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第25話:アーケードで地の利は奴に

 受験面倒ヽ(`Д´)ノ

 ……や、いいたかっただけです。


 更新が遅れに遅れ、終わりはいつになるのやら…。

 へたれ作者ですが、飽きずに応援よろしくです(汗

 さて、地獄のような昨晩から一転し世間は平和に包まれている。

 広々とした青空には雲すらなく、潮風は浜辺にいるカップルたちを優しく撫でて歓迎する。


 そして俺は今小規模なアーケード街へと足を進めている。フロントの人に土産を買う場所があるかどうかを聞いたところ、ホテルからしばらく迂回したところにアーケード街が新設されたとのことだった。

 幸か不幸か、女性陣とは別行動をしていたので男水入らずでここまで来た。しかし、


「よう竜也、俺たちはこれから別行動をとらせてもらう」

「え、なんで?」

「ふっ、知れた事!」


 ピチピチのアロハシャツを着込んでいた兄貴が大声を張り上げる。


「夏と言えば海、海と言えば俺たち、俺たちと言えばナンパなのだっ!」


 ワハハハハ、と行き交う人々の迷惑も考えずに笑う兄貴。海斗がその背中を押しながら歩き始め、


「ま、そんなわけで。夕方には帰るから、じゃ」


 遥か前方にいるギャルっぽいお姉様方に突進していった。


「……ま、いいけど」


 個人的に動けるというメリットは嬉しい。そして何より、水入らずとは言っても問題児なあの二人とはあまり関わりたくないのだった。


 そういえば朝食を食っていなかった。ホテル内の食事で済まそうと思ったのだが、あの値段は反則だ。地域特有の食材を使っているという点は素晴らしいのだが、高校生な俺には手が出せなかった。

 外、海の家で食べようかと思っていたのだが朝飯のことをつい忘れ、アーケード街のほうに足が向いていたのは魔がさしたとしか言いようがない。

 そして今、目の前には庶民の味方ファーストフード店がオープンしている。海と山に囲まれた場所にある不自然さはあるが、気にしない。


「さて何を食いますか、ね……」


 店に入ろうとした足が止まる。石化したわけじゃないし、店に入れないわけでもない。直感が、いや俺の中で芽生えつつある未来予知がこう告げている。

 ここにいてはいけない、即刻逃げろと!

 未来予知は瑠奈たちに対してのみ発動するのだがその的中率は侮るなかれ。

 反転し誘惑の臭いから逃れようとした矢先、肩を後ろからむんずと捕まれた。痛い痛い、爪が肩に食い込んでる!


「どこ行く気ぃ? 竜兄」

「予感的中! って握力弱めろ握力、なんか骨がミシミシいってるんですけど!」


 微笑みながら謝り、手を離す瑠奈。俺の肩にはびっしりと爪の痕が残っている。あー、絆創膏欲しいかも。


「んで、なんか用か瑠奈。てか綾乃は?」


 因みに凛先輩は闇鍋で綾乃の食材に殺されてしまったのでホテルで寝込んでます。悪は滅びる。


―――――――

―――――

―――


「――ぅはぷしっ! あ〜、私の噂してる奴がいる。この感じ……竜ちゃんだな。帰ったら覚えてなさいよぉ!」


―――――――

―――――

―――


 ? なんか今謂われ無き悪寒を感じた。言うなれば理不尽の一言に尽きる。


「綾乃なら先輩の看病するって」

「まさか責任を感じたのか?」

「違うと思う。あの子自分の食材で先輩がああなったって知らないもの」


 ですよねー。

 もし綾乃がそれに気付いたらこちらとしては嬉しい限りなのだが、あからさまに落ち込むからなあいつ。慰めるにはとっても高いレアチーズケーキが必要なのだ。経済的制裁と肉体的制裁を両立させる恐ろしい技。


「ま、それはそれとして竜兄は暇? 見たところ一人だし」

「暇と言えば暇だね。ゆったり過ごそうかと」


 あっという間にその夢は潰えたがな。


「ふ〜ん。……ねぇ、お願いあるんだけどいい?」


 瑠奈にしては珍しい、真剣な面もちで尋ねてくる。

 普段ならば撤退を決め込むところだが、真剣なやつを邪険にするほど瑠奈たちには愛想がつきているわけでもない。


 真正面に見据え、こちらも気合いを入れて向かう。


「あぁ。どうやら真面目な話っぽいし」

「ありがと。――あのね、竜兄ってプライドというか誇りってある?」

「誇り? んー、人様に言えるような素晴らしいものはないけど、自分が納得出来るものならあるぞ」

「あ、やっぱりあるんだ」


 組んだ手をもじもじさせながら、遠くを見つめるような目つきで上を向く。それにつられ、俺も上を向く。

 アーチ型の透明なガラスを天井に構え、そのまた天にある空から太陽がジリジリとこちらを照らす。瑠奈は手で日陰を作りながら、


「あのね、私も竜兄と同じような誇りならあるの。初めて人に言うんだけど、笑わないで聞いてくれる?」

「あぁ、笑わないよ。その誇りに関連した悩みがあって、それが俺にも手伝えるようなことがあれば力になるよ」


 ぽんぽん、としおらしくなっている瑠奈の頭を撫でる。


 まぁなんだ、コイツも年頃なんだな。血は繋がってないし、いつもからかわれてばかりだが大事な妹なんだ。

 たまには兄貴らしいことをしてやりたい。


「あのね、私の誇りと悩みなのは、」

「なのは?」


 瑠奈は息を呑み、ぱっと顔を上げて言う。


「下着が気になって仕方ないの」


 ・・・・・。

 どうしろと?


「いやあのな瑠奈、俺は男だ」

「それがどうかした?」

「女ものの下着について語られても困る」


 せいぜい、見られても良いような下着があるくらいしか知らない。海斗あたりに聞けばもっと詳しいことを知ってそうな気もするが。


 と、ここで瑠奈が今まで見たことのない最上級な微笑みをしながら俺の言い分をスルー。


「でね、そこにあるランジェリーショップについて来てほしいの」


 にっこり笑って死刑宣告。

 女子高生が男子校生に言うセリフではない。ましてや妹が。


「嫌だ。断る。拒否!」


 首をぶんぶん振り回しながら抗議する。

 すると瑠奈はあからさまな落ち込みようで、


「さっき力になるって言ったのは嘘だったんだ……」


 わざとらしい涙を流すのだった。


「瑠奈、目薬見えてる」

「っ!?」


 ビクッ、と体を震わせた瑠奈は右手の隙間から見える目薬のフタをごそごそと隠す。遅えよ。


 そんな過去に使われたネタは俺には通用せん!


「とにかくだ、ランジェリーショップに行くなら綾乃か凛先輩に言ってくれ。俺じゃ力になれん」


 ごしごし、と涙を拭った瑠奈。


「えー、竜兄だって私の下着に興味あるくせにぃ!」

「ない! なにが悲しくて妹の下着になんぞ興味を持たねばならんのだ」

「だってこないだ瑠奈と私の下着を交互に見てたじゃない!」

「ンなワケあるかぁっ! 俺がいったいいつそんなこ……と、を……」


 失速する俺。

 そう、瑠奈のあまりにも真剣だった態度に騙されて忘れていたがここは腐ってもアーケード街なのだ。

 老若男女問わず行き交い、更にここはファーストフード店。中にいた客や店員は何事かとこちらを凝視している。

 背後のオバサンたちからは何か良からぬ評価が下されているし。


 ニヤリ、とヒールな笑みっぷりを見せつけてくる瑠奈。

 くっ、民の力を仲間にしやがったか。


「分かった、行こう。ただし中には入らん」

「それじゃ意味ないじゃない。中まで入って私に似合うものを探してくれないと」

「んなこと言ってもだな、あそこは男子にとってアウェイ以外の何物でもないからな」


 しばし考える瑠奈。今にも泣きそうな顔をしながら、


「竜兄だって私と瑠奈の両方に二股かけて、」

「分かった、行く! 行かせて下さい!」


 『両方に』らへんで瑠奈が何を言うか察知した俺は言葉を塞ぐように叫ぶ。

 ようやく瑠奈はいつもの瑠奈に戻り、うなだれる俺の腕に自分の腕を絡める。暑い。


「結局お前に振り回されっぱなしか……」

「ふふ、そこが良いところなんだから」


 ひそひそ話をしている人達を掻き分けながらランジェリーショップを目指す。

 ふと今思った。なんでこんなとこにランジェリーショップがあるんだろう。


 隣で幸せそうに鼻歌を歌っている瑠奈がこちらの耳元でぼそりと呟く。


「私今上の下着してないから♪」

「ぶっ……!」

「あはは、冗談よ冗談。竜兄面白いんだから」


 あぁ……願わくば神様。瑠奈の下着選び中は俺に災難を与えないで下さい。

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