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            act.2 想いの伝え方<3>
中学の頃、何人かの男子に告白されたことがある。

クラスが一緒になったことのないヤツばかりで、話を聞いているとどうも“如月マリン”という人間に対して誤った認識をしているようだったから。

『あたしの何を知ってんの?可愛い女子を期待されてもムリなんだけど』

そう言って軽く凄めば、回れ右をしていなくなった。

・・・だからあたしは、髪を切った。

いたずらに触られるのが嫌だったという表向きの理由の、本当のワケ。

長い髪が、あたしを“あたし”じゃなくしてしまう。
現にベリーショートにしてスカートを穿くのをやめると。
異性は寄りつかなくなり、ぐっと近づいて来たのは同性の子達だった。

こんな口調だし、性格だし。
本当の自分を邪魔をする外見なんて、必要ない。

それが高校に入って。
短い髪のあたしも、スカートを穿くことのないあたしも。
口調も性格もがさつで男勝りなのを知っての上で。

『好きだ』と言ってくれる男がいる。

それはホントのあたしを好きでいてくれるのだと言う、証。
以前のような理由で足蹴にすることは出来ない。

告白をしてきたアクアに対して、時間も経っている分、考える余裕も、その後に改めて観察する余裕もあった。
あたしもまた本当の彼が見えていなかったのだと、理解出来たのはその効果だといえる。
頭のいいヤツだ、アイツは。

そして―――とても、優しい。

押し付けたら反発するあたしの性格を知ってるからこそ、遠回りな方法で。
自分の気持ちを行動や含みを持たせた言葉によって何度も何度も、刷り込むようにして伝えてくる。

まるで足湯にでも浸かっているように、じんわりと足元から浸透してくるキモチ。
心地がいいとさえ、思い始めている。

「意外だったな・・・」

両手に抱えたマグカップから漂う甘い香りを吸い込む。
一口啜って体の中を流れていく熱を感じながら、息を吐いた。

「いい顔してるね、マリン」
あおい

テスト期間中に差し掛かって帰宅の早い長男が、色違いのカップに入った同じ飲み物を手に隣に座る。
白い蒸気が目元を覆うレンズを曇らせてしまうのが鬱陶しそうに、それを外してテーブルに置いた。

大好きな父親にそっくりの蒼。

「碧のこと、好きになった?」

口調まで真似たように聞こえて、びくっとする。

「・・なんでそんな話・・」
「“女の子”の顔してるから。マリンの身近でそんな顔させるのって、彼くらいだろう?・・それとも俺が知らないだけ、かな」

違ってた?とでも言うような視線を投げかけながら、カップに口づける。

一体自分がどんな顔をしてるかなんて、見てみたい気もするけど、怖い気もする。

「気にはなってるけど。・・・好き、って気持ちがよく分からない」

藤堂の元カノを見る限り。
切ない顔で縋り寄るくらい誰かを想うなんて気持ちは、まだ分からない。

「以前と違って、前向きなのはすごくいいことだね。二人の努力が報われたかな」
「・・・・二人?」
「そ、二人」

一人楽しそうに微笑んで、あたしの頭を優しく撫でる。
なんとなく心当たりはあったものの、“二人”が誰を指すのか、とうとう蒼は教えてはくれなかった。
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