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第20話:旅行計画発動

さてさて、前回の前書きで予言しました通り旅行編です。

 気づいたら、俺はバスの中にいた。他にも綾乃と瑠奈、凛先輩に兄貴、そして海斗もいる。

 綾乃と瑠奈と向き合えるようイスの背もたれに腹をくっつけながら凛先輩はトランプをしていて、兄貴と海斗は萌アニメ『キラリン』について熱く語っている。

 俺は頭の後ろを掻きながら、うんうん唸って次の一手を考えている綾乃に話しかけた。


「なぁ綾乃」

「うーん、ここはJでバックさせようかな、それとも8で流そうかな……」


 うん、完全に大富豪にハマって聞いてないね。


「一緒に考えてやるから答えてくれ」

「なになに!?」

「あ、ずる〜い!」

「ちょっと竜ちゃん、えこひいきはダメよ!」


 凛先輩と瑠奈は手をぶんぶん振り回して抗議しているが、そんなもん俺には関係ない。目をきらめかせる綾乃に尋ねる。


「このバスはどこに向かっている。そしてなぜ俺はここにいる」

「えーとね、私たちも起きたらここにいたの。だからわかんない☆」


 ☆、じゃない。んじゃもう一つの疑問を聞くか。


「俺の後頭部が割れるように痛いのだがなぜだ」

「あぁ、たぶん瑠奈姉がさっき膝蹴りしたからだと思う」


 膝!? 後頭部にやったら下手すりゃ、いや上手く当てても死ぬぞ。

 我が義妹ながらハードボイルドというかワイルドというか・・・。


「違あぁぁぁう! 明日香はツンデレだから人気No.1なんですよ!」

「ふっ、愚か者め! ドジっ娘ニナミちゃんを忘れてなにがNo.1か!」


 白熱も白熱。俺ら以外の乗客皆が嫌な顔をしながらこちらを白い目で見てくる。あぁ、これ以上評判を下げないで普通の生活を送らせて下さいな。あ、ちなみに敬語使ってんのが海斗ね。


 そんなこんなでバスが走ること一時間と半分。そろそろ車酔いしてきた俺をよそにどんどん白熱するアニメ会話とトランプ。 窓の隙間からは地平線まで穏やかな波が伝う海が見えてきた。反対側の窓にはそんなに高くはないが山がいくつか連なっている。ふむ、どうやらここが目的地らしいな。

 運転手の声が流れる。


『え〜、終点です。後ろに陣取ってアニメを語っている方は速やかに降りろやコラ』


 ・・・この運転手怖ぇ。

 この気持ち悪さから解放されたいがために俺は一番最初に降り立った。


「うお……すげぇなここ」

 潮風がこれでもかってくらい流れてきて、俺の肌をすくう。が、なぜか気持ち悪さは悪化し、近くのベンチにへたり込むように座った。


 目をつぶって上を向く。心頭滅却なんとやら。

 どすん、という重力を太ももに感じて俺は目を覚まし、凛先輩の唇と俺の唇がくっつくまであと数センチといったところだ。


「何やってんすか凛先輩! つーか瑠奈も変なとこに座るな!」

「ちぇー、もうすぐだったのに」


 何がもうすぐだ。俺の初キスはもうちょいまともな感じにしてくれ。

 そして今度は俺の膝に乗っかりながら抱きつく形で密着する瑠奈を引き剥がす。まったく、油断も隙もあったもんじゃない。


「竜兄ノリ悪いー。そこは『……良いんだな』って言いながら私をベンチに押し倒すところだよ」

「知るか」



 なんで俺が昼ドラみたいな展開をしなきゃならんのだ。あ、誰だサービス精神の足らん奴めって言ったの。


 今の騒動のおかげか、酔いは一気に取れた。立ち上がり、


「おい竜也」

「ん、なんだ」

「お前の分だ」


 ずい、と大きなボストンバッグを渡される。とりあえず受け取ってみたが、


「なんだこれは」

「着替えとかもろもろ。誰が計画したかは知らんがこの旅行は泊まりがけ、さらに四泊五日だ」

「四泊五日!? めちゃくちゃ遊べるじゃねぇか」


 幸いここには山も海もある。ちょっと歩けばパッと見高級そうなホテルがある。誰だか知らんがこの企画はサンキューなんだぜ。久々のナイス展開!


「では諸君、いざゆかん高級ホテルへ!」

「「おぉー!」」


 兄貴のかけ声が木霊し、俺たちの夏休みパラダイスが始まりを告げた。


 二十分くらい歩いただろうか、いつの間にか瑠奈のカバンを左手に、綾乃のカバンを右手に、自分のバッグを背中に、凛先輩のバッグを腹にかけている俺がいた。なにこれ、罰ゲーム?


 体感温度35℃の炎天下、なにやら意味深な含み笑いをしている女性陣を背後に俺と兄貴と海斗はホテルに向かう。


「にしても不思議だよなぁ」

「ん、お前が持ってる4つのカバンのことか?」


 それもある。


「いやな、どうやらお前らも理由すら知らずにここに来たんだろ? 迷惑じゃないが、なんか計画的な気がして」

「ふっ、これだから我が弟は低脳で困る」


 やれやれ、と言った顔つきで兄貴が肩をすくめた。なんだろうね、この腹の下から沸き起こる殺意は。


「んじゃ誰が計画したんだ?」

「知らん!」


 俺は両手に持っていたカバンを思いっきり振り回して兄貴をサンドイッチにした。

 兄貴はそのまま気を失い、焼き付けるような熱さの道路にバーベキューにされたことは言うまでもなく。


「お、入り口発見」


 海斗が指差すその先には、うん、あれはどうみたって裏口だね。


「バカやってねぇで行くぞ」


 兄貴を除く五人はホテルの内部へと入っていった。

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