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第7話:休みの日

「お兄ちゃーん。早く早くぅ〜」


「分ぁかったから服引っ張るな」


 玄関の鍵を閉めている俺の後ろでは、綾乃と瑠奈が立っている。


 瑠奈はケータイをいじっているから恐らくはメールをしているのだろうが、綾乃は早く行きたいのだろう、俺の背中側の服をつまんで急かしている。伸びるっつーの。


 因みにどこに出掛けるかと言うと、近くにあるショッピング街だ。

 本当は瑠奈の機嫌を和らげるために行こうとしたのだが、綾乃に見つかって今に至る。


「竜兄、そろそろ行こっ」


「おぅよ」


 瑠奈はケータイをパタッと閉じてカバンの中にしまい、俺は反転して二人のほうを向く。


「それじゃ、しゅっぱ〜つ!」


 無邪気に片手を空へと向け、綾乃が音頭をとる。こういうのを見てると、家族の大切さが再確認できる。普段は小憎たらしい妹達でも、素晴らしいもんで。



「お兄ちゃん、なにニヤニヤしてるのかな?」


「さぁ…。ファンシーなところがあるからねぇ竜兄は」


「誰がファンシーだ」



 くそっ、せっかく良いことを言ったってのに台無しじゃないか。しかも俺はファンシー(空想)じゃない。


「とりあえず行くぞ」


 俺は二人から離れるよう小走りで動き出した。それに気付いた綾乃と瑠奈は慌てて追いかけてきた。


 歩くこと15分。靴屋やら古着屋やらゲーセンやらが立ち並ぶ街『クリスタルロード』に来た。


 なんでクリスタルロードって名前が付いたのか。それは天井の役割をしているものが透明で、空を見れる。そして夜になると、星や月の明かりが優しく降り注いでくれるのさ。うーん、ロマンチックだねぇ。


「ってあれ? 綾乃達が居ない…」


 解説が終わったので後ろを振り返ってみたのだが、見知らぬ人達ばかりで妹の姿は全く見えない。


「竜兄〜、こっちこっちー」


 すると古着屋のほうから瑠奈の声が。俺は古着屋のほうへ歩き出した。


「先に行くなよ。あやうく嬉しく……じゃない、悲しくて帰るとこだったじゃないか」


「あはは、ごめんね」


 瑠奈が軽いノリで返事をする。その手にはジーンズが一着。恐らくは買いたいやつなのだろう。


「欲しいやつか?」


「うん。ちょっと高いんだけどね」


「まぁちょっとくらい高くても良いが」


 そんなことを言って値札を見てみた。8万。


 ・・・。


 ちょっとどころじゃねぇぞ。バイト代が一気に無くなるじゃないか。


「却下」


「あぁん」


 ジーンズを元あった場所に戻してくるよう促した。瑠奈は可愛く口をとがらせて渋々と歩いていった。


 いきなりあんなの持ってくるか? なんてため息をつきながら古着屋の中を見渡す。15〜20歳あたりの人がかなりの人数で動いており、改めてこの店は優良だと思う。


「おにーちゃーん」


「おう、決まったのか?」


 横の方から綾乃が来たので、そちらを向く。


「一応ね〜」


「ふーん。見せて」


「良いよ♪ はいっ」


 そう言われて渡されたのは、カゴ二つ。しかも満杯。タイ付きシャツやらデニムのスカートやらが溢れんばかりに入っている。血ぃつながって無いのに思考がある意味似ているな……。


「2、3着にしなさい」



「むー。これでも厳選したのにぃ」


 綾乃は頬を膨らませて、元来た方へと帰っていった。まったく……。まだ1時間も経って無いのに疲れた。俺はあいにく服にあんまりこだわりは無いので、店をぶらつき始める。


 ぶらつき始めて約10分。今度はまともな値段のジーンズを持ってきた瑠奈と、3着を更に厳選した綾乃がやって来た。会計は2万5千円ほど。会計を済ませると丁度昼飯タイムなので、ファーストフード店を探す。


「ここらへんファーストフード店無いね。もう動けない……」


「お腹へったよ〜。テレビー」


・・・。


 腹がへったから動けない。それは分かる。だが腹がへったのとテレビはどうしても結びつかん。


 恐らくは腹が減りすぎて、平常心を保てなくなっているのだろうな。


「あっ、あっちにロッテ○アあるぞ」


「ほんとっ!?」

×2



 俺の言葉を聞くと、一気に元気になった綾乃と瑠奈は、その店へと向かって行った。微妙に高いんだよなぁロッテ○ア……。


 一人佇むわけにもいかないので、結局俺もその店へと入っていった。中に入って注文し、バーガーを受け取ると二階の席へ案内された。


 そして俺は綾乃と瑠奈と真正面の位置に座る。


「たまには皆で出掛けるのも面白いね♪」


「まったくだ」


「そういえば竜兄、あといくら位残ってるの?」


 瑠奈にそう言われて、HP(残金)が気になった俺は財布を開いて確認する。


 ・・・あれ?


 ・・・。


 最初の金は5万持って来たんだよ。服とか3人分買わなきゃいけないと思って貯金を降ろして。んで服は2万5千円、バーガーに系1500円ほど使ったのだから残金は2万3500円のはず。だが俺の財布には1万3500円しか無い。落としたのか?


「なぁ、1万円知らないか?」


 財布から綾乃たちのほうを向き直した。

 綾乃はジュースをストローで飲みながら頭にクエスチョンマークを浮かべている。なので瑠奈のほうを向くと、なんと偉大なる福沢諭吉さんの姿が。


「瑠奈、俺の財布から取ったのか?」


 手を伸ばして取ろうとすると、すんでのところで札を引かれて掴めなかった。


「これを返して欲しかったら、私の言うこと一つ聞いてね♪」


 小悪魔のような笑顔で語ってくる。ってそんなことはどうでも良い。要するに金をとるかプライドをとるかだろ? ならば答えは一つ。


「言うこと聞くから返して」


 金のためならプライドなんかいらん。俺は資本主義なんだぁ!


「……承諾するとは思わなかったよ」


「ん? なんか言ったか?」


「う、ううん。べっつに〜」


 瑠奈は一瞬慌てたがすぐにいつもの顔になって、俺に福沢諭吉さんを返してくれた。綾乃は今のやり取りが分からず、未だ頭にクエスチョンマークを出し続けている。


「なんの話なの? お兄ちゃん」


「大人の会話さ」


 半分ホントのことを、半分嘘を教えた。


 ま、地元とは言えここはファーストフード店。俺がプライドを捨てたことを聞いた客とはもう会わないから別に問題はないだろう。


 俺と瑠奈と綾乃はバーガーを食べおわり、外へ出た。

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