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            act.1 如月家の人々<4>

あおい、また背伸びた?」

隣を歩く長男を見上げておや?と思う。
目線の位置が微妙に上がったような気がしたから。

卒業後の一人暮らし計画を着々と進めている蒼は、交通費節約の為にバイク通学をしている。
だけど今日は久し振りだからと言って、あたしと一緒に駅に向かっていた。

「春の健診じゃ1センチほど」
「・・どこまで伸びるんだろうね?」
「マリンの成長期が終わるまでは、超されないように頑張るよ」
「頑張って伸ばせるものなら、あたしだって負けないし」
「はは。マリンだって、また伸びただろう?」
「うん。あと2センチで念願の170台」

ここでVサインをしてみせるのは、女子としては普通じゃないんだと思う。
制服の学校に通っていたら、浮いてるんだろうな。

家には蒼や修兵みたいな大男がいるから何とも思わないけど。

如月兄弟唯一の女子であるあたしは。
背も高ければボルドー色のショートヘア、言葉も態度もがさつで男みたいだとよく言われる。

小さい時から兄貴達と変わらない扱いを施してきた、叔父である修兵の教育方法が大きく影響してるんだけどさ。
遊びもスポーツもライバルは常に兄貴達。
元陸上選手だった父親譲りの運動神経を三人ともが受け継いで、足の速さは並以上。

故に走る楽しさを知ったあたしは陸上部に所属している。

「髪も伸ばせばいいのに。前みたいに」
「やだよ、男に引っ張られたりするのが耐えられない」
「そんなの、中学までだろ?」

くすくすと笑う。
蒼は顔が父親似だから、時々ふとした時にどきっとする。
笑った顔なんて、特にね。

・・あたしって、軽くファザコン入ってんのかな。

「それに近いことをするような奴がいるから、ヤだ」
「いるんだ、そんなヤツ」
「ほら、あのそらがよく話してる」

そいつの顔を思い出すだけで、自然と眉間にシワが寄ってくる。

「ああ、アクア、だっけ?同じサッカー部の。先には文化祭もあるし、ついでに本人見てみようかな」
「蒼、文化祭に来てくれるの?」
「もちろん。二人がどんなことしてるのか、見てみたいしね」
「あ、そしたら彼女連れて来てよ」
「んー・・・」

少し空を仰いで間が空いてから、考えとく、と苦笑した蒼の視線が何かを捉えた様子だった。
つられて見た先に、女子中学生が3人。

「あのっ。これ、受け取ってください!!」

差し出されたのはカードの添えられた小さな箱。
この時間帯は宙と一緒にいることが多いから、一瞬そっちかな?と思って隣の蒼を見上げると“お前だろ”と目だけで促される。

「えっと・・これ?」
「・・あ、ずっと、この駅で見かけてて。その・・憧れてて・・」

ウチの高校は私服だから、割と、こうした誤解を受けることが多い、あたし。

「ごめん。あたし、女、なんだけど?」
「はい!分かってます!受け取ってもらえれば、それだけでいいんです」

真っ赤な顔で泣きそうになりながら、必死で。
こういうのを見て、男は可愛い、って思うんだろうな。
・・だってあたしだって、可愛い、って思うよ。

「ありがとね。貰っとく」

そう言うと、感激したように何度も頭を下げながら礼を言って走り去っていく。

「モテるなぁ、マリン」

冷やかしじゃなく感心したように蒼が呟いた。

「モテ男の蒼がそれ言う?・・あたしは同性受けばっかだけど」

こうやって女の子からの手紙やプレゼント貰うのも、これで二十数回目。
男装の麗人とか、目指しちゃう?
かなりいい線いけそうじゃない?
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