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            act.5 その存在に気付くとき<4>
アクアと二人で立ち寄ったスーパーには、叔父のファンが数多くいることを知る。

野菜売り場で品出しをしていたおばさんに“修ちゃんとこの!”と突然声を掛けられて。
修ちゃん呼ばわりされる人物が一瞬浮かんで来なかったあたしは、「は?」と思い切り言ってしまって、碧に肘で突かれた。

――修ちゃん最近見かけないけどどうしたの?
――ちょっと旅行に・・
――よかったわぁ!具合でも悪いのかと思ったのよ。あぁそう、旅行だったのー

スーパーのみならず、店頭に品物を配列していたドラッグストアの店員や、配達帰りのクリーニング店員、匂いにつられて立ち寄ったパン屋のアルバイトのお姉さんにまで。
同じような質問、同じような回答、を繰り返すことになった。

「・・・この辺一体にファンクラブ設立してんな、絶対」

堪え切れないといったように、両手に荷物を持った肩を震わせながら碧が言う。

スーパーから歩いて10分の家までは、さほど遠い距離でもない。
ガサガサと擦れた音を立てるビニールを両手にしながら、肩に担がれたままの碧のバッグを奪い取ったのは、頑なに手渡そうとしない買い物袋の代わりだった。

「碧ってさ、いつも部活終わってから夕飯の買い出しするの」
「いや?それはさすがにキツイから、週末にまとめ買い」

スーパーにいた時の彼は随分と手慣れた様子だった。

かごを乗せた買い物カートを押す姿はその外見にそぐわないようにも思えたけれど、手にした野菜を品定めする真剣な横顔だとか、無駄なく店内を移動する軽やかな足取りとか、他の買い物客となんら変わらない。

「妹からしたら、自慢の兄貴だね」

あたしがあおいを思うように。
そらは兄貴として論外だったから)
碧の二人の妹達もきっと思っているに違いない。

「自慢し過ぎて友達を大量に連れ込むから、厄介だけどな」

うんざり、といった口調でぼやいた。

ウチのクラスの女子達が碧の登場で騒ぎたてた状況を思い出して。

「それ。なんか想像つく」

きっと、あんな雰囲気なんだろうと思わず笑った。
じっとあたしを見ていた瞳と目が合って。

「・・・・・くそ可愛いな」

ぼそっと。
横を向いて耳を赤くしながら碧が呟く。

「なっ、なに言ってんだよ!!聞こえてる」

可愛い、だなんて。
顔赤くしてまで言うことじゃないじゃん。

荷物を持った碧を置き去りにするように、恥ずかしくて自然と足取りが速くなる。
家の三軒手前で、門の前に見知らぬ車が停車していたのに気付いた。

(――誰か、来たのかな?)

父さんの仕事関係者だろうか。
今月はずっと取材で留守なのを知らないはずもないのだけど。

「あ・・」

小さな丸みを帯びたブルーの車中。
非対称的な巨体を、後ろのガラス越しに見た。

それは見覚えのある、後姿。

「修・・兵・・・?」

立ち止まってその名が口をついたのは。
助手席の影が運転席に重なった衝撃的な現場を、目撃してしまったから、だった。

「・・あれが、“しゅーへー”?訊いてた印象と行動が伴わねーな」
「あ・・・あれって、さ・・・」

立ち止まったまま動けなくなったあたしに追いついた隣の碧に訊いてみた。

「キス・・・だよね」

元々。
今回の休暇は、(恐らくいるだろう)修兵の彼女とゆっくり過ごせればいいなと思ったこともあったワケだから。
そんなに驚く事じゃないけど。

途中。
“大人のオトコ”の顔をした修兵を見てみたいなどとも、思ってたけど。
あたしが見たいと思っていたのは、ただ、普通に彼女に接している姿であって。

こんな・・・恋人同士の触れ合いを、見たいと望んだわけじゃ、ない。

「だろ。・・・なに?お前ショック受けてんの?」
「・・・・碧は・・自分の妹のこういう現場見ても平気でいられる?」

あたしは、平気じゃないみたいだ。
母親代わりの叔父の「男」の顔は、想像以上にショックが大きかった。

「平気じゃ――ないかもな」

・・・・やっぱり、そうだよね?
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