act.1 祭りのあと<3>
お互いの気持ちを伝えあって、いろんな誤解も解けて。
初めて唇同士が・・その中のモノまで触れ合って。
碧との距離を近づけた時間を終えて、文化棟裏から表に回り込もうとしていた途中のこと。
『あぁそうだ、忘れてた』
しっかりと繋がれた手を軽く引き寄せて、碧が足を止めた。
『表に強烈なのいただろ。まともに相手にすんなよ?』
『え?』
『単なる強度のブラコンだから』
激しく言い合う声は裏にまで響いていた。
案の定、表側に戻ってみると、しばらく前に目にした光景がさして変わっていなかった。
背後からの羽交い絞め状態はそのままで、暴れる彼女もそのままの状態。
その中で、繋がれたあたし達の手を目にした宙の表情がぱっと明るくなった。
『おぉ~!!碧、ついにやった!?』
共犯者、もとい協力者である彼の呼び掛けに、立った碧の二本の指。
対して険しい表情を見せたのは彼女の方だった。
『お兄ちゃんっ!!その手何っ!?いやぁっ、離してよ!今すぐ離して!マリンも手、さっさと離しなさいよっ汚らわしい!』
宙の腕に噛みつくんじゃないかと思うくらい激しく暴れる。
(汚らわしい、ってずい分だな・・)
『あれが・・強度のブラコン、っていう碧の妹なんだ?』
『そ、“あれ”が上の妹で中三の乃衣。一日中逃げ回ってたのは、アイツがお前の芝居見せないように、オレを引き摺り回そうとしてたから』
『・・・そっちの兄妹も、なかなか激しそうだね』
うちも相当だとは思ってたけど。
『乃衣!マリンまで呼び捨てにしてんじゃねぇぞ』
優しくも厳しい叱咤の声を向けると、逆上するように叫んだ。
『マリンなんてマリンなんかマリンなんてねぇっ、大っ嫌いなんだから!!宙っ!アンタもいーかげんに離しなさいったら!!』
自由の利かない腕はそのままに、もう少しでスカートの中が見えてしまうんじゃないかと思うくらい、両足をじたばた振り上げるその動きは顔に似合わず豪快だった。
『はい、はい。落ち着こうねぇ~』
明らかに対抗意識で連呼したあたしの名前に、“大嫌い”まで加わる。
冷静を促す宙の声にも、その勢いは止まるどころか増す一方で。
『これがどうして落ち着いてられるっていうの!宙は許せるの!?大好きなお兄ちゃんが、妹のモノになるのよ?あぁっ、“モノ”だなんて私に言わせないでよ!嫌よイヤイヤ!!私は嫌なの、絶対に嫌、二人がくっついて歩いてるのも許せないくらい、嫌ったらいやなんだからぁぁぁぁ!!』
********
「・・・とまぁそんな感じでね」
疲れ切った体に胃袋が満たされた宙が、ダイニングのテーブルに伏したまま寝息を立て始めた。
お守を遣って遅くまで彼女の相手をしていた兄を横目に、修兵と蒼に事情を説明する。
「へえ~そりゃまた筋金入りのブラコンだな」
「あの碧が兄貴なら、そうなるのも不思議じゃないと思うけど・・」
二人共苦い笑みを浮かべながらそれぞれの意見を述べた。
「「マリン、苦労するな」」
最後にはそう、言葉を重ねて。
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