消えた。付き合ってくれた親友の方を見てみると、彼も首をかしげていた。
数分が経ち、母親が手に袋をさげて戻ってきた。『ありがとね。』そう言って手渡された袋の中にはアイスクリームが入っていた。まるで小さな子供がおつかいのごほうびをもらうように‥‥実際、親友にもそう見えたらしい。帰り道、大爆笑されながら、心はかなり傷ついていた。
その後、彼女に抱いていた気持ちは、あの『カッコ悪いおつかい』により掻き消され、やがて、それほど言葉を交わす事なく彼女は遠くへ引っ越してしまった。
−2人だけの時間−
そんな過去はどうでもいい。今は普通に背も伸びて、少なくともこのクラスにボクの過去を知るものはいない。ゼロからのスタートだ‥‥そして相変わらずボクは優しい瞳の彼女が気になっている。
彼女とはあれから何回か言葉を交わした。やはり一目惚れは心の中で否定し続けていたが、話す度に彼女の不思議な魅力にはまっていった。彼女は自分の事をボクと言い、相手をキミと呼んだ。あまりキミと呼ばれた事のないボクは、少々よそよそしさを感じた。
ところでボクには、すぐに後に親友と呼べる友人Tができ、一日中一緒にいたため、よく周りから『金魚のフンみたい』とからかわれた。どちらがフンなのか聞いてみた事はないのだけれど‥‥彼はとてもひょうきんで、つまらないギャグを平気で連発するヤツだった。でもそんな雰囲気が気に入ったのか、彼女はボクたちのところによくに来てくれた。くだらないギャグにも『キャハハ‥』と笑う彼女に見とれている自分がいた。やがてそんなボクにもチャンスがやってきた。彼女は毎日誰よりも早く登校する事を知ったのだ。たまたま早く登校したとき、誰もいないだろう教室に彼女を見つけた。その日から早起きの生活が始まった。
静かな教室に2人きりの時間‥‥たった15分ほどだが、今まで体験したことのない、ドキドキした時間だった。こうして、ようやく彼女への恋心を素直に認めたのだった。初めは恥ずかしくて読書するふりをしていたボクも、彼女が『おはよ。』と声をかけてくれてからは、少しずつ話せるようになった。と、いっても、ボクはいつも聞き役だった。話し好きの彼女はいろんな事を話してくれた。一人っ子で男の子のように育てられ、父親とよくサッカーをしたとか‥‥女の子らしい彼女からは全く想像できない話も彼女への想いを掻き立てた。
−失恋?−
明るく可愛い彼女はほどなくクラスの人気者となり、学級委員に選ばれた。そして、男子の学級委員はハンサムでクールなKだった。彼はハンドボール部のエースで、すでにファンクラブまで存在した。男子にも女子にも人気がある、ホントにいいヤツだ。
そのうち、2人が親しげに話している姿を目にするようになり、ボクは次第に彼女を避けるようになっていった。傷つくのが恐かった。でも放課には彼女はやはりボクたちの所へやって来た。ボクはさりげなくトイレに行く振りをしたりして、その場を離れた。
毎日毎日ボクは彼女を避け続けた。いつのまにか信じられないほど強くなっていた彼女への想いの裏返しだった。さすがにコレは彼女にも変に思われたらしい。鈍感な親友Tも元気のないボクに気を使って、つまらないギャグを浴びせかけた。悪いがそれは余計に疲れた。
あるときTがいつものように『帰ろうぜー』とやって来た。一人になりたかったボクは、『先に行って。』とやり過ごした。今思うと、ホントに彼には悪かった。様子のおかしいボクを気づかって、いろいろ声をかけてくれたのに、それをことごとく裏切った。でもどうしようもなかった。コレが失恋というものなのか‥‥‥
放課後、ボクは一人、誰もいない教室で頬杖をついていた。薄暗い夕暮れ時の教室に野球部の金属バットの音がこだました。
最近こうしている事が多くなった。この環境はかなり落ち着く。心の痛みを洗い流してくれる気がした。目を閉じて、時折聞こえる金属音と掛け声を延々と聞いていた。
−至福の時−
しばらくして、人の気配に振り向き驚いた。そこには開いていた扉からこちらを覗き込んでいる彼女がいた。扉越しに彼女がボクに話しかけた。『キミ!そろそろ入ってもいい?』
『そろそろって、いつからいたの?』近づいてくる彼女を見上げながらボクは聞いた。
『ずっと前から。』そう言いながら、彼女は席に着いた。現実が把握できないまま戸惑っているボクに彼女はつづけた。『この頃早起きしないんだね。』
『だって、それは‥‥』ボクの言葉を彼女はさえぎった。『キライ?ボクのこと‥‥』
こんな時でも自分の事をボクって言うんだ‥‥そう思うと、少し笑えた。ふと彼女を見ると、あの優しい瞳が潤んでいた。
『???』この状況を理解するのには時間がかかった。しばらくの沈黙の後、ボクは覚悟を決めて彼女への想いを全部話した。初めて出会った時から今までの事全てを昔話を聞かせるように。
どうして口下手のボクが話せたのかよく解らない、とにかく素直に出てくるものをそのまま伝えた。そして最後に『好き。』と言って彼女を見た。その時彼女は泣いていた。立ち上がり、彼女を後ろからゆっくりと抱きしめた。実はちょっぴりもらい泣きしかけたのを見られたくなかった。強く抱きしめたいのを我慢して、壊れそうな華奢なからだをそっと包み込んだ。時々聞こえる金属音が心地良かった。生まれて一番幸せな時間だった。ずっとこのまま帰したくなかった。
やがて、ボクたちは夕暮れ時を一緒に過ごすようになった。毎日、膝の上の彼女を抱きしめながら、繰り返し鳴り響く金属音に耳を傾けた。思い出すと赤面しそうになる、2人だけの世界だった。
知らない間にクラスでもあちこちでカップルができていた。校門を出て、ターミナルまでの長い坂を手をつないで下り、地下鉄の改札で彼女を見送る。多くのカップルたちがそうするようにボクたちもそうした。幸せなひと時の後の別れは毎日とても辛かった。
こうして夢のような時は流れ、高2の春が来た。幸い彼女も親友Tも同じクラスになった。そして新たにS君というメンバーが加わった。ボクたち3人と彼女は放課になるとTのつまらないギャグに盛り上がった。彼女はボクと付き合っていたけれど、Tに対する態度は以前と何一つ変わらなかった。みんなでいる時の彼女は『ホントにこのコと付き合ってるのかな?』と考えてしまうくらい自然体だった。心配になったボクは二人きりになった時、『ボクの彼女でいいの?』と何度か確かめた。異性を感じさせない彼女とTの関係はとても自然で、ある意味うらやましかった。
高校生活は楽しかった。学園祭では和カフェをやることになり、女子は浴衣でウェイトレスをした。彼女の浴衣姿には完全に一目惚れだった。いつもいつも彼女の事ばかり考えていた。離れているときは心配のかたまりになった。
だんだん勉強が疎かになっていった。やがて、そのツケはまわってきた。高2の半ばまでは高校受験の貯金でそれほど困りはしなかった。しかし世の中そんなに甘くはない、高2の終わりには成績が少しずつ落ち始めた。その時はそんな事どうでも良かった。とにかく頭の中は彼女でいっぱいだった。こんな調子で高3の春を迎えたのだった。
−距離−
高3のクラスは理系と文系に別れた。彼女は文系、ボクは理系、当然離れ離れになった。理系は1クラスしかなかったので、親友のTやS君とは同じだった。変わらず彼女も毎放課遊びに来てくれた。これでは自分のクラスに友達ができないんじゃないかとちょっぴり心配もした。しかしクラスが変わっても変わらない生活がうれしかった。
でも一つだけ違ってきたことがあった。それは成績の事だった。親友Tとは同じ道を目指していて、勉学でも良きライバルだった。それが高3になって大きく差がついてしまったのだ。Tはとても心配してくれた。さすがにこれはマズイと感じ始めた。
ある日ボクは彼女にこう告げた。『少しの間、距離を置こう。』
今何とかしなければ、【破局】は免れない、そう考えての苦肉の策だった。勉学と恋愛の両立なんて器用なことは出来ない、それは自分が一番よく知っている。
彼女は悲しい表情をしながらも、うなづいてくれた。
全ては彼女と大学生活を送るため‥‥次の日から彼女は遊びに来なくなった。しばらくして、前に同じクラスだったYが、『僕に任せて。見ててあげるから‥‥』わざわざそう言いに来た。へんなヤツと思いながらも気にも止めなかった。『君を任されてる』とでも言ったのだろうか?Yが彼女と帰る姿を時々見かけた。
気にはしなかった。彼女を信じていたし、遅れを取り戻すためには時間がなかった。
この年の学園祭、彼女のクラスは映画を制作した。彼女はその映画のヒロインとなったのだが、登場人物は彼女一人、イメージビデオみたいな不思議な映画だった。おかげでスクリーンの中の彼女が遠く感じられた。
数ヶ月が経ち、ボクは教室で仲間と勉強をしていた。そこへ入って来たYから信じられない言葉を聞いた。『オレ、彼女の事好きになっちゃった‥‥』人を悪く言うのは嫌いだが、『なんてヤツ‥‥』と思ったとたん、『彼女がいいって言うなら、そうすれば‥‥』と、投げやりに言ってしまった。それを彼女にどう伝えたのかは解らない、その日から彼女はボクを避けるようになった。その後、Yと彼女を一緒に見かける事も無くなった。もうずいぶん彼女と話しをしていない、訳も解らず避けられるのはとても辛かった。とうとうボクは耐えられなくなり、何度か彼女に訳を聞きに行った。でも話しも聞いてもらえなかった。
−ターミナル−
それは彼女との最後の日となった。
ボクはどうしても訳が知りたかった。帰り道、ターミナルまで彼女を追いかけた。改札で彼女に言った。『そばにいたい、キライになったなら、キライと言って‥‥』なりふりなんか構わなかった。沢山の人達が2人の前を通り過ぎた。そして、彼女は何も言わずボクを人ごみに残して消えていった。彼女の悲しい目だけが記憶に焼き付いた。ここでようやくフラれたことを理解した。受験なんてどうでも良くなった。その後は勉強も手につかず、当然の如く受験は失敗に終わった。同じ大学に行くはずだった親友Tやエンジニアを目指したS君は、ひと足先に大学生となり、彼女ももちろん合格した。
彼女を忘れる事は出来るのか?それはたぶん嫌いになるしかなかった。憎んで憎んで忘れることにした。でも嫌いなところなんて、カケラもなかった。途方にくれ、しばらくは何も手につかなかった。彼女との楽しい思い出が傷にシミた。
−浪人生活−
ボクは地元の有名予備校に通うことにした。予備校の入試は合格したが、思ったほど嬉しくないものだ。救いだったのは、予備校のクラスにウチの高校の仲間が沢山いた事だった。『オマエもかー!』この情けない再会にこの時ばかりは盛り上がった。カップルになった男の半数‥‥なるほど、ジンクスは正確だった。同じ傷を負った仲間たちと過ごせた事で、気持ちは多少癒された。しかし、独りになるととても辛かった。こんな気持ちがなんでも無くなる日が本当に来るのだろうか?
気を紛らすために仲間たちと週1回バンドを組んだ。選曲はどうしても少し暗めになりがちだった。みんなそれぞれの想いにひたっているようだった。
からだを動かして発散しようと、スイミングクラブにも通った。水の中は一番集中できた。短い時間でも無になれた。何もかも忘れるためにがむしゃらに泳ぎ続けた。
しかし何と言っても、夜寝るときが一番キツかった。
『合格して彼女にフラれた訳を聞きに行く』
呪文を唱えるように毎晩自分にいい聞かせた。それは人生で一番つらい時間だった。でも、どんなに辛くても死にたいなんて思わなかった。死ぬ気になれば何でも出来る、生きたくても生きられない人もいる。よく聞くセリフだ。
ボクには身近にそれを教えてくれた人がいた‥‥幼なじみのSちゃん。
2才年上の彼に小さい頃よく遊んでもらった。彼は名門進学校の陸上部のキャプテンだった。数カ月前に骨肉腫で入院し、最近久々の再会をした。骨肉腫とは骨のガンだ。彼はその輝かしい成績を残した右足を切断しなければならなかった。そんな状況にもかかわらず、ボクとの再会を懐かしがり、心から喜んでくれた。2人でいろんな話しをした。彼はボクの知らないボクの事を教えてくれた。子供用自動車に乗ってドライブに出かけてしまうボクはいつも彼に連れ戻された。
昔のままの優しい人だった。反対に沢山のパワーをもらった。帰り際、彼の母から余命数カ月と聞いた。やりきれない思いで涙が出た。
『彼の分まで頑張って。』彼の母は言った。
その時、大きく背中を押された気がした。数カ月後、彼は本当にこの世を去った。『いつまでも甘えてちゃいけない。これは彼が最後にくれたアドバイスなんだ。』
彼女の事はまだ好きだったが、なんとなく忘れられる気がした。
こうして1年遅れで親友Tの後輩になることができた。
−大学生活−
合格して先ずしなければならないこと、それは彼女への気持ちの整理。
もう彼女は自分とは違う世界にいる人だ、未練があるなら会えないと思った。
よく考えてみた。その頃にはだいぶ冷静になれたが、完全にリセットは出来てはいなかった。
まだ自信がない‥‥彼女に会った途端、押さえていた気持ちが込み上げて来たら努力は水の泡だ。
『すぐに会いに行くのはよそう。』
新しい生活が始まった。なにもかもが新鮮だ。ボクは迷わず水泳部に入部した。練習はハードだったが、やはり水の中では悩まずに済んだ。
コンパにもよく誘われたがとても行く気にはなれなかった。
そんな折り、中学時代の親友から連絡があった。あの『カッコ悪いおつかい』に付き合ってくれた親友Hだった。
『ウインドサーフィンやらない?』
海に行きたい!直感的にそう思った。
オンボロのバンを手に入れ、最初は二人でボードを買った。それからというものは、時間があれば海へ出かけた。というより、海中心の生活になった。海辺のサーフショップに入り浸り、風が無くても一日中海にいた。
海風に吹かれ、波の音を聴いていると本当に癒された。試験勉強もこの最高の環境ですると驚くほどはかどった。ボク達はどんどんウインドサーフィンにはまっていった。海は全てを忘れさせてくれた。
ボクは親友Hと毎年沖縄の離島へ行くようになった。見た事もない碧い海、熱帯魚を追いかけるセイリングは病み付きになった。
大学に入って2年目の夏、もう迷わなかった。リセットはできた。どうしてもはっきりケジメをつけたかった。彼女にとっても昔話だ、きっと全て話してくれるはずだ。そして彼女に連絡した。
久しぶりの彼女の声は懐かしかった。ちゃんと会って話したかったので、長話しせずに会う約束だけ取り付けた。彼女は嫌がる事なくOKしてくれた。
電話を切ってから思った、『良かったぁ』彼女に対する恋愛感情は全くなかった。
−再会そして別れ−
ボクは彼女と再会した。久々の彼女は化粧もしていてとてもキレイだった。相変わらず聞き役のボクは彼女の近況報告をしばらく聞いた。ゼミの事、友達の事、楽しそうな話しに聞きいってしまった。
そして本題を切り出した。
いろんな事がわかった。
『距離を置く』というのがまさか口もきかない事だとは思わなかったこと。
『オレ、彼女の事好きになっちゃった‥‥』と言いに来たY。彼はボクが投げやりに返した言葉をそのまま彼女に伝えた。ボクと口を聞けなかった彼女は、『キライになった』と思い悩んだ。そして、その頃、ボクの成績が下がった事を彼女は(彼女の)母に注意され、別れるように言われていたのだった。
彼女にこれほど辛い思いをさせていたなんて。ボクは何度も謝った。
なにも彼女の事をわかっていなかった。自分の事しか考えていなかったのかもしれない。
一通り話してくれた後、彼女はこう付け加えた。
『キミが彼女をつくるまで彼氏をつくらないって決めてたの‥‥』
ボクは言葉が出なかった。ボクは彼女をキライになろうとしたのに‥‥
なんて言っていいのかわからず、『出来たよ、彼女‥‥』と言った。
彼女に初めてついたウソだった。どうしてこんなことを言ったのか‥‥もしかしたら、ムリに頼みこめばよりを戻せたかもしれない。でもそうしたいとは思わなかった。
人生初めての熱烈大恋愛‥‥気持ちの整理に2年を費やした、大切な宝物のような思い出。
当事者であるボクと彼女でもそれを変えることはできない気がした。
その後数年経ち、親友Tから彼女が結婚したと聞いた。
夏本番前の少しムンとした天気、昨日までの曇り空は晴れ、心の中には虹がかかっていた。
ending BGM : over the rainbow / naomi & goro
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