act.3 狙われた、唇<1>
能天気でお調子者の兄貴・宙と、先日男子に襲われたものの、貞操の危機を間逃れた竜崎碧は。
互いに違うサッカークラブに所属しながら、試合会場では良く顔を合わせていた言わば“顔見知り”ってやつだったらしい。
同じ高校へ入学しチームメイトとなった二人は、それぞれが一年の頃からレギュラーの座を勝ち取り、試合に出れば驚異的なコンビネーションを発揮するという、サッカー部名物の【黄金コンビ】と呼ばれるようになった。
――が。
『だって、オレ宙好きだし』
『オレも碧のこと大好きだぁ』
・・という同性同士にして【ラブ・バカップル】の異名をも持つおかしな二人、でもある。
友情の域を超えつつある互いの溺愛ぶりは校内でも有名で、二人の仲(どんな仲だよ)が半ば公認となりつつあるというから、妹の立場としては非常に理解し難い奇妙な話だった。
あたしが今非常に不安なのは。
お喋り好きの宙が、そのバカップルもどきの相手に“余計なこと”を話していないだろうかと、そればかり。
まさか、ね。
フツーなら絶対にあり得ない。
だけど、ね。
ウチの二男はそういうとこ、フツーじゃないから。
碧ですら『宣伝カーみたいなあいつが・・』と言ってたくらいだし、もの凄く、不安。
口外していないことを確認して宙に再認識されるのと、口止めせずに碧の口から聞くことになるのとを天秤に掛けたら。
象でも乗せた位の勢いで、素早く大きく前者に傾いた。
部活前には口を封じて置かなければと、向かうことになった二年の校舎。
制服を規定していない公立高校としては稀なウチの学校。
校内を歩く生徒たちが何年生かなんて、パッと見だけなら雰囲気で察するのが精一杯だ。
教師だって、見分けがつかないだろう。
それを回避するためのアイテムが、入学時に配布される学年別のレザーブレスとチョーカー。
ブレスのレザー色と模様、チョーカーの先についたトップが、学年ごとに違うことで区別化を図っている。
三年間の持ち上がりで一周する仕組みだ。
外から確認出来ればどちらをつけてもOKで、必ず一方を身に着けることが必須になっている。
【Ⅱ-E】の表札の下で足を止め、教室を覗いてみた。
宙の机に荷物はあるけど姿は見当たらない。
「宙なら今取り込み中」
「うわっ!!」
耳元で突然ぼそっと呟かれて身をよじると、見下ろしてくる碧が、親指で廊下の奥の方を示す。
不意打ちの登場にバクバクと止まらない心臓を少しだけ落ちつけて、示された方を見ると、女子生徒と何やら話中の宙がいた。
――あぁ、あれは確かに、取り込み中だな。
普段家族には見せないような顔で対応している様子で察して、廊下の窓側の壁に背をつけて宙を待つ。
そのあたしと相対して背を凭れた碧が、クロスのトップがついたチョーカーを指で弄りながらこちらを見ている。
「なに」
もの言いたさ気な眼差しにクレームをつけたあたしの言葉に、小さく眉を上げた。
「赤飯、炊いたんだって?」
――宙・・・アンタ、最悪。
読んだよ♪のご報告に、簡単なメッセージに、宜しかったらお使い下さい。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。