すいません!またUPミスでした。12/6 17:30修正しました!!
act.4 守りたいものは何ですか<2>
「あんの・・・・男はぁっ!!」
つい先程まで姿のあったベランダを睨みつける。
「ふざけんなっ!!」
ガンっと。
目の前の鉄の扉に思い切り拳を叩きつけた。
普通なら痛みを感じる筈の痛覚がマヒするほど、頭に来ていた。
小学生のケンカじゃないんだから、話くらいさせろっていうのに。
舌を出すヤツが、いるかっ??
仮にもアイツは、あたしのことが好きだとか、言った筈だけど!?
あたしと目を合わすなり、舌を出したあの男。
昨日からずっと(正確に言ったら一昨日からかもしれない)まともな会話が出来ていない。
言いたいことが山ほどある。
伝えたい気持ちが、一つだけ、ある。
碧の姿を見かけた北側B棟、二・三年生の教室が占めるその場所へ迷いなく進む足取り。
人混みを擦り抜けながら、首に下げた碧い石が揺れた。
「あ、マリン!」
目的場所の手前で未遊に捕まり強引に引き込まれた。
細い体の割に、時々恐ろしいくらいの腕力を見せる彼女に抵抗出来ないのが、未だに不思議で仕方ない。
「ちょっと待ってよ未遊、あたし碧に用が・・」
「その前にお茶してこ」
座らされた席で待ち受けていたのは。
「ご注文は何に致しますか?お嬢様」
白のシャツに足首まで届きそうに長い黒のエプロンを纏って、サイドの髪を後ろに束ねたその格好は。
ギャルソンを装った宙だった。
我が兄ながら、なかなか、様になっている。
「きゃぁ宙くん、カッコイイ!写メ撮らせて~」
「・・ちょっと、宙。ピアスなんていつ開けたの?」
携帯を構えた未遊に向けてポーズを決めた宙の耳に、見慣れないピアス。
「昨日、かな」
「昨日!?」
「だってこの髪型だと、ピアスあった方がいい感じじゃない?」
あはは、なんて。
わざわざこの為に耳に穴を開けたという、発想の豊か(というか無謀)な兄を見て溜め息が漏れた。
ピアスに関しては、高校卒業までは開けてはいけないと修兵から禁止令が発令されてるというのに。
サッカー部内でだって・・まずいんじゃないのか??
・・・まあ、このヒトは。そんな後のことを考えて行動するタイプじゃないんだけど。
ニコニコと笑顔を浮かべて未遊の注文を訊いている宙の姿をぼんやり見つめて。
あたしは、はた、と気付いたことがある。
「ねえ・・なんか碧もそれと同じような格好、してたような気がするんだけど・・・」
そう。あれが幻覚でないのなら。
ベランダで見掛けた遠目の彼もまた、宙と同じく白いシャツに黒のエプロンを身に着けていた。
「あ、マリン見たんだ!?似合ってただろぉ碧の奴!女子が大騒ぎで、アイツ目当ての客がさっきまで凄かったんだよ。オレも一緒に写メ撮ったんだぁ、見る?」
ポケットの携帯を取り出して、撮りたての画面を表示して見せた。
腕組みをして顔を背ける碧、その肩に手を乗せてVサインの宙。
共にサイドの髪を後ろに結った同じヘアスタイルで。
全身が写し出されたその写真だけを見ると、女子達が食いつきたくなるのも分かる気がした。
「きゃあん、ステキステキ!!この写真強奪してもいい?マリンにも送ってあげるわ!」
「いらない。・・・でもアイツ、クラス違うじゃん」
これから向かおうとしていた碧のクラスは、ストーンジュエリー工房を開催してるはず。
「客引き担当嫌がってたから、こっち手伝って、ってお願いしたんだよ」
こっちだって似たようなもんだと思うけど・・。
「さっき休憩入ってから姿見えないんだけど、マリン知らない?見付けたら来るように言って。ったぁく、どこに行ったかなぁ」
ブツブツと文句を言いながら、オーダーの入った飲み物を取りに戻っていく。
――逃げたな、絶対。
戻ってきた宙が置いて行ったドリンクセット。
机に置かれたグラスの中身を必要以上に掻き混ぜた。
昔から注意されていた、ストローを噛む癖はなかなか抜けない。
少しずつしか口の中に届かない、お勧めだというアップルティーの味なんて、何一つ、分からなかった。
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