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第17話:デッド・オア・アライブ

もうネタが尽き……いやいや! 執筆時間があまりなかったもので久しぶりの更新です。

待っていた読者の皆様(いるのか?)、すいませんでした〜(謝

 さて、兄貴が帰ってきてから俺は安楽という安楽を味わっていない。


 朝七時、気持ちよく寝ている我が家に『ドナドナ』が大音量でながれだした。やべぇ、すごく死にたくなる。

 俺は布団をはねのけて部屋から飛び出し、兄貴の部屋の前で扉を叩く。


「おい兄貴、朝っぱらからうるせぇっつの!」

「なにを言うかっ!」


 兄貴が扉をぶち壊さんかのようにフルスイングして開け放つ。俺はぶつかりそうになったがなんとか避け、真っ向からぶつかり合う。


「このドナドナは売られていく子牛に感情移入し、人間本来の喜怒哀楽の一部を取り戻させる素晴らしい作品ではないか」

「朝っぱらから鬱になるじゃねぇか!」


 俺はわざと加減して兄貴の顔面めがけて拳を動かした。

 それをフェイントだと知らない兄貴は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。あ、本気で殴りたいかも。


「見えるっ!」

「当たり前だ!」


 兄貴はわざわざ某名セリフをはいて俺の拳を避ける。が、俺には二重の策がある。


「今だ瑠奈!」

「おっけぇ!」


 廊下の角にある自分の部屋から今か今かとうずうずしていたであろう瑠奈を呼ぶ。実は昨日の夜、俺と瑠奈が兄貴を懲らしめるミッションを計画していたのだ。


 え、綾乃はどうしたって? 

 あぁ本当ならあいつもミッションの一角だったんだが、テーブルに顎乗っけて五分もしないうちに寝ちまったんだ。頬をつねろうが旋毛(つむじ)を突っつこうが、瑠奈がくすぐろうが胸のサイズを測ろうが全く起きなかった。

 全く、知らぬ間にあんな成長して……じゃない、あんなに爆睡してるとは思わなかった。


 出番が来た瑠奈は駆け出し、軽やかにジャンプする。片足を軸に横向に回転しながら突っ込む。

 てかミニスカでそんな高くジャンプして蹴ろうとすると下着が……今日は白か。意外と純情タイプだな。いや待て、俺は何を言っている!

 因みに俺がそんなことを考えていると瑠奈は格ゲーキャラのように突っ込んでいく。


「なに、伏兵か!」

「食らえぇっ、瑠奈特性『パニシュ・アタック!(消滅の攻撃)』」

「ぐへぁっ!」


 ・・・ネーミングセンスびみょ〜。


 しかし破壊力は凄まじいな。兄貴はゴキっていう音とともに首が凄いほうに曲がっている。見てるほうが痛いくらいだ。

 兄貴は泡を吹きながら仰向けに倒れ、瑠奈は着地と同時にブイサインを送ってきた。よくやった瑠奈隊員。


「これで今日は大丈夫かな?」

「どうだろう、兄貴のことだから二時間後に『何度でも蘇るさ!』ってピンピンしてそうだ」


 痙攣して全身を跳ね上げている兄貴を背に、俺と瑠奈は話しながら階段を降りていく。

 完全に目ぇ覚めちまったからな。


 しかし階段の途中でつんざくような臭いが俺と瑠奈の歩行を止める。黒い煙がキッチンから上がっているが、火事の臭いではない。


「なぁ瑠奈」

「なに、竜兄」

「すごく悪い予感がするのは俺の思い過ごしでしょうか」

「……敬語が気になるけど、多分その予感当たってると思うよ」


 いかん、あまりの恐怖のために言葉が敬語になってしまった。

 俺は覚悟を決めて階段を再び降り始める。瑠奈は今すぐ逃げられるような絶妙なポイントで待っている。卑怯者め。

 震える手でキッチンの扉を開ける


「あ、お兄ちゃんオハヨー」


 予・感・的・中!


 腰から下しかないフリル付きのエプロンをして、キッチンミトンをはめている綾乃が目に入った。頬が炭で若干黒くなっているのは、また俺の勘違いだよな? そうですよね神様仏様。


「お、おうおはよう」

「さっき上が騒がしかったけど何かあったの? 必殺技みたいな掛け声聞こえたけど」

「害虫退治だよ。人間サイズのな」

「ふ〜ん……」


 疑問持たねえんだな綾乃……。


 俺は長方形のテーブルに位置する一つのイスに座る。そしてキッチンの扉でこそこそしてる奴を呼んだ。


「あぁ……第二回デッド・オア・アライブ」

「そう言うな。俺も付き合ってやるから」


 鼻歌を歌っている綾乃に聞こえないような小声で瑠奈と話す。


「付き合うって……私たちは義理とはいえ兄妹なんだよ!?」

「その付き合うじゃねぇ!」

「? どうしたのお兄ちゃん、瑠奈姉」


 キッチンミトンで鍋を握っている綾乃が首を傾げながら聞いてきた。


 鍋・・・?

 真夏の朝っぱらから鍋?


 俺はキムチ鍋の記憶が蘇り、自然と汗が吹き出てきた。恐る恐る鍋の中身を見ると、汁物ではなかった。が、ビー玉くらいの大きさをした黒い物体がいくつも転がっている。異様な臭いを放ってるから、つんざく臭いの素はこれだな。

 瑠奈は汚物を見るような目で、俺は鼻を押さえて綾乃に問う。


「「これなに?」」

「スクランブルエッグ作ろうと思ったんだけど、ちょっと間違っちゃって♪」


 いやこれ『ちょっと』ってレヴェルじゃねぇぞ。一昔前の保存食みたいな感じだし。食ったら間違いなくトイレにいく機会が格段に増えそうだし。


 俺と瑠奈はどうやってこの危機的状況から脱するかを本気で考えると綾乃の瞳が潤んできた。ヤバい、泣くぞこいつ。


「無理しなくて良いよ二人とも……。捨てるから」

「いやいや!」

「食べるから落ち着いて綾乃!」


 二人で綾乃をなだめる。綾乃は涙を拭いながらくったくのない、にぱ〜とした笑いを浮かべた。

 なんとかなだめることに成功したものの、どちらかがスケープゴート(生け贄)にならなければならない。どうしたものか。


 と、ここでキッチンの扉がゆっくりと開く。ナイスタイミング!


「おのれ貴様ら! ドナドナがダメならばアニソンの素晴らしさを教え」


 瑠奈が皿の上にあるスクランブルエッグ(仮)を投球機さながらに連続して放り投げ、次々に兄貴の大きく開いた口に入れていく。兄貴はそれをもぐもぐと咀嚼し、


「ぐぶっ……!」


 再び泡を吐いて倒れた。その泡の意味が良く分からなかった綾乃はキョトンとした顔になり、状況説明を瑠奈に頼んだ。


「これはつまり、そう、綾乃の勝利よ!」

「? そうなのお兄ちゃん」

「結果的にはそうなる。まぁ気にすんな」


 綾乃の頭を撫でて座らせる。瑠奈とアイコンタクトを取り、瑠奈がまともな朝食を作り始めた。


 兄貴の泡がうっすらと赤くなっているけど、血じゃないよな? ・・・ま良っか♪

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